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112ヒグマ獣人とアナグマ獣人の話

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アナグマ獣人は冬眠の時期が大嫌いだ。
頭がボーッとするし、寒いし、友達にも会えなくて寂しい。

けれど今年の冬は一味違う。

「できた。ふかふかの寝床だ」

恋人であるヒグマ獣人と、とびきり温かい冬を過ごす予定なのだ。

ヒグマ獣人はアナグマ獣人より大きいから、抱きしめられると身体中がぽかぽかして気持ちいい。

くっついて眠って、まどろんでいると温かな気配を感じる。

胸元に擦り寄ると、ぎゅっと腕の中に抱きしめてくれる。

すごく幸福な気分だった。

アナグマは時々冬眠の最中に目を覚ましては、彼に話しかけた。

「ねえ、ヒグマ」
「んー……」

半分眠っているヒグマは、聞いているんだかいないんだかわからない。

けれど返事をくれるので、つい話しかけてしまう。

「春になったら、一緒に蜂蜜をとりにいこうな」
「うん」
「それで俺、新しい服を作るからさ。婚礼衣装……なんだけど」

こんなの今言うなんてずるいかな、と思いながらも衝動に抗えなかった。

「お前の分も作ったら、一緒に着てくれる?」
「……うん」

ぽぽぽと頬が赤くなり、指先まで火が灯る。

アナグマは胸にぐりぐり頭を押しつけ、くふふと笑った。

「約束だからな。絶対だぞ」
「うん」

抱きしめられた力が、いつもより強い気がした。
幸せな気分で眠りにつく。

長い冬をふたりきり、ぬくぬくしながら過ごす。

春になって目覚めると、ヒグマはアナグマの言っていたことを全て覚えていた。

「君の用意した婚礼衣装と、僕が作る木のお家。それにとっておきの蜂蜜を用意して、最高の式を挙げようね」

恥ずかしがり屋のアナグマは、独り言を聞かれていたと知って、もう一度穴倉に戻りたくなった。

けれど浮かれたヒグマに抱えられてしまう。

彼の肩の上で、結婚報告を触れ回る浮かれた叫びを、聞き続ける羽目になった。

「僕とアナグマは、ずっと一緒だ! 結婚式を挙げるから、みんな来てね!」
「おめでとう!」
「お祝いしに行くよ!」

冬眠から目覚めた獣人達に祝福されて、アナグマは顔を真っ赤にしながらヒグマにしがみつく。

春の花が咲く村の丘で、陽の光が二人を祝福するように、柔らかく包み込んでいた。
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