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14.ベータ従者とオメガ公爵令息のお話
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美しく高慢なΩ公爵令息は、婚約者のα王子に夢中だ。王子の前では可愛らしく甘々な公爵令息。
二人は運命の番ではないけれど、公爵令息は王子にそれなりに可愛がられている。
周りへの高慢な態度を時々王子にたしなめられながらも、仲良くやってきた。
たまに不安になることはあるけど、その度にβの従者が「貴方はそのままで最高に素敵です」とべた褒めしてくれるので、鼻高々で威張り散らしていた。
ところがある日、王子は運命の番と出会った。運命の番は平民なのに、王子は彼を選んだ。
公爵令息は悔しくてしょうがなくて、平民Ωを虐める。
王子が大好きで、ずっと一緒にいて絆を育んできて、将来は当然のように番になるものと信じていた。
ポッと出の平民に王子を取られるなんて許せなかった。
平民Ωを空き部屋に閉じこめたり、バケツの水をかけたり、噂話を流したりしたけれど、二人の愛は盛り上がるばかり。
「あいつさえいなくなれば、王子は僕のところに戻ってきてくれるはず」
とうとう毒を盛ろうとしたところで、王子に見つかり断罪される。
「今回ばかりは許せない……婚約を解消する。昔馴染みのよしみで、命だけは助けよう」
二度と王都に戻ってこないよう言い渡され、最北領地の小さな屋敷に幽閉される。
追放された公爵令息は、昔から仕えてくれているβの青年従者一人だけを連れて、北の屋敷に移り住んだ。
綺麗な服で着飾っても、将来の王族として勉学に勤しんでも、がんばったねと笑ってほしい人には二度と会えない。
どうして……と毎晩泣く公爵令息を、従者は心を尽くして慰める。
「私は絶対に貴方を裏切りません」
「お前では意味がないんだ!」
荒れた公爵令息を従者は甲斐甲斐しくお世話した。
けれどどれだけ尽くされても気持ちは晴れない。
「お前の顔など見たくない、屋敷から出ていけ!」
その晩お腹が空いた公爵令息は、八つ当たりの言葉を間に受けて屋敷の玄関の外に出ていた従者を見つける。
真冬で体が冷え切っていた従者を、慌てて屋敷の中に連れ帰った。
お湯を持ってくるよう伝えようとして、はたと気づいた。
それをいつもしてくれているのは、今動けない従者だ。
自分一人ではお湯も沸かせない、ご飯も作れないし暖炉の火も起こせない。
青くなった公爵令息は、熱が出ている従者をベッドに寝かせて布団をこんもりと掛けた。
「死ぬな従者! 俺はお前がいないと生きていけない」
「なんて熱烈なお言葉、夢でも見てるのかな。今日死んでも悔いはないです」
「やめろ! 俺を残していくなー!」
一晩経つと従者の熱は下がっていた。
令息は心底ホッとして、従者を大切に扱うようになる。
「お前の仕事を手伝ってやる」
「何もせずとも、存在してくれるだけでよいのですよ」
「お前が過労で死んだら俺も野垂れ死ぬだろうが! いいから手伝わせろ!」
従者の仕事を無理矢理手伝ううちに、彼が一人でとんでもない量の作業をこなしていたと知る。
実はすごいやつだったんだなと尊敬の気持ちが芽生える。
そんな中、ヒートを迎える公爵令息。
心の支えだった王子はもう側にいない。
一人でこの苦痛に耐えなければいけない……抑制剤を飲んで部屋でじっとしていると、従者がやってくる。
「辛そうですね、何かお手伝いできませんか」
自分を案じてくれるのはもう、この男だけだ。
弱っていた公爵令息は、従者の手を借りた。王子の名を呼びながら、何度も果てる。
気をやりすぎて意識が落ちそうになる間際、従者は呟いた。
「どれだけ願っても、貴方にはもう私しかいないのです。こんな風に貴方に触れられるのは私だけ……早く心ごと、私の手の中に堕ちてきてくださいね」
運命の番でなかったために愛を無くした公爵令息と、彼の全てを手に入れて依存させたい従者の話。
二人は運命の番ではないけれど、公爵令息は王子にそれなりに可愛がられている。
周りへの高慢な態度を時々王子にたしなめられながらも、仲良くやってきた。
たまに不安になることはあるけど、その度にβの従者が「貴方はそのままで最高に素敵です」とべた褒めしてくれるので、鼻高々で威張り散らしていた。
ところがある日、王子は運命の番と出会った。運命の番は平民なのに、王子は彼を選んだ。
公爵令息は悔しくてしょうがなくて、平民Ωを虐める。
王子が大好きで、ずっと一緒にいて絆を育んできて、将来は当然のように番になるものと信じていた。
ポッと出の平民に王子を取られるなんて許せなかった。
平民Ωを空き部屋に閉じこめたり、バケツの水をかけたり、噂話を流したりしたけれど、二人の愛は盛り上がるばかり。
「あいつさえいなくなれば、王子は僕のところに戻ってきてくれるはず」
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「今回ばかりは許せない……婚約を解消する。昔馴染みのよしみで、命だけは助けよう」
二度と王都に戻ってこないよう言い渡され、最北領地の小さな屋敷に幽閉される。
追放された公爵令息は、昔から仕えてくれているβの青年従者一人だけを連れて、北の屋敷に移り住んだ。
綺麗な服で着飾っても、将来の王族として勉学に勤しんでも、がんばったねと笑ってほしい人には二度と会えない。
どうして……と毎晩泣く公爵令息を、従者は心を尽くして慰める。
「私は絶対に貴方を裏切りません」
「お前では意味がないんだ!」
荒れた公爵令息を従者は甲斐甲斐しくお世話した。
けれどどれだけ尽くされても気持ちは晴れない。
「お前の顔など見たくない、屋敷から出ていけ!」
その晩お腹が空いた公爵令息は、八つ当たりの言葉を間に受けて屋敷の玄関の外に出ていた従者を見つける。
真冬で体が冷え切っていた従者を、慌てて屋敷の中に連れ帰った。
お湯を持ってくるよう伝えようとして、はたと気づいた。
それをいつもしてくれているのは、今動けない従者だ。
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「死ぬな従者! 俺はお前がいないと生きていけない」
「なんて熱烈なお言葉、夢でも見てるのかな。今日死んでも悔いはないです」
「やめろ! 俺を残していくなー!」
一晩経つと従者の熱は下がっていた。
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「お前の仕事を手伝ってやる」
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「お前が過労で死んだら俺も野垂れ死ぬだろうが! いいから手伝わせろ!」
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気をやりすぎて意識が落ちそうになる間際、従者は呟いた。
「どれだけ願っても、貴方にはもう私しかいないのです。こんな風に貴方に触れられるのは私だけ……早く心ごと、私の手の中に堕ちてきてくださいね」
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