ツイノベ倉庫〜1000文字程度の短編集

93.攻めのおいで

「あーあ、やらかしたー」
「大丈夫だって、元気出せよ」

あと先考えずに動く癖のある俺は、やらかした後に後悔をすることが多々ある。

「絶対部長怒ってるってー」
「俺も一緒に謝ってやる」
「お前めちゃくちゃ頼りになるなあ、いつもありがとうなあ」
「はは、おいで」

同期の彼に抱きしめられると、本当に気持ちが安らぐ。

きっと俺の前世はこいつのペットだったのだろうってくらい、抱きしめられていると気持ちがほこほこする。

凹んでいた気持ちが浮上し、なんでもできるような気になってくる。

犬になったつもりで鼻先を胸に擦りつけた。

「はー、癒されるー」
「癒されるだけか？」
「んー？　んー」

頷くと、なぜかため息を吐かれた。

「どしたー？」
「いや、気長に待つさ」

飲み会の席でイチャつく二人を傍目に、同僚はこそこそと耳打ちしあう。

「あれで付き合ってないって本当なの？」
「らしいぜ。同期のアイツ、絶対うかつ君のこと狙ってるだろ。さっさとくっつけばいいのに」

多分、いざ同期君がうかつ君に告白したら、そんなつもりはなかった！　って逃げ回る。

けれど結局、精神安定剤みたく依存してるから、同期君の元に戻ってきてゴリゴリに意識しちゃって、絆されてそのうちくっつくのでしょう。