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72.ねこうさ現代風
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施設育ちの兎獣人は、よく考えず友達の保証人になってしまい、多額の借金を抱えることになった。
返すためには内臓を売るか、体を売って稼ぐしかないと取立て人に脅されて、泣く泣く男娼になる。
最初こそそれなりに扱われたものの、一年も経つと飽きられ、乱暴な扱いをされるランクの低い店に移された。
(もう無理だ、これ以上は耐えられない)
手持ちの金はほとんどない。子どもの頃から大切にしているブレスレットだけを持って、店を抜け出した。
これからどうしようと途方に暮れていると、明らかにカタギではない雰囲気の猫獣人が、店の上司に暴力を振るっている場面に遭遇する。
(うわあ、関わりあいになりたくない)
そっと立ち去ろうとしたのに、見つかってしまった。
「お前は……!」
猫獣人は兎獣人を見て驚き立ちすくむ。なぜだかその姿に見覚えがある気がして見つめ返すと、壁ドンされた。
「おいお前、もしかしてエレか?」
「えっ、あ、カシヤ……!?」
幼い頃にバングルをくれた男の子だ。雰囲気がより刺々しくなっていて一瞬わからなかった。
くしゃりと顔を歪めた猫獣人は、すぐに険しい表情で兎獣人の腕を掴む。
「こんなところにいたのか……来い」
「わあっ! 離して!」
立派なお屋敷に連れていかれて、今日からここに住めと言われる。
「そんな、困るよ! 僕には借金があるから、取立て人が追いかけてくる。カシヤに迷惑をかけちゃう」
それに、なんだか変わってしまった彼は怖い。刺青とか腕に入ってるし。
「はは、上等だ。お前の取立て屋がいるシマとは前から反りがあわなかったんだ、全滅戦争といこうか」
「あわわわ……」
カシヤはその筋では有名な組の頭となっていた。
表の顔では会社を経営しながら、裏では悪どいことをしているようだ。
やり手の彼は、あっという間にエレのいた店を潰してしまった。
「こんなことして大丈夫なの?」
「裏工作は完璧だ、足はつかない」
「どうしてここまで僕のために……」
真剣な瞳で見つめられて心臓が跳ねる。
「消息不明となったお前を探すために、俺は裏社会に足を踏み入れた。全てはエレ、お前を手に入れるためだ」
「そんな……」
兎獣人は衝撃を受けた。自分を手に入れるために悪事に手を染めただなんて……
ゾクゾクと得体の知れない感情が湧き起こり、笑いが込み上げてくる。
「ぅふ、そうなんだ……そうまでして僕のために……嬉しい」
彼を恐ろしいと思っていた感情も、瞬く間に溶けてなくなっていく。
「逃げる理由はなくなったな。これでお前は俺のものだ。そうだろ?」
「うん、いいよ……こんな汚れた僕でいいなら、カシヤに全部あげる」
「汚れているのは俺も同じだ。それに心配はいらない、お前はどこまで堕ちても美しい」
二人は心と体を通わせた。
兎獣人は姉御ならぬ兄御となり、角が立たないように悪事から手を引くよう、猫頭を誘導していく。
紆余曲折あったものの、今ではカタギになった夫を持つ普通の社長夫人として、幸せに暮らしているそうな。
返すためには内臓を売るか、体を売って稼ぐしかないと取立て人に脅されて、泣く泣く男娼になる。
最初こそそれなりに扱われたものの、一年も経つと飽きられ、乱暴な扱いをされるランクの低い店に移された。
(もう無理だ、これ以上は耐えられない)
手持ちの金はほとんどない。子どもの頃から大切にしているブレスレットだけを持って、店を抜け出した。
これからどうしようと途方に暮れていると、明らかにカタギではない雰囲気の猫獣人が、店の上司に暴力を振るっている場面に遭遇する。
(うわあ、関わりあいになりたくない)
そっと立ち去ろうとしたのに、見つかってしまった。
「お前は……!」
猫獣人は兎獣人を見て驚き立ちすくむ。なぜだかその姿に見覚えがある気がして見つめ返すと、壁ドンされた。
「おいお前、もしかしてエレか?」
「えっ、あ、カシヤ……!?」
幼い頃にバングルをくれた男の子だ。雰囲気がより刺々しくなっていて一瞬わからなかった。
くしゃりと顔を歪めた猫獣人は、すぐに険しい表情で兎獣人の腕を掴む。
「こんなところにいたのか……来い」
「わあっ! 離して!」
立派なお屋敷に連れていかれて、今日からここに住めと言われる。
「そんな、困るよ! 僕には借金があるから、取立て人が追いかけてくる。カシヤに迷惑をかけちゃう」
それに、なんだか変わってしまった彼は怖い。刺青とか腕に入ってるし。
「はは、上等だ。お前の取立て屋がいるシマとは前から反りがあわなかったんだ、全滅戦争といこうか」
「あわわわ……」
カシヤはその筋では有名な組の頭となっていた。
表の顔では会社を経営しながら、裏では悪どいことをしているようだ。
やり手の彼は、あっという間にエレのいた店を潰してしまった。
「こんなことして大丈夫なの?」
「裏工作は完璧だ、足はつかない」
「どうしてここまで僕のために……」
真剣な瞳で見つめられて心臓が跳ねる。
「消息不明となったお前を探すために、俺は裏社会に足を踏み入れた。全てはエレ、お前を手に入れるためだ」
「そんな……」
兎獣人は衝撃を受けた。自分を手に入れるために悪事に手を染めただなんて……
ゾクゾクと得体の知れない感情が湧き起こり、笑いが込み上げてくる。
「ぅふ、そうなんだ……そうまでして僕のために……嬉しい」
彼を恐ろしいと思っていた感情も、瞬く間に溶けてなくなっていく。
「逃げる理由はなくなったな。これでお前は俺のものだ。そうだろ?」
「うん、いいよ……こんな汚れた僕でいいなら、カシヤに全部あげる」
「汚れているのは俺も同じだ。それに心配はいらない、お前はどこまで堕ちても美しい」
二人は心と体を通わせた。
兎獣人は姉御ならぬ兄御となり、角が立たないように悪事から手を引くよう、猫頭を誘導していく。
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