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110子連れBLの話
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死んだ姉の三歳の子どもを引き取った。
両親はすでになく、親戚は俺一人しかいない。
子育てなんてやったことないけど、なんとかするしかない。
決意は固かったが、現実は厳しかった。
熱を出す度に仕事先に頭を下げ、夜中に母を呼び泣く子をあやし、かんしゃくに気を滅入らせていた俺は、同僚の前でぶっ倒れたらしい。
目を開けると、同僚が俺の家で子どもと遊んでいた。
「え、わ……ごめん同僚! 俺、倒れたのか?」
「ああ、もうちょっと休んでろよ。子どもは俺がみておくから」
申し訳ないと思いながらも、心からホッとした。
「こいつ可愛いなー。お前も無理すんな、俺でよかったら時々面倒見にくるから」
子ども好きな同僚は、休みの度に子どもに会いにくるようになった。
すごく助かると思う反面、申し訳なさが胸を締めつける。
「悪いな、いつも助かる」
「いいんだ。お前の力になれたら本望だ」
優しくて頼りになる彼のことを、俺はいつしか恋愛的な意味で好きになっていた。
けれど彼は社内でモテるし、彼女がいたこともあるという。
きっとノンケだろうと、自分の気持ちに蓋をした。
そんなある日、どうしても同僚くんと一緒にねんねしたい! と言ってきかない子どもの為に、同僚が家に泊まることになった。
「よろしく」
「ああ、入れよ……」
彼が家でシャワーを浴びている、パジャマを着ている、隣の布団に入っている……いちいちときめいてしまい、心臓が落ち着かない。
「じゃあ寝ようか、おやすみ」
「おやすみなさーい!」
子どもは、はしゃぎ疲れたせいかすぐに寝てしまった。
「今日はありがとうな、こいつのワガママを叶えてくれて」
「俺も楽しかったし気にするなよ。この子も寝ちゃったし、ここから先は大人の時間だな」
ソファでお酒を飲もうという話になった。
うっかり好きだと言うと目も当てられないから、同僚の前では飲まずにいたが、彼はかなりのハイペースで飲んでいる。
「そんなに飲んで大丈夫か?」
「ああ、うん。いざとなったら緊張しちゃってな。いやでも、酒ばっかり飲んでる場合じゃなかった。今日言うって決めたんだから」
「何の話だ?」
彼はあらたまって俺の腕を掴むと、一息で言った。
「好きだっ、つきあってくれ!」
「は、え?」
びっくりしすぎて言葉が出ない。
「お前は毎日子育てで大変すぎて、恋愛どころじゃないかもしれないが……愛情深くて頑張り屋のお前のことを、側で支えたくなっちまった」
これは夢だろうかと目を瞬く。
頬をパチンと叩いてみると痛い。
やはり夢ではないらしい。
試しに胸の中に飛び込んでみると、力強く抱きとめられた。
「……いいのか? 俺とつきあうと、もれなく子どももついてくるけど」
「望むところだ。あの子ごとお前のことを支えたい」
じわっと目尻が熱くなり、消え入りそうな声で返事をする。
「じゃあその、よろしく……」
「ああ、もっと頼ってくれよな。愛してる」
泣きたい時に、誰にも頼れなかった。
でもこれからはそうじゃないんだ。
心からの安堵と嬉しさで、涙がポロポロ溢れ出る。
彼は自分の服が濡れるのも構わずに、俺が泣き止むまで肩を抱いてくれていた。
両親はすでになく、親戚は俺一人しかいない。
子育てなんてやったことないけど、なんとかするしかない。
決意は固かったが、現実は厳しかった。
熱を出す度に仕事先に頭を下げ、夜中に母を呼び泣く子をあやし、かんしゃくに気を滅入らせていた俺は、同僚の前でぶっ倒れたらしい。
目を開けると、同僚が俺の家で子どもと遊んでいた。
「え、わ……ごめん同僚! 俺、倒れたのか?」
「ああ、もうちょっと休んでろよ。子どもは俺がみておくから」
申し訳ないと思いながらも、心からホッとした。
「こいつ可愛いなー。お前も無理すんな、俺でよかったら時々面倒見にくるから」
子ども好きな同僚は、休みの度に子どもに会いにくるようになった。
すごく助かると思う反面、申し訳なさが胸を締めつける。
「悪いな、いつも助かる」
「いいんだ。お前の力になれたら本望だ」
優しくて頼りになる彼のことを、俺はいつしか恋愛的な意味で好きになっていた。
けれど彼は社内でモテるし、彼女がいたこともあるという。
きっとノンケだろうと、自分の気持ちに蓋をした。
そんなある日、どうしても同僚くんと一緒にねんねしたい! と言ってきかない子どもの為に、同僚が家に泊まることになった。
「よろしく」
「ああ、入れよ……」
彼が家でシャワーを浴びている、パジャマを着ている、隣の布団に入っている……いちいちときめいてしまい、心臓が落ち着かない。
「じゃあ寝ようか、おやすみ」
「おやすみなさーい!」
子どもは、はしゃぎ疲れたせいかすぐに寝てしまった。
「今日はありがとうな、こいつのワガママを叶えてくれて」
「俺も楽しかったし気にするなよ。この子も寝ちゃったし、ここから先は大人の時間だな」
ソファでお酒を飲もうという話になった。
うっかり好きだと言うと目も当てられないから、同僚の前では飲まずにいたが、彼はかなりのハイペースで飲んでいる。
「そんなに飲んで大丈夫か?」
「ああ、うん。いざとなったら緊張しちゃってな。いやでも、酒ばっかり飲んでる場合じゃなかった。今日言うって決めたんだから」
「何の話だ?」
彼はあらたまって俺の腕を掴むと、一息で言った。
「好きだっ、つきあってくれ!」
「は、え?」
びっくりしすぎて言葉が出ない。
「お前は毎日子育てで大変すぎて、恋愛どころじゃないかもしれないが……愛情深くて頑張り屋のお前のことを、側で支えたくなっちまった」
これは夢だろうかと目を瞬く。
頬をパチンと叩いてみると痛い。
やはり夢ではないらしい。
試しに胸の中に飛び込んでみると、力強く抱きとめられた。
「……いいのか? 俺とつきあうと、もれなく子どももついてくるけど」
「望むところだ。あの子ごとお前のことを支えたい」
じわっと目尻が熱くなり、消え入りそうな声で返事をする。
「じゃあその、よろしく……」
「ああ、もっと頼ってくれよな。愛してる」
泣きたい時に、誰にも頼れなかった。
でもこれからはそうじゃないんだ。
心からの安堵と嬉しさで、涙がポロポロ溢れ出る。
彼は自分の服が濡れるのも構わずに、俺が泣き止むまで肩を抱いてくれていた。
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