ツイノベ倉庫〜1000文字程度の短編集

兎騎かなで

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99.小説家とチャラい幼馴染

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小説家である彼は、絶賛スランプに陥っていた。

「駄目だ、お色気シーンなんて書けん!」

今回は色っぽい感じでお願いしますと、担当から言われているから、苦手でも書かねばならない。

恋愛経験ゼロのチェリーには難問だった。

考えた挙句、一番女の扱いに慣れていそうなチャラい友達に声をかける。

居酒屋の個室でコソコソと相談を持ちかけた。

「……ってことなんだよ。お前の武勇伝を聞かせてくれ」
「そんなん実地で経験した方がよくね?」

実地なんてハードルが高すぎる。

「む、無理だ。女性と話すと考えただけで、固まってしまう。風俗にすら行ける気がしない」
「重症だなあお前……キスくらい誰とでもできるだろ」
「え、んっ、むうぅ!?」

いきなりキスされ、目を白黒させる小説家くん。

「ほら、簡単だろ?」
「いきなり何を! は、はっ、ハレンチな!」
「ハレンチってなにそれ。ほら、上顎の下とか舐めてみるといいぞ」

言葉通りのことを実践され、だんだん息が上がってくる。

「いっ……あ!」
「ふ、お前の反応、かわいいな」
「ば、かっ、やめろ!」
「お前が知りたいって言ったんだろ?」

至近距離で色っぽく微笑まれ、顔に熱が昇る。

「なんだったら抱いてやってもいいよ、俺アンタならいけそう」
「な……!?」
「ほら、行こうぜ」

頭が追いつかず、されるがままに家に連れ込まれてにゃんにゃんされる。

それがやたらと丁寧に感じさせてくれて、超絶テクニックに翻弄され、めちゃくちゃに乱されちゃう。

次の日いざ仕事に取り掛かろうとしても、思い出すのは彼のことばかり。

彼にされたときのアレやコレやを、内心叫びながら文章に書き起こし、担当に送りつけた。

「先生! 素晴らしいです、こんな感じでいきましょう」

あっさり通ってしまって拍子抜け。

戸惑いながらも幼馴染にお礼を言うと、なんとなく不機嫌そうにされる。

「ふーん……参考になってよかったよ。次回のための予習、しとく?」
「えっ!? ……あ、そう、だな。色々なパターンを知っておいた方がいいか、お願いできるか?」

幼馴染はデートと称して恋人のように振る舞い、夜は前回より情熱的に抱いてくる。

なんでここまでしてくれるのかと、戸惑いながらも勉強になるしと受け入れた。

(それに、コイツとデートしたり色々されるの、嫌じゃないしな……)

三回目のデート時、意識しながら見つめると、意味ありげに笑われる。

「そんな目で見るなよ、夜が待ちきれないってか?」
「ち、違うって!」

小説家は知らない。幼馴染は十年以上前から、小説家にガチ恋していたことを。

チャラく遊んでる風なのは、ノンケであろう幼馴染を襲わないよう、理性を振り絞り他で発散してたから。

幼馴染は降って湧いたキスのチャンスを前に、我慢できなくなって、身体だけでもいいからって、遊び人風に迫ってみた。

内心素晴らしく心臓をバクバクさせてるし、抱いたら抱いたで恋人になってくれと告白したくなるしで、毎日心の中が春の嵐状態でもう大変。
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