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49.昔フラれた幼馴染とキスする話
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男ばかりの王様ゲームで、陽キャが王様になった。
「2番と4番がキスな」
2番は俺、幼馴染が4番だった。おいおいってお互い目をあわせる。
「お前らなら絵になるしイケる!」はやし立てられて、幼馴染は覚悟を決めたみたいに目が座る。
待てよ、俺は昔お前に告って玉砕した経歴持ちなんですが⁉︎
そんな対象として見てなかったって言ってたじゃん、いいのかよガチ恋心抱いてるやつにお遊びとはいえキスしても!
内心叫んでいるうちに唇が近づいてくる。
見てられなくて目を閉じると、ふにっと唇に柔らかい感触がして、周囲から野太い悲鳴と野次があがる。
目をつぶったまま震えていると、耳元で「後で話がある」って囁かれた。
そのままゲーム続行する気分ではなく帰りたかったが、でももしかしてって期待があって、中座もできずにソワソワして過ごす。
幼馴染の家から他のメンツが帰り、俺だけが彼の家に残った。
友達でいようっていう言葉を苦労して受け入れたのに、今更蒸し返すのかってグラグラしていると、彼が一言。
「なあ、恋人のフリしてくれないか」
「はあ?」
最近ストーカーに困っていて、相手がいるとアピールしたいらしい。なんで俺?
「どうせ都合がいいやつってことで、真っ先に俺が浮かんだんだろ」
「こんなこと頼めるのはお前しかいないんだ、頼むよ。またキスしてやるから。意外と気持ちよかったし」
人をバカにするにも程があると、ビンタしてやりたかった。でもやっぱり好きで。
「二度とキスするな」そう条件をつけて彼の偽りの恋人を演じることになった。
彼は偽りとはいえ恋人を大事にするタイプらしく、デートでは甘やかしてくれるし家に行けば好物ばかり用意してもてなしてくれるしで、好きの気持ちが募っていく。
あまりにも幸せで、だけど偽物の恋人だと思うと切なくて。
引き裂かれそうな心に耐えきれなくなり、別れを申し出た。
「そっか。ストーカーも諦めたみたいだから、まあいいよ」って。
まあいいよで終わる関係なんだって、渇いた笑いが漏れた。
今まで通りの友達関係に戻ったけれど、前みたいにやっと誤魔化せた時より好きが育ちすぎていて、上手く友達の仮面を被れない。
もう会うのはよそうと決意しバイトに打ち込んでいると、陽キャから電話がかかってくる。
幼馴染が落ち込んでいるから、一番あいつをわかってるお前が聞いてこいと言われ、断りきれずに様子を見にいく。
玄関を開けた途端、中に引きずり込まれて抱きしめられた。
「会いたかった……!」
「な、なんだよ」
「お前が側からいなくなって初めて気づいたんだ。俺がどれだけお前の存在に救われていたのか」
幼馴染とは幼稚園の頃から一緒で、空気みたいな存在と言っても過言じゃなかった。
俺だって離れるのが辛かった。
同じように考えてくれているんだろうか。
おずおずと抱きしめ返すと、耳元に切羽詰まった声が響く。
「愛してるんだ、側にいてくれ」
「……恋人ごっこの続きをするんじゃなくて?」
「それじゃ足りない、本当の恋だったんだ。側にいるのが当たり前すぎて気づけなかった」
「鈍感」「うん」「馬鹿」「そうだな」
ひとしきり気が済むまで罵ってから、笑って言ってやった。
「キスしていいよ」
真心のこもったキスは、今までの怒りや虚しさを吹き飛ばすくらい優しくて甘やかで。
ずっとこんな風に大切にしてくれるなら許す、なんて思っていたのに想像以上に大事大事にしてくれちゃってさ。
お陰で今日もバイトの制服に着替える時、すげー恥ずかしかったわ。
「2番と4番がキスな」
2番は俺、幼馴染が4番だった。おいおいってお互い目をあわせる。
「お前らなら絵になるしイケる!」はやし立てられて、幼馴染は覚悟を決めたみたいに目が座る。
待てよ、俺は昔お前に告って玉砕した経歴持ちなんですが⁉︎
そんな対象として見てなかったって言ってたじゃん、いいのかよガチ恋心抱いてるやつにお遊びとはいえキスしても!
内心叫んでいるうちに唇が近づいてくる。
見てられなくて目を閉じると、ふにっと唇に柔らかい感触がして、周囲から野太い悲鳴と野次があがる。
目をつぶったまま震えていると、耳元で「後で話がある」って囁かれた。
そのままゲーム続行する気分ではなく帰りたかったが、でももしかしてって期待があって、中座もできずにソワソワして過ごす。
幼馴染の家から他のメンツが帰り、俺だけが彼の家に残った。
友達でいようっていう言葉を苦労して受け入れたのに、今更蒸し返すのかってグラグラしていると、彼が一言。
「なあ、恋人のフリしてくれないか」
「はあ?」
最近ストーカーに困っていて、相手がいるとアピールしたいらしい。なんで俺?
「どうせ都合がいいやつってことで、真っ先に俺が浮かんだんだろ」
「こんなこと頼めるのはお前しかいないんだ、頼むよ。またキスしてやるから。意外と気持ちよかったし」
人をバカにするにも程があると、ビンタしてやりたかった。でもやっぱり好きで。
「二度とキスするな」そう条件をつけて彼の偽りの恋人を演じることになった。
彼は偽りとはいえ恋人を大事にするタイプらしく、デートでは甘やかしてくれるし家に行けば好物ばかり用意してもてなしてくれるしで、好きの気持ちが募っていく。
あまりにも幸せで、だけど偽物の恋人だと思うと切なくて。
引き裂かれそうな心に耐えきれなくなり、別れを申し出た。
「そっか。ストーカーも諦めたみたいだから、まあいいよ」って。
まあいいよで終わる関係なんだって、渇いた笑いが漏れた。
今まで通りの友達関係に戻ったけれど、前みたいにやっと誤魔化せた時より好きが育ちすぎていて、上手く友達の仮面を被れない。
もう会うのはよそうと決意しバイトに打ち込んでいると、陽キャから電話がかかってくる。
幼馴染が落ち込んでいるから、一番あいつをわかってるお前が聞いてこいと言われ、断りきれずに様子を見にいく。
玄関を開けた途端、中に引きずり込まれて抱きしめられた。
「会いたかった……!」
「な、なんだよ」
「お前が側からいなくなって初めて気づいたんだ。俺がどれだけお前の存在に救われていたのか」
幼馴染とは幼稚園の頃から一緒で、空気みたいな存在と言っても過言じゃなかった。
俺だって離れるのが辛かった。
同じように考えてくれているんだろうか。
おずおずと抱きしめ返すと、耳元に切羽詰まった声が響く。
「愛してるんだ、側にいてくれ」
「……恋人ごっこの続きをするんじゃなくて?」
「それじゃ足りない、本当の恋だったんだ。側にいるのが当たり前すぎて気づけなかった」
「鈍感」「うん」「馬鹿」「そうだな」
ひとしきり気が済むまで罵ってから、笑って言ってやった。
「キスしていいよ」
真心のこもったキスは、今までの怒りや虚しさを吹き飛ばすくらい優しくて甘やかで。
ずっとこんな風に大切にしてくれるなら許す、なんて思っていたのに想像以上に大事大事にしてくれちゃってさ。
お陰で今日もバイトの制服に着替える時、すげー恥ずかしかったわ。
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