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34.ドラゴンと生贄の話
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ドラゴンといえば番。ベタだけど生贄にされた人間を、嫁にしちゃう話が好き。
可哀想な境遇の孤児とかで、村で下働きをして暮らしていたら、近くの山に竜が住み着いてしまう。
畏れをなした村人達に、生贄として差し出され死を覚悟して山に行ったら、黒く大きなドラゴンがいて。
「子どもが何の用だ」
重低音で響く声にめっちゃビビりつつも、自分は村のために食べられる運命だからって、勇気を出して言うのね。
「僕を、食べてください」
「食べる? 骨と皮しかなさそうだ。まずは肉をつけろ」
そんで竜に肉とか果物とかもらって、健康的に過ごすのね。色艶がよくなったところで、もう一度言う。
「僕を食べてくれませんか」
「そこまで言うなら食べてやろう」
これで村の役に立てるとホッとしたのも束の間、噛まれたのは頸だけで、食べられると言っても性的に食べられちゃう。
人に擬態した竜を、初めての感覚に戸惑いながらも受け入れる。優しく触れられてキュンとときめく。
朝、ベッドの中でまどろみながら聞いてみた。
「なぜ僕を番にしたのですか?」
「情が移った。村の者を守りたいと願う心根の純粋さが、憐れで愛おしい。どうか永く共に生きて、私の隣でさえずっておくれ」
実際は村人にこき使われて邪険にされていたのに、それでも守りたいと願う子どもの純真さに惹かれたという竜。
(僕は純粋じゃないのにな。ただ、何かの役に立って死ねるのであれば、僕の生は無駄ではなかったと、そう思いたかっただけなんだ。ただのエゴなんだ)
けれど子どもは決して竜に気持ちを悟らせることなく、無垢なフリをして笑う。
「嬉しいです、どうか末長く可愛がってください」
それからは竜の番という役目を全うし、純粋な子ども慈しみたいという竜の願いを叶えるべく、役目を全うした。
きっと死ぬ間際になって、いい人生だったなあ、今になってみれば何もかもが愛おしいと感じる。
いつしか竜に望まれて暮らすことが役目ではなく、愛になっていたことに気づけばいい。
可哀想な境遇の孤児とかで、村で下働きをして暮らしていたら、近くの山に竜が住み着いてしまう。
畏れをなした村人達に、生贄として差し出され死を覚悟して山に行ったら、黒く大きなドラゴンがいて。
「子どもが何の用だ」
重低音で響く声にめっちゃビビりつつも、自分は村のために食べられる運命だからって、勇気を出して言うのね。
「僕を、食べてください」
「食べる? 骨と皮しかなさそうだ。まずは肉をつけろ」
そんで竜に肉とか果物とかもらって、健康的に過ごすのね。色艶がよくなったところで、もう一度言う。
「僕を食べてくれませんか」
「そこまで言うなら食べてやろう」
これで村の役に立てるとホッとしたのも束の間、噛まれたのは頸だけで、食べられると言っても性的に食べられちゃう。
人に擬態した竜を、初めての感覚に戸惑いながらも受け入れる。優しく触れられてキュンとときめく。
朝、ベッドの中でまどろみながら聞いてみた。
「なぜ僕を番にしたのですか?」
「情が移った。村の者を守りたいと願う心根の純粋さが、憐れで愛おしい。どうか永く共に生きて、私の隣でさえずっておくれ」
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きっと死ぬ間際になって、いい人生だったなあ、今になってみれば何もかもが愛おしいと感じる。
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