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54.番に振られたオメガと警官の話
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番契約を結んだ相手にこっ酷く捨てられたオメガ。
もう終わりだと思い川から飛び込もうとしたら、通りがかった警官アルファに止められた。
「死ぬな、生きてくれ!」
「アンタに何がわかるっていうんだ!」
めちゃくちゃに叫んで泣いて暴れたけれど、警官によって保護されてしまう。
もう何をする気力も無くして詰所でうずくまっていると、警官から声をかけられる。
「お前もしかしてオメガか?」
「……だったら何」
同情的な警官に促されるうちに、アルファに番を解消されて住む場所がないと白状してしまう。
「そうか、辛かったな……よかったら俺んちに来ないか?」
「え?」
「実は親から番はまだかとせっつかれていてな。お前さえよければ、恋人のフリをしないか」
もう自分は誰かと番になれないのにと驚き、同情されてるのかと惨めな気分になる。
「いや、いいよ」
「駄目だ、そんな匂いをさせながら路上に出ればボロボロにされるぞ。いいから来い」
オメガの身体は番契約の破棄により、フェロモンも発情期もあるが誰とも番になれない状態となっていた。
オメガば塞ぎ込んで家から一歩も出ずに過ごした。
発情期になってもじっと割り当てられた自室で耐えていると、警官がやってくる。
ぎしっとベッドが軋む音にさえ震える肩に、彼は手をかける。
「辛いなら頼れよ、恋人だろ?」
「フリ、なんでしょ。ほっといて」
「いいから。ほら来い」
強引なのに優しい警官の手によって、オメガは何度も高みへ昇る。
けれど何をされても満たされた気がしなくて、体は番を欲している。
「辛いよ、熱い……っ」
「大丈夫だから……」
狂いそうな熱は警官によって緩和されたけれど、体の奥はいつまでも残火で炙られている。
発情期が終わっても行く当てのないオメガは、アルファの元にいた。
お節介だけど優しいしかっこいいし、なんで自分みたいな捨てられオメガに構うんだろうって疑問が湧く。
「ねえ、なんで助けたの」
「……昔助けられなかった初恋の人が、君とそっくりだったんだ。今度は間に合ってよかった」
ああ、こんなに親身になって助けてくれたのは、初恋の人に似ていたからなんだ。
ショックを受けつつも、彼の好きだった故人はどんな人なんだろうと気になりはじめる。
時々オメガを見つめる彼の目が、どこか痛みを帯びているように感じるようになった。
今きっと、初恋の人のことを考えていたんだ。ずきりと胸が痛んだ。
親身になってオメガを気遣って恋人のように扱ってくれる彼に、気がつくと恋をしていた。
けれどどれだけ想っても、彼の心には初恋の人が住んでいて。
例え気持ちが結ばれたって番にはなれない。毎日そう思う自分に嫌気が差して、家を出ていくことにした。
橋の上でぼうっとしてしていると、息を弾ませた警官が駆けてくる。
「行くな!」
転けるほどの勢いで抱きしめられて、たまらなくなって口から気持ちがまろび出た。
「好きだ」
「え?」
驚く彼を突き放し駆け出そうとすると、腕を掴まれ引き止められる。
「ごめん、忘れて」
「忘れられるか! 俺だってお前が好きなんだ」
「えっ」
拾った時からずっと心惹かれてた、一緒に住まわせたのも恋人扱いしたのも下心があったからで、手を出してしまい後ろめたくて言えなかった。
最初は初恋の人を重ねていたけれど今好きなのはお前だと言われて。
勝手に涙が溢れだした。そんなオメガを警官は優しく抱き留める。
「こんな不完全なオメガでも、愛してくれるっていうの」
「オメガかどうかは関係ない、お前がいいんだ」
警官の腕を抱き返した。きっとこれからも困難に見舞われるだろうけど、彼と一緒なら乗り越えられる気がする。
そうして番になれない二人はシワシワの手になっても、変わらず側にいた。
もう終わりだと思い川から飛び込もうとしたら、通りがかった警官アルファに止められた。
「死ぬな、生きてくれ!」
「アンタに何がわかるっていうんだ!」
めちゃくちゃに叫んで泣いて暴れたけれど、警官によって保護されてしまう。
もう何をする気力も無くして詰所でうずくまっていると、警官から声をかけられる。
「お前もしかしてオメガか?」
「……だったら何」
同情的な警官に促されるうちに、アルファに番を解消されて住む場所がないと白状してしまう。
「そうか、辛かったな……よかったら俺んちに来ないか?」
「え?」
「実は親から番はまだかとせっつかれていてな。お前さえよければ、恋人のフリをしないか」
もう自分は誰かと番になれないのにと驚き、同情されてるのかと惨めな気分になる。
「いや、いいよ」
「駄目だ、そんな匂いをさせながら路上に出ればボロボロにされるぞ。いいから来い」
オメガの身体は番契約の破棄により、フェロモンも発情期もあるが誰とも番になれない状態となっていた。
オメガば塞ぎ込んで家から一歩も出ずに過ごした。
発情期になってもじっと割り当てられた自室で耐えていると、警官がやってくる。
ぎしっとベッドが軋む音にさえ震える肩に、彼は手をかける。
「辛いなら頼れよ、恋人だろ?」
「フリ、なんでしょ。ほっといて」
「いいから。ほら来い」
強引なのに優しい警官の手によって、オメガは何度も高みへ昇る。
けれど何をされても満たされた気がしなくて、体は番を欲している。
「辛いよ、熱い……っ」
「大丈夫だから……」
狂いそうな熱は警官によって緩和されたけれど、体の奥はいつまでも残火で炙られている。
発情期が終わっても行く当てのないオメガは、アルファの元にいた。
お節介だけど優しいしかっこいいし、なんで自分みたいな捨てられオメガに構うんだろうって疑問が湧く。
「ねえ、なんで助けたの」
「……昔助けられなかった初恋の人が、君とそっくりだったんだ。今度は間に合ってよかった」
ああ、こんなに親身になって助けてくれたのは、初恋の人に似ていたからなんだ。
ショックを受けつつも、彼の好きだった故人はどんな人なんだろうと気になりはじめる。
時々オメガを見つめる彼の目が、どこか痛みを帯びているように感じるようになった。
今きっと、初恋の人のことを考えていたんだ。ずきりと胸が痛んだ。
親身になってオメガを気遣って恋人のように扱ってくれる彼に、気がつくと恋をしていた。
けれどどれだけ想っても、彼の心には初恋の人が住んでいて。
例え気持ちが結ばれたって番にはなれない。毎日そう思う自分に嫌気が差して、家を出ていくことにした。
橋の上でぼうっとしてしていると、息を弾ませた警官が駆けてくる。
「行くな!」
転けるほどの勢いで抱きしめられて、たまらなくなって口から気持ちがまろび出た。
「好きだ」
「え?」
驚く彼を突き放し駆け出そうとすると、腕を掴まれ引き止められる。
「ごめん、忘れて」
「忘れられるか! 俺だってお前が好きなんだ」
「えっ」
拾った時からずっと心惹かれてた、一緒に住まわせたのも恋人扱いしたのも下心があったからで、手を出してしまい後ろめたくて言えなかった。
最初は初恋の人を重ねていたけれど今好きなのはお前だと言われて。
勝手に涙が溢れだした。そんなオメガを警官は優しく抱き留める。
「こんな不完全なオメガでも、愛してくれるっていうの」
「オメガかどうかは関係ない、お前がいいんだ」
警官の腕を抱き返した。きっとこれからも困難に見舞われるだろうけど、彼と一緒なら乗り越えられる気がする。
そうして番になれない二人はシワシワの手になっても、変わらず側にいた。
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