ツイノベ倉庫〜1000文字程度の短編集

兎騎かなで

文字の大きさ
上 下
99 / 126

99.小説家とチャラい幼馴染

しおりを挟む
小説家である彼は、絶賛スランプに陥っていた。

「駄目だ、お色気シーンなんて書けん!」

今回は色っぽい感じでお願いしますと、担当から言われているから、苦手でも書かねばならない。

恋愛経験ゼロのチェリーには難問だった。

考えた挙句、一番女の扱いに慣れていそうなチャラい友達に声をかける。

居酒屋の個室でコソコソと相談を持ちかけた。

「……ってことなんだよ。お前の武勇伝を聞かせてくれ」
「そんなん実地で経験した方がよくね?」

実地なんてハードルが高すぎる。

「む、無理だ。女性と話すと考えただけで、固まってしまう。風俗にすら行ける気がしない」
「重症だなあお前……キスくらい誰とでもできるだろ」
「え、んっ、むうぅ!?」

いきなりキスされ、目を白黒させる小説家くん。

「ほら、簡単だろ?」
「いきなり何を! は、はっ、ハレンチな!」
「ハレンチってなにそれ。ほら、上顎の下とか舐めてみるといいぞ」

言葉通りのことを実践され、だんだん息が上がってくる。

「いっ……あ!」
「ふ、お前の反応、かわいいな」
「ば、かっ、やめろ!」
「お前が知りたいって言ったんだろ?」

至近距離で色っぽく微笑まれ、顔に熱が昇る。

「なんだったら抱いてやってもいいよ、俺アンタならいけそう」
「な……!?」
「ほら、行こうぜ」

頭が追いつかず、されるがままに家に連れ込まれてにゃんにゃんされる。

それがやたらと丁寧に感じさせてくれて、超絶テクニックに翻弄され、めちゃくちゃに乱されちゃう。

次の日いざ仕事に取り掛かろうとしても、思い出すのは彼のことばかり。

彼にされたときのアレやコレやを、内心叫びながら文章に書き起こし、担当に送りつけた。

「先生! 素晴らしいです、こんな感じでいきましょう」

あっさり通ってしまって拍子抜け。

戸惑いながらも幼馴染にお礼を言うと、なんとなく不機嫌そうにされる。

「ふーん……参考になってよかったよ。次回のための予習、しとく?」
「えっ!? ……あ、そう、だな。色々なパターンを知っておいた方がいいか、お願いできるか?」

幼馴染はデートと称して恋人のように振る舞い、夜は前回より情熱的に抱いてくる。

なんでここまでしてくれるのかと、戸惑いながらも勉強になるしと受け入れた。

(それに、コイツとデートしたり色々されるの、嫌じゃないしな……)

三回目のデート時、意識しながら見つめると、意味ありげに笑われる。

「そんな目で見るなよ、夜が待ちきれないってか?」
「ち、違うって!」

小説家は知らない。幼馴染は十年以上前から、小説家にガチ恋していたことを。

チャラく遊んでる風なのは、ノンケであろう幼馴染を襲わないよう、理性を振り絞り他で発散してたから。

幼馴染は降って湧いたキスのチャンスを前に、我慢できなくなって、身体だけでもいいからって、遊び人風に迫ってみた。

内心素晴らしく心臓をバクバクさせてるし、抱いたら抱いたで恋人になってくれと告白したくなるしで、毎日心の中が春の嵐状態でもう大変。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

チョコのように蕩ける露出狂と5歳児

ミクリ21
BL
露出狂と5歳児の話。

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

別に、好きじゃなかった。

15
BL
好きな人が出来た。 そう先程まで恋人だった男に告げられる。 でも、でもさ。 notハピエン 短い話です。 ※pixiv様から転載してます。

熱のせい

yoyo
BL
体調不良で漏らしてしまう、サラリーマンカップルの話です。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

処理中です...