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58.真実の愛を選んだアルファと、平凡なオメガの話
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ベータの親から産まれたオメガ、他のオメガのようにかわいくも儚げでもない凡庸な容姿を、コンプレックスに感じていた。
それでもいつか番ってくれるアルファがいるかもしれないと夢見ていたが、出会いがないまま三十歳半ばを過ぎた。
もう一生誰とも番えないのかと思いながら仕事に打ち込んでいた矢先、運命の番と出会う。
彼は綺麗な恋人を腕の中に抱いて、オメガを忌々しいとでも言いたげな目で見てくる。
「なぜ俺の番がこんなにも凡庸なんだ」
運命の彼は一流企業の御曹司で、顔も生まれも恵まれた極上の男だった。
凡庸と言いながらもオメガに惹かれてもいるようで、出会う度に熱っぽい瞳を向けられる。
けれど彼は恋人を手放す気はないようだった。オメガと違って美しく気高い恋人は、オメガを見下すように笑う。
そうだよな、こんなに平凡な自分が彼の番になろうだなんて、おこがましい考えだった。
もう誰とも番わないつもりで淡々と毎日の生活をこなしていると、ある日恋人を連れていない彼とバッタリ会う。
「……来い」
その一言だけで、まるで魅入られたかのように他のことが一切目に入らなくなって。
気がつくと彼の部屋の中で腕に抱かれていて、ハッと降り仰いだ。
彼は揺らぐ瞳でオメガを見つめる。
「なぜ、お前なんだ」
辛そうなのに、瞳の熱は溶けそうな程熱がこもっていて。
情熱的に愛されて、抱いていた空虚さも寂しさも全て忘れて彼にのめり込んだ。
身体を重ねると運命の番であるせいか、すぐに発情期に入った。
みっともない程乱れるオメガを、アルファは貪るように抱く。
「やはりお前しかいない……だが、一族から認められるかどうか」
「どういうこと?」
「婚約者がいるんだ。けれどお前と出会ってしまった。どうしようもなく離れがたいが、婚約者は俺の一族が選んだ重要な取引先の子息だ。君の存在は我が社にとって不利益となる」
苦悩するアルファに惹かれてしまうオメガ。
彼のためにも身を引くべきだと思ったが、発情期が終わった後も仕事先で何度か会うことになる。
事務的に接しようとするアルファだったが、何度も会ううちにますます好きの想いが募っていく。
それはアルファも同じようで、人目を忍んでお互いの家に通う日々が続く。
だがそんなある日、アルファの婚約者が現れて激しくオメガを責めた。
「彼は本当は僕と結婚したいと思っているのに、君が現れたせいで苦しんでいる。彼に相応しいのは僕だけ。二度と彼に近づかないで!」
オメガは婚約者の訴えに心を痛めて、身を引くことにした。
近くに住んでいたら未練がましく会いにいってしまうからと引越しを決意し荷物をまとめていると、息をきらしたアルファがやってくる。
「俺が間違っていた、今まで優柔不断な態度をとっていてすまない。やはり俺にはお前しかいない、行かないでくれ!」
「どうして? 恋人さんがいるんじゃ……」
「彼は俺の条件を愛していただけだった。俺自身を見て献身的に愛を注いでくれたのはお前だけだ」
アルファはオメガの足元にひざまづいた。
「元婚約者の実家の力を借りずとも、俺が会社を経営できると一族にも認めさせる。どうか側にいて、見届けてくれないか」
すがりつくようにお願いされて、じわりと涙が瞳に滲んだ。
諦めなければと思っていたけれど……
「貴方を好きで居続けても、側にいてもいいのですか?」
「ああ、お願いだ。お前に辛い思いをさせるかもしれないが、諦めきれないんだ」
「いえ、選んでくれて嬉しいです……っ! 何があっても貴方の側にいられたら、私は幸せです」
そうして真実の愛を選んだアルファは、平凡なオメガと運命の番として結ばれた。
アルファの代の会社の成長は目覚ましく、オメガは常に幸せそうな笑顔で側に寄り添っていたそうだ。
それでもいつか番ってくれるアルファがいるかもしれないと夢見ていたが、出会いがないまま三十歳半ばを過ぎた。
もう一生誰とも番えないのかと思いながら仕事に打ち込んでいた矢先、運命の番と出会う。
彼は綺麗な恋人を腕の中に抱いて、オメガを忌々しいとでも言いたげな目で見てくる。
「なぜ俺の番がこんなにも凡庸なんだ」
運命の彼は一流企業の御曹司で、顔も生まれも恵まれた極上の男だった。
凡庸と言いながらもオメガに惹かれてもいるようで、出会う度に熱っぽい瞳を向けられる。
けれど彼は恋人を手放す気はないようだった。オメガと違って美しく気高い恋人は、オメガを見下すように笑う。
そうだよな、こんなに平凡な自分が彼の番になろうだなんて、おこがましい考えだった。
もう誰とも番わないつもりで淡々と毎日の生活をこなしていると、ある日恋人を連れていない彼とバッタリ会う。
「……来い」
その一言だけで、まるで魅入られたかのように他のことが一切目に入らなくなって。
気がつくと彼の部屋の中で腕に抱かれていて、ハッと降り仰いだ。
彼は揺らぐ瞳でオメガを見つめる。
「なぜ、お前なんだ」
辛そうなのに、瞳の熱は溶けそうな程熱がこもっていて。
情熱的に愛されて、抱いていた空虚さも寂しさも全て忘れて彼にのめり込んだ。
身体を重ねると運命の番であるせいか、すぐに発情期に入った。
みっともない程乱れるオメガを、アルファは貪るように抱く。
「やはりお前しかいない……だが、一族から認められるかどうか」
「どういうこと?」
「婚約者がいるんだ。けれどお前と出会ってしまった。どうしようもなく離れがたいが、婚約者は俺の一族が選んだ重要な取引先の子息だ。君の存在は我が社にとって不利益となる」
苦悩するアルファに惹かれてしまうオメガ。
彼のためにも身を引くべきだと思ったが、発情期が終わった後も仕事先で何度か会うことになる。
事務的に接しようとするアルファだったが、何度も会ううちにますます好きの想いが募っていく。
それはアルファも同じようで、人目を忍んでお互いの家に通う日々が続く。
だがそんなある日、アルファの婚約者が現れて激しくオメガを責めた。
「彼は本当は僕と結婚したいと思っているのに、君が現れたせいで苦しんでいる。彼に相応しいのは僕だけ。二度と彼に近づかないで!」
オメガは婚約者の訴えに心を痛めて、身を引くことにした。
近くに住んでいたら未練がましく会いにいってしまうからと引越しを決意し荷物をまとめていると、息をきらしたアルファがやってくる。
「俺が間違っていた、今まで優柔不断な態度をとっていてすまない。やはり俺にはお前しかいない、行かないでくれ!」
「どうして? 恋人さんがいるんじゃ……」
「彼は俺の条件を愛していただけだった。俺自身を見て献身的に愛を注いでくれたのはお前だけだ」
アルファはオメガの足元にひざまづいた。
「元婚約者の実家の力を借りずとも、俺が会社を経営できると一族にも認めさせる。どうか側にいて、見届けてくれないか」
すがりつくようにお願いされて、じわりと涙が瞳に滲んだ。
諦めなければと思っていたけれど……
「貴方を好きで居続けても、側にいてもいいのですか?」
「ああ、お願いだ。お前に辛い思いをさせるかもしれないが、諦めきれないんだ」
「いえ、選んでくれて嬉しいです……っ! 何があっても貴方の側にいられたら、私は幸せです」
そうして真実の愛を選んだアルファは、平凡なオメガと運命の番として結ばれた。
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