42 / 126
42.ベータに恋したオメガの話
しおりを挟む
絶世の美人に生まれたオメガの美少年は、可愛い綺麗って愛でられて育ち、自尊心が天より高かった。
家柄もいいから、アルファからの結婚申し込みもわんさか来て選び放題。
人生ちょろいと余裕ぶっこいてたのに、恋に落ちた相手はまさかのベータだった。
初めて会ったのは高校の校舎裏で、花壇に花を植えている地味な姿だった。
地味男には興味ないけど、花は綺麗だから好きだ。戯れに話しかけた。
「なんの花を植えてるの?」
「ああ、これはクレチマスです」
自分の顔を見てもやたら見惚れたりしてこないし、花の知識が豊富で話していて楽しい。
気がつくと足しげく地味男の元に通っていた。
見合い相手から、聞き飽きた言葉で容姿を褒め称えられるより、彼の淡々としているのに花への愛情を感じさせる言葉の方が、よほど好きだ。
冬の雨の日、まさか今日はいないだろうと思ったのに、彼は花壇の前でしゃがみ込んでいた。
「傘も差さずに何してるのさ、風邪引くよ?」
「忘れてきたんだ。それよりも見てよ、そろそろ芽が出そうだ」
その時の彼の横顔が、造形ではなく笑顔の優しさが、とても美しくて。
本当に綺麗なものは心に宿るんだと、ストンと腑に落ちた。
次の日から、彼の落ち着いた声や勤勉な手に、なぜか心が騒ぐようになって。
それなのに、彼は自分に見向きもしない。
「ねえ、花じゃなくて僕の方が綺麗じゃない?」
「……あまり人の美醜に興味はないんだ」
彼は美少年の顔を無感動に眺めた後、若芽を慈しむように見る。
(その花の方が、僕より大事だって言うのか)
悔しくなったオメガは父に頼んで、園芸部の彼を婚約者にしたいと告げた。
子どもに甘い父だったが、流石にベータとの婚約は認められないと首を振る。
ぶすくれながら花壇にやってくると、彼が満面の笑みで話しかけてきた。
「見てくれ、花が咲いたんだ」
こんなもの、と思いながら見た花は悔しいけれど綺麗で。それを見つめる地味顔の彼も美しくて。
気がつくと頬が自然と綻んでいた。
美少年の顔を見て、初めて気づいたみたいに彼が言う。
「君って、すごく綺麗な人だったんだね」
普段言われ慣れている言葉なのに、彼に言われるとこんなにも嬉しい。
ああ、どうしようもなく恋をしている。
真っ赤になった顔を不思議そうに見つめた地味くんは、美少年に尋ねる。
「そういえば君、名前は?」
前途多難すぎる恋の、始まりのお話。
この後ツンデレと化した美少年に、距離をジリジリ詰められながら、気がついたら外堀を埋められてる地味くん。
珍しい花の種とか融通してくれるし、花の話を興味深く聞いてくれるから、まあいいかと流される。
美少年の粘り勝ちでつきあいはじめたと知った彼のパパから、ベータなど認めん! と引き離された後、ぽっかり胸に穴が空いた気分になる地味くん。
きっとその時初めて、自分も美少年を愛していたことに気づくんだろうな。
家柄もいいから、アルファからの結婚申し込みもわんさか来て選び放題。
人生ちょろいと余裕ぶっこいてたのに、恋に落ちた相手はまさかのベータだった。
初めて会ったのは高校の校舎裏で、花壇に花を植えている地味な姿だった。
地味男には興味ないけど、花は綺麗だから好きだ。戯れに話しかけた。
「なんの花を植えてるの?」
「ああ、これはクレチマスです」
自分の顔を見てもやたら見惚れたりしてこないし、花の知識が豊富で話していて楽しい。
気がつくと足しげく地味男の元に通っていた。
見合い相手から、聞き飽きた言葉で容姿を褒め称えられるより、彼の淡々としているのに花への愛情を感じさせる言葉の方が、よほど好きだ。
冬の雨の日、まさか今日はいないだろうと思ったのに、彼は花壇の前でしゃがみ込んでいた。
「傘も差さずに何してるのさ、風邪引くよ?」
「忘れてきたんだ。それよりも見てよ、そろそろ芽が出そうだ」
その時の彼の横顔が、造形ではなく笑顔の優しさが、とても美しくて。
本当に綺麗なものは心に宿るんだと、ストンと腑に落ちた。
次の日から、彼の落ち着いた声や勤勉な手に、なぜか心が騒ぐようになって。
それなのに、彼は自分に見向きもしない。
「ねえ、花じゃなくて僕の方が綺麗じゃない?」
「……あまり人の美醜に興味はないんだ」
彼は美少年の顔を無感動に眺めた後、若芽を慈しむように見る。
(その花の方が、僕より大事だって言うのか)
悔しくなったオメガは父に頼んで、園芸部の彼を婚約者にしたいと告げた。
子どもに甘い父だったが、流石にベータとの婚約は認められないと首を振る。
ぶすくれながら花壇にやってくると、彼が満面の笑みで話しかけてきた。
「見てくれ、花が咲いたんだ」
こんなもの、と思いながら見た花は悔しいけれど綺麗で。それを見つめる地味顔の彼も美しくて。
気がつくと頬が自然と綻んでいた。
美少年の顔を見て、初めて気づいたみたいに彼が言う。
「君って、すごく綺麗な人だったんだね」
普段言われ慣れている言葉なのに、彼に言われるとこんなにも嬉しい。
ああ、どうしようもなく恋をしている。
真っ赤になった顔を不思議そうに見つめた地味くんは、美少年に尋ねる。
「そういえば君、名前は?」
前途多難すぎる恋の、始まりのお話。
この後ツンデレと化した美少年に、距離をジリジリ詰められながら、気がついたら外堀を埋められてる地味くん。
珍しい花の種とか融通してくれるし、花の話を興味深く聞いてくれるから、まあいいかと流される。
美少年の粘り勝ちでつきあいはじめたと知った彼のパパから、ベータなど認めん! と引き離された後、ぽっかり胸に穴が空いた気分になる地味くん。
きっとその時初めて、自分も美少年を愛していたことに気づくんだろうな。
0
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる