王子の俺が前世に目覚めたら、義兄が外堀をやべえ詰めてきていると気づいたが逃げられない

兎騎かなで

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12話

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 あの後、湯浴みの最中も香油を掻きだすためとかなんとか言われて、尻穴を弄られた。
 後ろから覆い被さってこられて背中から首筋までキスで啄まれ、乳首もちんこも虐められてまたイカされて……気がついたら気絶していたらしい。

 明けて翌日。俺は薬の影響か、ガレルとのエッチがおれの体にとって負担が過ぎたのかはわからないが、朝起きたら腰が抜けていた。

「え、え? 立てない」
「大丈夫かユール!?」

 フツーにベッドから降りようとしたら体ごと落ちそうになり、一緒に寝ていたガレルにヒョイと引き寄せられ事なきを得た。

 心配したガレルには、今日はベッド上で安静にしているようにと告げられた。
 何度も俺を振り返りながら仕事に出かけたガレルを思い出すと、くすぐったいような嬉しいような気がして思わず笑みが溢れてしまう。

 そうして、俺は初めて結界編みの仕事を休んだ。まあ一日くらいなら綻びが出ても次の日修正きくしな。

 俺としてはそう気楽に構えていたんだが、結界管理の役人はすっ飛んできて、俺の具合を聞きにきた。
 俺の挙動不審な態度からガレルと仲良くしたと速攻でバレて、今後の対策を練らねば……と大慌てで帰っていった。

 あ、エッチのたびに寝込まれると困るとか、そういうこと?
 そういう理由で対策会議とか開かれるの、すっごい居た堪れないわ。

「はあ……」

 することがなくて本でも読んでみるものの、頭の中は昨日の出来事でいっぱいでなかなかページが進まない。

 一人悶々としていると、救いの見舞客が現れた。

「ユール! 寝込んだと聞いたぞ、具合はどうだ!?」
「ユール、大丈夫?」
「やあ、平気?」

 ザガリアスとツェリン、それにフォルテオまでやって来てくれた。

「ああ、心配かけたみたいだね。大丈夫、体調が悪いわけじゃないんだ。朝ふらついていたから、兄様にベッドで大人しくするように言われただけだよ」
「そうなの? 目眩かな、普段健康なユールがそんな風になるなんて、僕心配しちゃう」

 ツェリンが俺の顔を覗きこんでくる。
 お前は恋愛事に鼻が効きそうだからこれ以上見んな、お前にまで昨日致したことがバレたら恥ずかしいだろ!

 鉄壁の王子スマイルで防御していると、ザスが腕やら肩やらに触れてきた。

「どこにも怪我はなさそうだな、やはりガレル様に任せたのは正解だった!」
「ん? どういうことだザス」
「いや、お前が夜会に来る予定をガレル様から聞いていなかったからな。念のため確認に向かったら、ガレル様が会場にすっ飛んでいったんだ。なにか事件にでも巻き込まれたかと心配したぞ!」

 ああ、あそこでタイミングよくガレルが現れたのはお前のおかげだったわけだ。
 門番サボってたなんて思ってすまんかった。

「兄様が来てくれて助かったよ、ザスにはお礼をしなくては」
「いや、それには及ばない。お前になにもなければそれで十分だ!」

 白い歯を見せつけて笑いかけてくるザス。いやー、お前いいやつだな。筋肉バカだと思ってたわ、ほんっとごめん。
 これからは頼れる兄貴に脳内グレードアップさせておくから、どうか許してくれ。

「ところでユール、計画は順調かな?」
「ああ……悪いがフォルテオ、あの話はなかったことにしてくれ」

 苦笑して断りを入れると、ツェリンが横槍を挟んできた。

「ねえ、なんの話?」
「ユールが薬草を勉強したいって話だ。ツェリン、久しぶりにザスと会ったんじゃないか? 最近の騎士団でのプラサート様の様子を聞いてみたらどうだい?」
「わあ、聞きたい! 教えてザス!!」
「プラサートの話か? いいぞ!」

 プラサートの話題で盛り上がる二人に隠れるようにして、小声でフォルテオとの会話を続ける。

「なかったことってどこまでを指してるのかな?」
「えーと……過ぎた束縛とか自由がないのは嫌だけど、結婚はまあ、別に、い、嫌じゃないかな、とか……」

 照れながら口にした俺に、フォルテオはニンマリと笑った。

「へえ、そうなんだね」
「なにか文句でも?」
「とんでもない! よかったねユール、やっと自覚が芽生えたんだねえ」

 いやぁめでたい、と小さく拍手をするフォルテオ。なんか、その反応ムカつくんだが。

「君をもう少し自由にする件だけど、私の方でもこの機会を利用して動いているよ。君一人に結界維持の負担がかかる体制は、これ以上続けられないと上も気づいただろうし」
「どういう意味だ? 回りくどい言い方するなよ」
「つまり、毎日結界に魔力を注がなくてよくなり、君にも休みができるよってこと」
「じゃあ週休二日にしてくれ。あと夏休みと冬休みもほしい。旅行したいし」
「ん? どういう制度を考えてるのかな? また後日会う約束を取りつけるから、その時にでも話をしよう」

 週休二日はともかく、夏休みと冬休みは一般的ではないから伝わらなかったみたいだ。

 ユールはずっと城の中に閉じこもるのは嫌ではなかったけど、匡は旅行とか行きたい派だ。
 やっぱり旅行するからには、長期の休みがとれた方が絶対にいい。

 ガレルと旅行に行ったり、最終的にはガレルがいない時でも、行きたい時に町に出かけていけるくらいの自由はほしい。

「ああ、それと体を鍛えるよう薦めておいたけど、ちゃんとやれてるかい?」
「いちおう続けるつもりだけど、やれてるかっていうと微妙かな……」
「なんにせよ体力はつけておいた方がいいよ、ガレル様についていくのは大変だろう?」

 にっこり笑うフォルテオだったが、言葉にどうも含みを感じる。

「……それは今後旅行に出かけた時のためにとか、そういう意味で言ってるんだよな?」
「もちろんそうだけど? それともユールには違う意味に聞こえたか?」

 わざとらしい笑みに、夜のことを揶揄されてる気がしてならない。
 でもそのつもりじゃなかったら俺の恥ずかしい勘違いってことになるし、ぐぬぬ……

 ジトっとした目でフォルテオを見ていると、ポンと肩に手を置かれた。

「なにか悩んでいることやしたいことがあればまた言ってよ、いつでも相談に乗るからさ」

 好青年みたいなことを言ってニコニコ笑うフォルテオだったが、やはりどうしても胡散臭さは拭えない。

 やってることも言ってることも真っ当なのに、どうしてこんなに裏がありそうに見えるんだろうな。
 もはや才能かな、とユールは思った。





 その後ちょっと微熱が出て、寝込んで回復した頃。
 あれやこれやと婚約発表のための準備が詰めこまれたかと思えば、気がついたら成人してガレルの婚約者になっていた。

 展開はっや。まああれだけ外堀を埋められてたら、スムーズに行くしかないよな……上機嫌で挨拶回りをするガレルにガッチリ腕を組まれた俺は、若干遠い目をしていることだろう。

「どうした、我が婚約者殿。疲れたのなら一旦下がるか?」
「いえ、大丈夫です」

 ニコッとビジネススマイルを浮かべると、破壊力抜群のキラキラスマイルが頭上から注がれる。
 うっわ、正装してるからいつもより男前度上がってるな。

 さりげなく視線を逸らすと、ガレルの黒い夜会服に紫色の刺繍が散りばめられているのが目に飛びこんでくる。
 この紫……俺の瞳の色そのままだ。

 これはこれで恥ずかしいよなああぁ!
 もちろん俺のスノーホワイトな夜会服にも金の刺繍が入っているため、晴れて両思いになりましたと公言して歩いているようなものだ。

 恥ずかしくなって顔を逸らし続けていると、ガレルに顎をとられて顔色を観察された。

「熱があるのか? 体調に変わりはないか?」
「なんともありません! なにかあれば兄様に伝えますから」

 あれから過度な束縛をやめたガレルは、束縛はしないかわりにかなりの心配症となった。

 俺が友人を作ろうとしたり、外に出かけたがるのを止めはしないけれども、めちゃくちゃなにか言いたそうな顔をしている。
 ……声をかけたら絆されそうなので、俺は必死にそれをスルーしている。

 出かける時は一声声をかけるように言い含められ、城の外に出るならガレルの騎士がついてくるように勝手に手配されているらしい。
 まだ実際に一人で出かけたことはないんだけどさ。

 そして今後は俺のための護衛を選定するんだってさ。たぶんザスとか、ザスの親戚あたりが抜擢されるんじゃないかな。

 まあでも、それでも全然自由が増えた。
 長期の休みは結界維持の人数が揃うまでとれないけど、とりあえず週に一回は休めるようになるらしい。

 俺は一人で何年も結界を維持できる魔力があったが、他の人はそうでもないらしいので、これから体制を整えていくんだってさ。

 俺の魔力が人よりずば抜けて多くて、さらにユールがかなりの真面目ちゃんだったからここ十年くらい俺だけで結界の維持をしていたけど、本来は何人もの結界編み術者で結界を維持するものらしい。

 王家的には、俺一人に任せておけば国家予算も結構浮く上に、本人がやる気に満ちていたからやってもらってただけらしい。

 これからも一人で頑張れ! みたいにブラック企業的な対応されなくてよかったよ。
 まあ、そんなことになってたらガレルに止められただろうけどさ。

「熱でないのならよかった。この前は無理をさせたからな……」
「に、兄様……やめてください」

 ガレルの手を下ろさせて、恥ずかしさから逃れるためによそごとを考えている俺の横顔に、やつの視線が突き刺さってくるのを感じる。

 心配される度に顔を至近距離で覗きこんでくるため、キラキラしい男前にまだ慣れない俺はいちいち照れてしまう。直視できん。

「フッ……ユール、晴れて婚約者になったことだし、兄様ではなくガレルと呼んでくれてよいのだぞ? あの時のように」
「それは……そのうち、そうですね」

 俺が歯切れの悪い返事をしていると、ガレルが耳元で囁いた。

「今晩は、呼んでもらおうか」
「え?」

 それはどういう、と聞き返したかったが、新たにガレルに祝いの言葉を送る貴族が控えていたため内緒話はそこで終了した。
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