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16.俺が石油王になったら

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何度つきあってほしいと告白しても、つれない返事をする意中の男子。

どう言えば振り向いてくれるんだろう……とにかく気を引きたくて、突拍子もないことを口にしてみた。

「俺が石油王になったら、交際を考えてくれますか⁉︎」
「えっ……」

初めて彼が反応を見せた。しかも興味があるような雰囲気だ。

石油王になれば脈アリなのでは⁉︎と考えた俺は、サウジアラビアに行く決意を固めた。

「待っていてくれ。石油王に、俺はなる! そしてお前を迎えにくる!」
「はあ?」

道のりは果てしなかった。
まずはバイトで渡航費用を稼ぎ、アラビア語を習うところから始めた。

一番難航したのは両親の説得だ。
学校を辞めてサウジアラビアに行きたいと言ったら、教師を巻き込んでの三者面談まで行われた。

「どうしても石油王になりたいのかね」
「石油王なんて無理よ、考え直しなさい」
「嫌だ! 俺は絶対に油田を掘り当ててみせる!」

残念ながら理解してもらえなかったが、俺は意見を曲げなかった。

三者面談を終えて肩を怒らせて歩く俺の後ろ姿を、意中の男子に見つめられていたことには気づけなかった。

とにかく金を貯めなければ現地に向かえない。

夜中の工事バイトをして授業中寝てしまうようになった俺を見て、意中の彼は尋ねた。

「なんでそこまでがんばるんだよ」
「だって、お前のことが好きだから!」

週七で夜間バイトをして受験勉強もこなし、彼に会うために学校にも通い親と会えば言い争いをしていた俺は、ついにテスト前に倒れてしまった。

「う……俺は必ず、サウジアラビアに行くんだ……!」

寝込んでいると意中の彼が見舞いにやってくる。

テスト範囲をまとめたノートを貸してくれて、優しい好き結婚してってときめいていると、彼がぶっきらぼうに言う。

「なんでそんなにサウジアラビアにこだわるんだよ」
「だって、石油王になりたいから……」
「石油の埋蔵量世界一はベネズエラだろ」
「なっ! 俺はスペイン語を勉強するべきだったのか!」
「じゃなくて」

顎クイされて、低い声で一言。

「アンタが知るべきなのは、俺のことだろ?」
「やばい嬉しすぎて死ぬ顎クイはきゅんがすぎる」

聞けば意中の彼は親が借金で首が回らなくなったため、現在恋愛どころではないとのこと。

「そうだったのか……じゃあ俺が稼いだ金はお前にやるよ!」
「そんなことされても嬉しくない。アンタのがんばりを見てて思ったんだ。俺も自分の不幸を嘆いていないで、夜間バイトでもなんでもすればよかったんだって」

彼は挑発するようにニヤリと微笑んだ。

「だからアンタ、俺と一緒に起業しないか? 石油王にはなれないかもしれないが、一攫千金を狙っていこうぜ」
「喜んでー!」

こうして二人は会社を設立し、紆余曲折ありながらも最終的には億万長者となって公私共に支え合えるパートナーとなり、幸せに暮らしましたとさ。おしまい。


*こちらの話は短編化して15000字の作品に仕上げてます。BLoveのコンテストにて新人賞をいただきました。

読んでみるかーという方は、アルファポリスにも掲載していますので、
過去作「石油王になったら、君は振り向いてくれるのかな」をチェックしてみてください。
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