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40.虎獣人×鼠獣人
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鼠獣人であることを嫌っていて、強い肉食獣人に憧れている貧乏人。
彼にとっては贅沢品である端末の、小さな画面をのぞきこみ、推しの虎獣人を応援するのが日課だった。
ボクサーの彼はリング上では最強で、そんな彼を応援していると自分も強くなれた気がして、彼の試合を見るのが好きだった。
そんなある日、怪我だらけの虎獣人を見つけて。怖くてリアルな虎獣人になんて近づけないが、怪我をしているのに放っておくわけにもいかない。
通報しようとすると止められてしまい、仕方なく家に匿うことにした。
血を洗い流すと、推し本人だった。もう怖がっていることも忘れて、親身になって怪我の手当てをしてあげる。
数日手当てしてたらしっかり目が覚めた。眼光が鋭くてかっこいいけど、画面越しじゃないとやっぱり怖いってなる。
「……お前が助けてくれたのか?」
「そ、そうです……」
ちょっと話すだけでフラフラしちゃう虎獣人を、鼠獣人は恐れながらもお世話を続ける。
もふもふな毛並みを「ほう……」と感心しながら触っていたら実は起きてて「心地いいな、もっとしてくれ」と言われ、その日からマッサージも加わる。
今まで一人だった鼠獣人は家に人がいるのが嬉しくて、怪我が治っても出ていってほしくないと願うようになる。
そんな中、荷運びの仕事を些細なミスで首になってしまった。
しょんぼり帰ってきたら、虎獣人が心配してくれたので訳を話す。
その日暮らしだったので、家賃も払えなくなるしどうしようと泣いてしまう。
「そうか。なら怪我も癒えたことだし、ちょうど恩返ししたいと思っていたところだ。私の家に来なさい」
虎獣人には華々しいボクサーとしての活躍により、金が腐るほどある。
「一般人の喧嘩に巻き込まれて負傷し行方不明、なんて世間では騒がれているな。面倒だからこのまま引退してしまおう」
「え、いいんですか?」
「ああ。試合よりも他に、やりたいことができたんだ」
「なら邪魔にならないうちにお暇した方が」
「いいから君はここにいなさい。今晩はシェフに何をオーダーしようか、君の大好物のチーズ料理がいいか?」
なにくれとなく面倒を見てくれて、悪いなあと思いつつ、お礼はマッサージでいいと言う彼の言葉に甘えて過ごす。
マッサージ中にグルグルと喉を鳴らすのがネコみたいで、その時ばかりは可愛いなあって思う。
でかい図体で甘えてくるのが、必要とされてる感じがして好きだなあって思う。
「好きだなあ……」
マッサージの時間がずっと続けばいいのに、という意味で告げると、ガバッと腹筋で起き上がった虎獣人がクワっと目を剥く。
「本当か⁉︎」
「ひっ⁉︎ ごめんなさい調子に乗りました!」
「好きと言っただろう」
「あ、はいそうですね? マッサージの時間がすごく好きなんです。もふもふが幸せですし」
「……そうか」
またゴロリと横になり、しょぼんと垂れた耳を不思議に思いながらも、ブラッシングを続ける。
まさか虎獣人が自分を好いているなんて、自分のことが嫌いな鼠獣人はつゆ程も思わない。
機嫌を損ねたわけじゃなくてよかったぁと、胸を撫で下ろしてる。
はたから見たらすでに夫婦のようだけど、清い関係のヘタレ攻めと、無自覚ビビり受けの話。
彼にとっては贅沢品である端末の、小さな画面をのぞきこみ、推しの虎獣人を応援するのが日課だった。
ボクサーの彼はリング上では最強で、そんな彼を応援していると自分も強くなれた気がして、彼の試合を見るのが好きだった。
そんなある日、怪我だらけの虎獣人を見つけて。怖くてリアルな虎獣人になんて近づけないが、怪我をしているのに放っておくわけにもいかない。
通報しようとすると止められてしまい、仕方なく家に匿うことにした。
血を洗い流すと、推し本人だった。もう怖がっていることも忘れて、親身になって怪我の手当てをしてあげる。
数日手当てしてたらしっかり目が覚めた。眼光が鋭くてかっこいいけど、画面越しじゃないとやっぱり怖いってなる。
「……お前が助けてくれたのか?」
「そ、そうです……」
ちょっと話すだけでフラフラしちゃう虎獣人を、鼠獣人は恐れながらもお世話を続ける。
もふもふな毛並みを「ほう……」と感心しながら触っていたら実は起きてて「心地いいな、もっとしてくれ」と言われ、その日からマッサージも加わる。
今まで一人だった鼠獣人は家に人がいるのが嬉しくて、怪我が治っても出ていってほしくないと願うようになる。
そんな中、荷運びの仕事を些細なミスで首になってしまった。
しょんぼり帰ってきたら、虎獣人が心配してくれたので訳を話す。
その日暮らしだったので、家賃も払えなくなるしどうしようと泣いてしまう。
「そうか。なら怪我も癒えたことだし、ちょうど恩返ししたいと思っていたところだ。私の家に来なさい」
虎獣人には華々しいボクサーとしての活躍により、金が腐るほどある。
「一般人の喧嘩に巻き込まれて負傷し行方不明、なんて世間では騒がれているな。面倒だからこのまま引退してしまおう」
「え、いいんですか?」
「ああ。試合よりも他に、やりたいことができたんだ」
「なら邪魔にならないうちにお暇した方が」
「いいから君はここにいなさい。今晩はシェフに何をオーダーしようか、君の大好物のチーズ料理がいいか?」
なにくれとなく面倒を見てくれて、悪いなあと思いつつ、お礼はマッサージでいいと言う彼の言葉に甘えて過ごす。
マッサージ中にグルグルと喉を鳴らすのがネコみたいで、その時ばかりは可愛いなあって思う。
でかい図体で甘えてくるのが、必要とされてる感じがして好きだなあって思う。
「好きだなあ……」
マッサージの時間がずっと続けばいいのに、という意味で告げると、ガバッと腹筋で起き上がった虎獣人がクワっと目を剥く。
「本当か⁉︎」
「ひっ⁉︎ ごめんなさい調子に乗りました!」
「好きと言っただろう」
「あ、はいそうですね? マッサージの時間がすごく好きなんです。もふもふが幸せですし」
「……そうか」
またゴロリと横になり、しょぼんと垂れた耳を不思議に思いながらも、ブラッシングを続ける。
まさか虎獣人が自分を好いているなんて、自分のことが嫌いな鼠獣人はつゆ程も思わない。
機嫌を損ねたわけじゃなくてよかったぁと、胸を撫で下ろしてる。
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