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30.花で恋心を伝える話

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駅を通りすがる度に、立ち姿がかっこいいなあと気になっていた花屋の店員さんに、ついに話しかけることに決めたサラリーマン。

「花……花を一本ください」
「はい! どの花にしましょうか」
「では、ポピーを」

実はこのサラリーマン、花屋への想いを募らせすぎて、話が盛り上がるのではないかと花言葉を勉強していた。

ポピーの花言葉は「恋の予感」

店員さんは意味を知っているのか、ちょっと目を見張って微笑む。

「はいどうぞ。素敵な一日になりますように!」
「ありがとうございます」

あわよくば世間話くらいしたいと思っていたのに、彼の笑顔だけで満足して帰ってきてしまう。

その後も花を買いに、仕事帰りに店に立ち寄るようになる。

マーガレット、リナリア、ストックと恋愛に関する花言葉のある花を買っていくサラリーマンに、花屋はいつも優しげに、どこか儚げな様子で笑いかけてくれる。

実際に彼を前にすると、笑顔を目にするだけで満足して帰ってきてしまうのを、繰り返していた。

サラリーマンは店員のことを好きな気持ちが募りすぎて、ついに告白しようと決めた。

ミニバラの花束を作ってもらい、彼の手から受け取った後捧げ持って一言。

「この花を貴方に贈ってもいいでしょうか!?」

ミニバラの花言葉は「果てしなき愛」
花屋の店員は目を見張って「僕に?」と意外そうな声をあげる。

「てっきり恋人への贈り物だと思っていたのですが」
「違います! 全て貴方に会いたいがために、気持ちを伝えたくて買っていました」

一泊置いて今まで買った花の意味を理解した店員さん、ぼぼぼっと頬に熱を昇らせる。

「真実の愛」「この恋に気づいて」「密やかな愛」……熱烈な告白を受けて、花屋は顔を覆う。

「ずっと素敵な人だなと……貴方に花を贈られる女性は幸せだろうなと、そう思っていました。僕でいいなら、つきあってください」
「はい、ぜひ!」

ミニバラの花束は、店員の自室で誇らしげに咲き誇っている。
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