115 / 126
115アルファのフリをする話
しおりを挟む
「第二性別ガチャにハズレましたーってか、ははは……」
笑えない。印字された自分の名前の隣には、間違いなくΩと書かれていた。
「こんなの親に言ったら、会社を継げなくなる」
せっかく御曹司として生まれたのに、せめてベータじゃないと跡を継がせてもらえないだろう。
会社にはΩの人間はいない。
なんとか誤魔化す方法はないものか。
「あれ、まだ残ってたのか。検査結果どうだった? どうせお前のことだからアルファだろ」
「あっ!?」
意地悪な幼馴染に、検査結果用紙を見られた。
「……へえー、Ωなんだ」
「返せよ! 今見たことは誰にも言うな!」
紙を取り返すけど時すでに遅し、幼馴染はニヤニヤ意地悪く笑う。
「俺が言わなくても、どうせすぐ周囲に知れ渡るだろう?」
「そんなことにはならない! どうにかして……」
誤魔化せるだろうか。
少し考えただけでも無理だとわかった。
ヒートが来たら一発でΩとバレてしまうだろう。
「隠したいのか。俺のお願いを聞いてくれるなら協力してやってもいいよ」
「……何が望みだ」
「実は俺、αだったんだよね。俺がΩのフリをしてやるよ。お前はΩの婚約者を献身的にケアするα様ってわけだ」
「それは、つまり……」
「俺をお前の婚約者にしろ。抱かせろよ」
こんな無茶な企み、上手くいきっこない。
(けれど、本当にαとして振る舞えるとしたら……?)
あまりにも甘美な誘いだった。
「抱かせろって……」
「いいだろう? そのくらいの見返りがあっても」
奉仕しろってことか。αとして振る舞えるならと、覚悟を決めて頷いた。
「わかった。頸は噛むなよ」
「ああ、そこまでは望んでない」
こうして、二人は共犯者の関係になった。
誰よりも頑張って、勉強も人間関係にも気を配った。
昼は優秀なαの仮面を被り、夜は好き勝手に抱かれる。
発情期は恋人を溺愛するαを装い、休暇をとって体を侵す熱に溺れた。
「あ、あっあ!」
「はーかわいい、もっと乱れろよ。俺のことだけ考えてろ」
「ひっ、あぁ!」
αは飽きもせず、何度も抱いても物足りないかのようにΩを責めたてた。
熱っぽい視線で求愛まがいのことを言われ、高みに連れていかれると勘違いしそうになる。
(こいつまさか、僕のことが好きなんじゃ……いや、勘違いするな。お互いに利用しあってるだけだ)
Ωのフリまでして自分の望みを叶えてくれる彼を、いつしかかけがえのない存在だと感じるようになった。
(僕の頸を噛む相手は、こいつしかいない)
けれど彼とは契約と利害関係で体を重ねているにすぎない。
律儀な彼のことだから、頸さえ噛ませてしまえば本当の番として振る舞ってくれるかもしれない……
これ以上を望むなんて馬鹿げてる。
わかっていても止められなかった。
発情誘発剤でαをラット状態に持ち込み、頸を噛ませることに成功した。
(やった! これで……)
満ち足りた気分で快楽に溺れ、気をやった。
目覚めた時、彼は顔を真っ赤にしていた。
怒りの気持ちでいっぱいなのだろう。
(ああ、完全にやらかした)
番状態になったからって、気持ちまで変わるわけじゃないのに。
茹だった頭が冷えていく。
せめて土下座をして反省の意を見せようと思ったら、なぜかアルファが土下座をした。
「ごめん、ごめん……っ! 体だけでいいと思っていたはずなのに、お前を番にしてしまった!」
「え……?」
「どうか責任をとらせてくれ、この通りだ」
土下座したままのアルファの肩に手をかける。
よく見ると目の端に涙を溜めていて、本気で謝っているのかと衝撃を受けた。
「あ、その……僕の方こそ謝らなきゃいけないんだ」
「嫌だ、捨てないでくれ!」
「そうじゃなくて! お前の番になりたくて、薬を盛ったんだ!」
お互いに話し合い誤解がとけて、両思いだとわかった。
「俺たち、遠回りしすぎたよな」
「本当にな。これからは、夫夫として会社を盛り立てていこう」
性別の入れ替わりを家族にうちあけ、結婚の許しを請うた。
今までの社長業の実績で、オメガでも会社を経営していけると理解してくれた。
それからは、二人で力をあわせて業績を上げ、私生活でも満ち足りた関係を築いている。
笑えない。印字された自分の名前の隣には、間違いなくΩと書かれていた。
「こんなの親に言ったら、会社を継げなくなる」
せっかく御曹司として生まれたのに、せめてベータじゃないと跡を継がせてもらえないだろう。
会社にはΩの人間はいない。
なんとか誤魔化す方法はないものか。
「あれ、まだ残ってたのか。検査結果どうだった? どうせお前のことだからアルファだろ」
「あっ!?」
意地悪な幼馴染に、検査結果用紙を見られた。
「……へえー、Ωなんだ」
「返せよ! 今見たことは誰にも言うな!」
紙を取り返すけど時すでに遅し、幼馴染はニヤニヤ意地悪く笑う。
「俺が言わなくても、どうせすぐ周囲に知れ渡るだろう?」
「そんなことにはならない! どうにかして……」
誤魔化せるだろうか。
少し考えただけでも無理だとわかった。
ヒートが来たら一発でΩとバレてしまうだろう。
「隠したいのか。俺のお願いを聞いてくれるなら協力してやってもいいよ」
「……何が望みだ」
「実は俺、αだったんだよね。俺がΩのフリをしてやるよ。お前はΩの婚約者を献身的にケアするα様ってわけだ」
「それは、つまり……」
「俺をお前の婚約者にしろ。抱かせろよ」
こんな無茶な企み、上手くいきっこない。
(けれど、本当にαとして振る舞えるとしたら……?)
あまりにも甘美な誘いだった。
「抱かせろって……」
「いいだろう? そのくらいの見返りがあっても」
奉仕しろってことか。αとして振る舞えるならと、覚悟を決めて頷いた。
「わかった。頸は噛むなよ」
「ああ、そこまでは望んでない」
こうして、二人は共犯者の関係になった。
誰よりも頑張って、勉強も人間関係にも気を配った。
昼は優秀なαの仮面を被り、夜は好き勝手に抱かれる。
発情期は恋人を溺愛するαを装い、休暇をとって体を侵す熱に溺れた。
「あ、あっあ!」
「はーかわいい、もっと乱れろよ。俺のことだけ考えてろ」
「ひっ、あぁ!」
αは飽きもせず、何度も抱いても物足りないかのようにΩを責めたてた。
熱っぽい視線で求愛まがいのことを言われ、高みに連れていかれると勘違いしそうになる。
(こいつまさか、僕のことが好きなんじゃ……いや、勘違いするな。お互いに利用しあってるだけだ)
Ωのフリまでして自分の望みを叶えてくれる彼を、いつしかかけがえのない存在だと感じるようになった。
(僕の頸を噛む相手は、こいつしかいない)
けれど彼とは契約と利害関係で体を重ねているにすぎない。
律儀な彼のことだから、頸さえ噛ませてしまえば本当の番として振る舞ってくれるかもしれない……
これ以上を望むなんて馬鹿げてる。
わかっていても止められなかった。
発情誘発剤でαをラット状態に持ち込み、頸を噛ませることに成功した。
(やった! これで……)
満ち足りた気分で快楽に溺れ、気をやった。
目覚めた時、彼は顔を真っ赤にしていた。
怒りの気持ちでいっぱいなのだろう。
(ああ、完全にやらかした)
番状態になったからって、気持ちまで変わるわけじゃないのに。
茹だった頭が冷えていく。
せめて土下座をして反省の意を見せようと思ったら、なぜかアルファが土下座をした。
「ごめん、ごめん……っ! 体だけでいいと思っていたはずなのに、お前を番にしてしまった!」
「え……?」
「どうか責任をとらせてくれ、この通りだ」
土下座したままのアルファの肩に手をかける。
よく見ると目の端に涙を溜めていて、本気で謝っているのかと衝撃を受けた。
「あ、その……僕の方こそ謝らなきゃいけないんだ」
「嫌だ、捨てないでくれ!」
「そうじゃなくて! お前の番になりたくて、薬を盛ったんだ!」
お互いに話し合い誤解がとけて、両思いだとわかった。
「俺たち、遠回りしすぎたよな」
「本当にな。これからは、夫夫として会社を盛り立てていこう」
性別の入れ替わりを家族にうちあけ、結婚の許しを請うた。
今までの社長業の実績で、オメガでも会社を経営していけると理解してくれた。
それからは、二人で力をあわせて業績を上げ、私生活でも満ち足りた関係を築いている。
61
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
短編エロ
黒弧 追兎
BL
ハードでもうらめぇ、ってなってる受けが大好きです。基本愛ゆえの鬼畜です。痛いのはしません。
前立腺責め、乳首責め、玩具責め、放置、耐久、触手、スライム、研究 治験、溺愛、機械姦、などなど気分に合わせて色々書いてます。リバは無いです。
挿入ありは.が付きます
よろしければどうぞ。
リクエスト募集中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる