84 / 126
84.運命の番に惹かれたくないオメガ
しおりを挟む
オメガだと色眼鏡で見られるのが嫌で、ベータのフリをして生きてきた。
誰よりも努力をして、やっとみんなと同等レベルの仕事しかできないが、自立した生活を送ることに誇りを持っていた。
なのに運命の番と出会い、状況が一変してしまう。
理性では認めたくないのに、本能で強烈に惹かれて、気がつくと腕の中にいて抵抗できなかった。
アルファはオメガを情熱的に口説き、なし崩しに番にしてしまう。
こんなはずじゃなかった。誰とも恋愛する気はなかったし、ましてや番を作るなんて考えたこともなかった。
抱かれながら頸に牙を立てられ、あまりのことに泣き出したオメガを、アルファは気遣わしげに見つめる。
「どうした? 痛かったのか?」
「違う……! なんで、勝手に番にした……!」
「だって運命の番だよ? 出会った瞬間、君以外の人は考えられないと思った。君だってそうだろう?」
言葉に詰まる。ここまで流されてしまったのは、確かにアルファに惹かれたからだ。
「愛してるよ」
「俺は……っ、お前のことなんて……!」
嫌いだと言ってしまいたかった。
勝手に番にするなんて許せない、人生計画が滅茶苦茶だ。
そう思うのに言葉が出てこない。
嫌いだと言いきれないほど、肌をあわせるのが心地がいい。
大切な失くし物を見つけた時のような、心の底から安心できるような感覚を、アルファに対して感じている。
「お前の、ことなんて……」
「愛してるよ」
「う……っ」
いいとも嫌とも言えないまま、運命の番と出会ったことで起きた発情期の熱に流された。
発情期が終わってもアルファはオメガの元に通い、誠心誠意尽くしてくれる。
こんなに優しくされたら絆されてしまう、一人で立てなくなると恐怖し突っぱねると、アルファは悲しそうに呟く。
「僕が君を愛するのは、迷惑なのかな」
「……」
今すぐに抱きつきたい本能と、平穏を乱す敵を排除しろと叫ぶ理性が入り乱れて、一言すら話せない。
「そんなに嫌なら、普段は会わないようにするから。悪いけれど、発情期の時だけは抱かれてね? でないと君が辛い思いをする……」
言葉の途中で彼の腕を掴み引き留めた。
普段は会わないようにする? そんなのは無理だ、耐えられない。
もうとっくに一人でいるのが不可能になっていると、改めて気づいて涙した。
「君は泣き虫だね」
「煩い、ひぐっ……お前のせいだ」
「そうだね、僕のせいだ。責任をとらせてね」
グッと肩を引き寄せ抱きしめられて、心から安堵した。
これからどうなるのか、番のいる人生なんて想像すらしたことがない。
けれど彼が側にいてくれるのなら、これまで思い描いていた幸せを捨てたっていいと思えた。
悲壮な覚悟で同棲し始めると、想像以上に幸せで。
いつしか眉間に常に居座っていた皺もなくなった。
泣くのはもっぱら感動映画を見た時か、ベッドの中だけになったらしい。
誰よりも努力をして、やっとみんなと同等レベルの仕事しかできないが、自立した生活を送ることに誇りを持っていた。
なのに運命の番と出会い、状況が一変してしまう。
理性では認めたくないのに、本能で強烈に惹かれて、気がつくと腕の中にいて抵抗できなかった。
アルファはオメガを情熱的に口説き、なし崩しに番にしてしまう。
こんなはずじゃなかった。誰とも恋愛する気はなかったし、ましてや番を作るなんて考えたこともなかった。
抱かれながら頸に牙を立てられ、あまりのことに泣き出したオメガを、アルファは気遣わしげに見つめる。
「どうした? 痛かったのか?」
「違う……! なんで、勝手に番にした……!」
「だって運命の番だよ? 出会った瞬間、君以外の人は考えられないと思った。君だってそうだろう?」
言葉に詰まる。ここまで流されてしまったのは、確かにアルファに惹かれたからだ。
「愛してるよ」
「俺は……っ、お前のことなんて……!」
嫌いだと言ってしまいたかった。
勝手に番にするなんて許せない、人生計画が滅茶苦茶だ。
そう思うのに言葉が出てこない。
嫌いだと言いきれないほど、肌をあわせるのが心地がいい。
大切な失くし物を見つけた時のような、心の底から安心できるような感覚を、アルファに対して感じている。
「お前の、ことなんて……」
「愛してるよ」
「う……っ」
いいとも嫌とも言えないまま、運命の番と出会ったことで起きた発情期の熱に流された。
発情期が終わってもアルファはオメガの元に通い、誠心誠意尽くしてくれる。
こんなに優しくされたら絆されてしまう、一人で立てなくなると恐怖し突っぱねると、アルファは悲しそうに呟く。
「僕が君を愛するのは、迷惑なのかな」
「……」
今すぐに抱きつきたい本能と、平穏を乱す敵を排除しろと叫ぶ理性が入り乱れて、一言すら話せない。
「そんなに嫌なら、普段は会わないようにするから。悪いけれど、発情期の時だけは抱かれてね? でないと君が辛い思いをする……」
言葉の途中で彼の腕を掴み引き留めた。
普段は会わないようにする? そんなのは無理だ、耐えられない。
もうとっくに一人でいるのが不可能になっていると、改めて気づいて涙した。
「君は泣き虫だね」
「煩い、ひぐっ……お前のせいだ」
「そうだね、僕のせいだ。責任をとらせてね」
グッと肩を引き寄せ抱きしめられて、心から安堵した。
これからどうなるのか、番のいる人生なんて想像すらしたことがない。
けれど彼が側にいてくれるのなら、これまで思い描いていた幸せを捨てたっていいと思えた。
悲壮な覚悟で同棲し始めると、想像以上に幸せで。
いつしか眉間に常に居座っていた皺もなくなった。
泣くのはもっぱら感動映画を見た時か、ベッドの中だけになったらしい。
21
お気に入りに追加
235
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる