王子の俺が前世に目覚めたら、義兄が外堀をやべえ詰めてきていると気づいたが逃げられない

兎騎かなで

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エピローグ

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 次の日、目が覚めたらもう昼前だった。太陽が眩しい……

 しっかり服を着こんだガレルが、ベッドで眠そうに目をこする俺の元へ歩み寄ってきた。

「起きたか、おはようユール」
「ガレ、ル……ごほっ」

 喉がガラガラの俺のために、ガレルが水差しからコップに水を注いでくれた。ありがたく飲み干す。

 なんなの、こいつ俺が起きるまで起こさずに待っててくれたのか。
 毎日忙しくしてるのに、俺の体を心配して起きるの待っててくれたってことか?
 ちょっと照れるじゃないか。

「今日、仕事はいいのかよ」
「半日だけ休みがとれたが、この後は仕事がある。ユールの寝顔を見つめているだけで、気がついたら時間が過ぎ去ってしまったな」

 もったいない時間の使い方をしたのに、さも嬉しそうに俺の頬に口づけてくるガレル。
 そっか、そんなに俺のことが好きか……嬉しい、かも。うん、嬉しい。

 両思いだな……と思うと、じわじわと幸福感がこみあげてくる。
 うん、やっぱ俺、ガレルのこと好きだわ。

「名残惜しいがそろそろ出る時間だ。ユール、見送りのキスをくれないか」

 なんだそれ。新婚さんかよ! と思ったが、まんざらでもなかったので気前よく口と口をくっつけてやった。

 ちゅ、と軽いキスで終わらせようと思ったのに、ガレルの舌が口内に侵入してきた。

「んっ……ん、うんんー! ……んっ」

 朝から濃密な口づけを施されて、腰がじんと疼いてしまう。
 お前今から仕事だろ、やめろって!

「はあ……本当に名残惜しい。いっそ予定を変えるか?」
「いいから仕事行ってこい! 俺は……お前の帰りを待ってるからさ」

 恥ずかしさを押し殺して、俺はチラリとガレルの金の瞳を見上げた。

「別に逃げたりしないし。ずっと一緒にいるんだろ? 俺達は」
「! ああ、そうだな」

 ガレルは裸の俺を抱きしめて、愛の言葉を囁いた。

「ユール、お前のことを愛している」
「俺も……ガレルのこと、その、あ、愛してる……から。早く帰ってこいよな!」
「ああ」

 見惚れるほど綺麗な笑顔で笑ったガレルにキュンときて、夜がくるのが今から待ち遠しくなってしまった。





 ガレルが退出した後、入れ替わりにマシェリーが一声かけて部屋に入ってくる。

「おはようございますユール様。ガレル様とのご婚約、誠におめでとうございます」
「ああ……ありがとうマシェリー」
「本日はお休みの予定となっておりますが、何をなさいますか?」

 おお、そういえば念願の休みだ! どうしようか、何をしよう。

 ゆっくり慎重に立ち上がり、歩けることを確認して窓際に近づく。
 テラスの扉を開けるとふわっと風が部屋の中に吹きこんでくる。

 中庭の向こうに白い城壁があって、その向こう側にオレンジ色の屋根が連なっている。
 そしてその向こう側に広がる、白く透けるレースの結界が、天まで覆いつくすかのように広がっている。

 ……俺はここで生きていくんだな。町を見下ろすと、自然と口角がにんまり吊りあがる。
 あ、露店が出てるじゃん。あそこに行ってみたい。

「今日は町へ出かけるよ。マシェリー、用意を頼む」
「かしこまりました。軽食をお持ちしますので、その間に出かける手配を致します」

 俺が匡かユールかは置いといて、別にユールとして生きていくのも悪くない気がしてきた。

 俺は、はやる気持ちを抑えて、まずは用意されたブランチに舌鼓を打った。
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