32 / 126
32.乙女ゲームの世界に生まれ変わった可哀想な従者の話
しおりを挟む
気がついたら生まれ変わっていて、乙女ゲームの世界の中にいた。
どうやら自分はモブっぽいが、うちのお嬢様はめちゃくちゃ煌びやか。そして顔も性格もキツイ。
これはあれだ、成長したら悪役令嬢になる……!
残念ながらモブもお嬢様の親戚筋のようだ。このままでは巻き込まれて処刑されてしまう。
勇気を出して、誰もなりたがらないお嬢様の従者に立候補した。
当然のようにいびられて、こんちくしょうと思いながらも、お嬢様に真っ当な道を説き続ける。
「いいですかお嬢様、酷い行いをすると必ず報いが返ってくるんですからね!」
「お前はいつも口ばっかりね。私を止められる人なんて、誰もいないわ!」
ある日お嬢様の見合い相手の屋敷へ出掛けたが、嫌がらせで置き去りにされてしまう。
しょうがない、自分の足で帰るかと待ちぼうけていた部屋から出ると、お嬢様の婚約者の弟と出くわす。
「あれ、君は兄の婚約者の従者じゃないか? なぜこんなところに」
モブは閃いた。お嬢様の性格の悪さをこの人にバラして、今のうちに婚約を破棄させれば、一族ごと破滅させられることはなくなるのでは?
いかにお嬢様の性格が悪いか熱弁したが、自分より背の低い弟くんには首を傾げられる。
「でもそういう跳ねっ返りで元気なところが屈服させたくなるからいいって、お兄様は言っていたよ?」
なんと、あの性格の悪さを現時点では気に入っていたなんて! 衝撃を受けて固まっていると、弟は企むように笑う。
「君、面白いね。そんなにお嬢様が嫌なら僕の従者にならない?」
「え、私には大切な使命があるので結構です」
「なってくれないなら、君の言っていたことをお嬢様とその親にバラすよ?」
「ぴぇ!?」
食わせ者の兄の弟もイイ性格だった。読み間違えた従者はそのまま弟の従者になる。
弱味を握られたままでは言いなりになるしかなくて、昼も夜もオモチャにされてしまう。
「君ってほんとにいい反応するよねえ、僕の理想だ」
「ひ、やめて、もう♡ おかしくなるっ!」
「なってよ、僕のことだけ考えてて!」
「やぁっ!♡ 」
体は言いなりにできても、心はなかなか屈服しなくて。そんな従者を弟は本気で愛するようになり、従者の方もだんだん態度に愛おしさが滲み出す弟に、絆されていく物語。
余談だけど、お嬢様はモブの影響で少しは人の気持ちを考えられるようになり、そのまま兄の婚約者の座に収まり続ける。
いざ婚姻し屋敷に移り住むと、監禁同然の扱いを受けながらも、めちゃくちゃ弟に可愛がられている従者と再会する。
「貴方、もしかして私が置き去りにしてから、ずっと屋敷にいたの!?」
「うえぇんお嬢様~! 助けてください!」
「駄目だよ、君は僕のお嫁さんなんだから。泣き真似をしたって許してあげないよ? 君だって僕に虐められるの嫌いじゃないって、わかってるんだから」
「や、やだ、こんなところで♡ 」
「あら、相思相愛なのね」
「違っ……くは……ない、です」
「そうだよね、違わないよね」
「……はい」
結局、お嬢様と従者はお互いによき相談相手となりましたとさ。めでたしめでたし。
どうやら自分はモブっぽいが、うちのお嬢様はめちゃくちゃ煌びやか。そして顔も性格もキツイ。
これはあれだ、成長したら悪役令嬢になる……!
残念ながらモブもお嬢様の親戚筋のようだ。このままでは巻き込まれて処刑されてしまう。
勇気を出して、誰もなりたがらないお嬢様の従者に立候補した。
当然のようにいびられて、こんちくしょうと思いながらも、お嬢様に真っ当な道を説き続ける。
「いいですかお嬢様、酷い行いをすると必ず報いが返ってくるんですからね!」
「お前はいつも口ばっかりね。私を止められる人なんて、誰もいないわ!」
ある日お嬢様の見合い相手の屋敷へ出掛けたが、嫌がらせで置き去りにされてしまう。
しょうがない、自分の足で帰るかと待ちぼうけていた部屋から出ると、お嬢様の婚約者の弟と出くわす。
「あれ、君は兄の婚約者の従者じゃないか? なぜこんなところに」
モブは閃いた。お嬢様の性格の悪さをこの人にバラして、今のうちに婚約を破棄させれば、一族ごと破滅させられることはなくなるのでは?
いかにお嬢様の性格が悪いか熱弁したが、自分より背の低い弟くんには首を傾げられる。
「でもそういう跳ねっ返りで元気なところが屈服させたくなるからいいって、お兄様は言っていたよ?」
なんと、あの性格の悪さを現時点では気に入っていたなんて! 衝撃を受けて固まっていると、弟は企むように笑う。
「君、面白いね。そんなにお嬢様が嫌なら僕の従者にならない?」
「え、私には大切な使命があるので結構です」
「なってくれないなら、君の言っていたことをお嬢様とその親にバラすよ?」
「ぴぇ!?」
食わせ者の兄の弟もイイ性格だった。読み間違えた従者はそのまま弟の従者になる。
弱味を握られたままでは言いなりになるしかなくて、昼も夜もオモチャにされてしまう。
「君ってほんとにいい反応するよねえ、僕の理想だ」
「ひ、やめて、もう♡ おかしくなるっ!」
「なってよ、僕のことだけ考えてて!」
「やぁっ!♡ 」
体は言いなりにできても、心はなかなか屈服しなくて。そんな従者を弟は本気で愛するようになり、従者の方もだんだん態度に愛おしさが滲み出す弟に、絆されていく物語。
余談だけど、お嬢様はモブの影響で少しは人の気持ちを考えられるようになり、そのまま兄の婚約者の座に収まり続ける。
いざ婚姻し屋敷に移り住むと、監禁同然の扱いを受けながらも、めちゃくちゃ弟に可愛がられている従者と再会する。
「貴方、もしかして私が置き去りにしてから、ずっと屋敷にいたの!?」
「うえぇんお嬢様~! 助けてください!」
「駄目だよ、君は僕のお嫁さんなんだから。泣き真似をしたって許してあげないよ? 君だって僕に虐められるの嫌いじゃないって、わかってるんだから」
「や、やだ、こんなところで♡ 」
「あら、相思相愛なのね」
「違っ……くは……ない、です」
「そうだよね、違わないよね」
「……はい」
結局、お嬢様と従者はお互いによき相談相手となりましたとさ。めでたしめでたし。
40
お気に入りに追加
240
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
黄色い水仙を君に贈る
えんがわ
BL
──────────
「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」
「ああ、そうだな」
「っ……ばいばい……」
俺は……ただっ……
「うわああああああああ!」
君に愛して欲しかっただけなのに……
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる