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終章 旅の終わりと新たな決意
これから ヘルムート編
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宿に戻って、食堂で夕食を食べた。隆臣さんやアルトさん、それにレオの話はするものの、この先のことについては誰もが触れずに食事を終える。
どうやら日本には帰れないみたいってこともサラッと話したのに、不自然なくらい何も聞かれない……きっと三人とも船で話したことを覚えていて、俺が告白の返事をどうするのか待ってくれているんだね。
緊張しているのか珍しく食が進まず、まだご飯は残っているけど木のさじを置いた。チラリと気になる彼を窺う。
ヘルは黙々とご飯を口にかきこんでいた。こんなに食べるのが早いのに、粗野に見えないのは不思議だなあ……ふと隣から視線を感じて振り向くと、クロノスと視線が交錯する。
「クロノス……この後話があるんだけど、時間もらっていいかな?」
クロノスは、慣れ親しんだ優しげな微笑を口元に乗せて頷いた。
「ええ、もちろん構いません」
「待てよ、スバル!」
クロノスが応えると間髪入れずにヘルが立ち上がって叫ぶ。メレがヘルの肩を掴んで、まあまあまあと宥めながら椅子に戻らせた。
「アンタにはこれから、アタシのヤケ酒につきあってもらうんだから。アンタだって飲みたい気分でしょ?」
「誰が……っ、離せ! 俺はテメーじゃなくてスバルに用があんだよ!!」
「あ、俺もクロノスと話が終わった後は、ヘルに話したいことがあったんだけど……!」
告白の返事をするからには、クロノスとずっと一緒にいられなくなるかもだし、主従契約を解いた方がよさそうだから。
だからその話をしてから、ずっと待たせていたヘルに返事をしたいと思ってるんだ。
「は? 俺に? 何の話だ」
ヘルは本当にわからないって顔をしていたが、クロノスはなにかを察した様子だった。
「……スバル、私への話は後で構いません。ヘルムートに伝えたいことがあるのでしょう? 私が望むのは、貴方が幸せでいることですから」
あ、クロノスにはわかっちゃったみたいだ。俺がこれからヘルに何を話すのか。
「えっと、ごめんねクロノス」
「いえ、私のことは本当に気にしないでください」
「じゃあ、お言葉に甘えて……ヘル、できれば二人っきりで聞いてほしいんだけど、ダメかな?」
そこでやっと何かを察したのか、ヘルはハッと表情を変えると勢いよく首を横に振った。
「ダメなわけあるかよ! 今すぐ部屋に戻ろうぜ!」
バッと俺の手を掴んで階段を登りはじめるヘルについていく。背後からメレの声が聞こえてきた。
「あーあ、フラれちゃったんじゃない? アタシ達。一杯つきあいなさいよ……って、アンタ酒飲めないじゃないの、使えないわねえ」
「貴方にどのように思われようと毛ほども痒くありませんが、ヤケ酒ですか、いいでしょう。つきあいますよ」
「アンタ自棄になってるわね!? ダメよ! 飲ませないから!」
「何故です? 自棄酒でしょう? 私も傷心……というのに、……不公平……」
バタンと扉が閉まり、階下の音は完全に聞こえなくなった。
急に静かになって緊張しながらも、クルリと振り向いたヘルの真剣な瞳と向きあう。
「なあ、話ってもしかして、告白の返事をくれるってことでいいのか? 俺で、いいってことか?」
「う、うん。そ……」
「ぃよっしゃ!!!」
最後まで伝える間もなく、痛いくらいに抱きしめられて、踵がちょっと浮いてしまう。
「ヤベェ、マジで嬉しい……スバル……!!」
それ以上言葉が出てこないようで、更に力を込めようとしてくるので慌てて胸板を押した。
「ちょっと待って! 痛いよヘル」
「あ、すまねえ!」
ヘルは俺の言葉を聞くなりパッと体を離してくれる。
普段は好き勝手して突っ走るのに、俺のことは気遣ってくれて一番に考えてくれるところ、やっぱり好きだなあって思った。
不器用だしツンデレだし、目のこともあって大変だっただろうに、それでも俺のためにってしてくれる行動を受け取っていたら、いつのまにか心の中で一番大きな存在になっていた。
首を絞められた時だって、俺のことじゃなくてヘルが傷ついていないかばかり気になってしまった。
こんなにも好きになってたんだって、自分でも愕然としたくらいだ。
もう日本に帰れないってわかって、迷いが吹っきれた。これからはヘルの側にいて、彼を支えていきたい。
想いを込めて抱きしめ返すと、また力をこめそうになって慌てて引っこめる気配を感じた。
思わずくす、と笑ってしまう。
俺の反応に勇気をもらったのか、ヘルは内心を吐露した。
「スバル、俺、ぜってーお前のこと大切にする」
「うん」
「前みたいに傷つけたりは、もう二度としない」
「うん、信じてるよ」
「おう……だから、抱いていいか?」
ドキ、と鼓動が跳ねる。いつかはそうなると思ってたけど、え、今日? 今?
「そ、そんな急に?」
「急じゃねえよ、俺はスバルのこと十分に待っただろ? ……マジで気が狂うくらい我慢して、夜暴れて酒飲んで誤魔化して、もう一秒だって待てねえよ」
俺の肩を掴んだヘルの海色の目と視線が交錯する。ゆらりゆらりと揺蕩う水が、複雑な模様を描いている。
「なあ、お願いだ……スバルに触れたくてたまんねえんだ」
そう言ったきり、首筋に顔を埋めて動かなくなったヘルの銀色の頭を、おずおずと撫でてみた。
普段はクールでかっこいいのに、時々ツンデレを発動したりこんな風に可愛くお願いごとをしてくるから、つい応えたくなってしまう。
今までは俺だって、応えるのを我慢してたんだよね。今日からは、我慢しなくていいんだ。
「あの……」
「なんだ?」
「痛くしないなら、その、いいよ……っうわあ!」
答えると同時に抱き抱えられて、ベッドの上に連れ去られた。
ぼすりと音を立ててのしかかられ、唇に熱いものが触れた。
「ん、んうぅ!?」
びっくりして半開きになった唇から、熱い舌が潜りこんでくる。
ちゅぱ、くちゅ、と恥ずかしい音がしたり、舌先から口蓋まで無遠慮に舐めまわされたりして、俺の頭はだんだん熱に浮かされていく。
気づいた時には全ての服を取り去られ、半裸のヘルが熱心に後腔を解していた。
刃物を手入れするためのオイルをたっぷりと塗され、ドロドロになった俺の後ろの穴は、すでにヘルを迎えいれる準備が整っている。
「あ、はあ、ふう……っ!」
「くっそ、エロ……、なあ、そろそろいいか?」
「ん、たぶん、んぅっ!」
はあはあと息を荒げながら、一度指を抜いて前をくつろげるヘルの姿を月の光で確認しながら、俺はたくましい体についた無数の傷をそっとなぞった。
途端にピクリと身をすくませて動かなくなるヘル。
「ね、ヘルも、全部脱いで、よ」
「スバル……」
バツが悪そうに目を背けるヘルの顔をこちらに向かせて、眼帯の紐も引っ張った。
「これも、とって」
「いや、これは……こんな汚ねえもん、できれば見せたくねえんだ」
俺の手を押さえるようにして目を隠すヘルに、俺はなおも言いつのる。
「汚くなんて、ない。俺は、傷だらけになって、がんばってきた、ヘルが好きだよ。それに……この目だって」
俺が眼帯を解こうとすると、大した抵抗もなくしゅるりとそれは外れた。
赤い瞳の中には、轟々と濁流のように荒れ狂う魔力の流れが見える。
「この目も、ヘルの一部なんだよ。ヘルと一緒に、今までがんばってきたんだよ」
力の入らない体を気合いで起こして、右の瞼の傷跡にキスをする。
目を見開いて俺を見つめるヘルに笑いかけると、ヘルの両目の海が波打って、じわりと水滴が滲みだした。
つう、と頬に流れた涙はぽたり、ぽた、と俺の腹を濡らす。
呆然とそれを見ていると、ヘルは突然顔を背けて瞳を腕で隠した。
「ばっ、お前……! なんでんなこと、今言うんだよ……!」
「え、え? ダメだった?」
「ダメじゃねえよ! ダメじゃねえけど、クソ……カッコわりい」
ぐし、と鼻を啜る音が聞こえてくる。
擦られて赤くなった鼻を見つめて、なんてかわいい人なんだろうと、こんな状況だって言うのに笑ってしまう。
「ヘル、好きだよ」
「俺の方が、好きだっ! クッソ!! せっかく優しくしてやろうと思ってるのに!」
「ふふ、ふっ、ん! あっ!!」
乱暴にシャツを脱ぎ捨てたヘルは、大きく反りかえった肉棒を俺の孔に押し当てた。
グリ、と一番太いところが入った後は、ゴリゴリと中を擦られながらどんどん奥に進んでくる。
「あ、あ、あっ!」
「く、キッツ……痛くねえよな!?」
「だ、だいじょ、ぶっ、あん!」
一度引き抜かれて、ぱちゅん! と音が立つほど勢いよく突かれる。もうその後は、容赦のない抽送に嵐のように翻弄されるばかり。
「んあぁっ! あ、あぁ!!」
「スバル、スバル……!」
我も忘れて喘いでいると、腹の中に熱いものが注ぎこまれる。
「うっ……」
「っ、はあ、はあ……あぁ……あ、ん!?」
やっと止まった、と息を落ち着けているそばからまた中を擦られる。
雑に拭ったせいで赤くなったヘルの目元よりも俺の頬は火照ってしまって、まるで治まりそうにない。
「ま、待ってぇ、ヘルぅ!」
「止まんねえよ、こんな……! スバル、明日は責任とって全部世話すっから、つきあえ!」
「あ、あぁ! やあぁ!!」
そうして俺は喉が枯れるまで声を上げつづけることになった。
そんなことがあってから、俺はヘルと二人でイエルトに家を借りて暮らしはじめた。
しばらくはヘルが働きに出て、夜になると抱きつぶされ、俺が寝込んでいる間にまたどこかに稼ぎに行っている……という生活が続いたんだけど。
様子を見にきたクロノスとメレ……メヴィに笑顔でメチャクチャキレられて、俺からもヘルの目を治すために日中動ける体力を残してほしいと伝えると反省したらしく、手加減してくれるようになった。
時々我を忘れて抱きつぶされる日もあるけどね。
それでやっと動けるようになった俺は、隆臣さんの研究所の力を借りて本格的にヘルの目の研究に取り組んだ。
そしたらね、なんと! 紆余曲折あって、ヘルの目は無事に赤から青に戻ったんだよ!
これはすごい! と隆臣さんも興奮して、魔獣にも効くかどうか実験してみると、魔獣化してそう時間の経っていない、少しでも理性が残っている個体には効果があることがわかったんだ。
俺はその功績で王家から表彰されそうになったけど、騒がれるのを嫌ったヘルの力技により、一研究員として今も平和に隆臣さんの研究所に勤められている。
それでまた魔力が使えるようになったヘルは、日雇いだったり裏の危険な仕事から脱却して、なんと今は公共治水事業の筆頭技術者として日々腕を奮っている。
いつかクロノスとメヴィの視力も回復させて、魔法を自分で使えるようになってほしいなあというのが今の俺の研究課題だ。
なので、隆臣さんの研究所で、時々二人とも交流している。ヘルはいい顔しないけど、仕事だから渋々許してくれている。
クロノスは主従関係を解いた後、どうやらレオの執事として雇われたみたい。自由なレオに振り回されつつも、やっぱり執事の仕事が性に合ってるみたい。
メヴィも新しい事業を立ちあげて、服屋と眼鏡屋が一緒くたになったファッションストアを楽しそうに経営してるよ。
今日も今日とて研究所での仕事を終えて家にたどり着く。
食材の入った袋からカラフルな野菜を取りだし、慣れた手つきでそれを切って鍋に入れて煮こむ。
最近のヘルは仕事一筋でがんばってるから、もっぱら料理は俺の仕事だ。
「ふんふんふふーん」
俺もずいぶん料理が上手くなったよね、と自画自賛しながら、スープの味見をしていると。
ガチャガチャ、と扉の鍵が回り、背の高いシルエットが銀の髪を翻して、部屋の中にスルリと入ってくる。
「スバル! 帰ったぞ」
「ヘル! おかえり!!」
お玉をキッチンに置いて、急いで玄関に駆けていく。
部屋の中は、美味しそうで幸せな香りに満ちていた。
たくさんの困難と波乱の毎日を乗り越えて、俺はこれからもヘル共に暮らしていく。
きっとこれから先も、ずっと。
どうやら日本には帰れないみたいってこともサラッと話したのに、不自然なくらい何も聞かれない……きっと三人とも船で話したことを覚えていて、俺が告白の返事をどうするのか待ってくれているんだね。
緊張しているのか珍しく食が進まず、まだご飯は残っているけど木のさじを置いた。チラリと気になる彼を窺う。
ヘルは黙々とご飯を口にかきこんでいた。こんなに食べるのが早いのに、粗野に見えないのは不思議だなあ……ふと隣から視線を感じて振り向くと、クロノスと視線が交錯する。
「クロノス……この後話があるんだけど、時間もらっていいかな?」
クロノスは、慣れ親しんだ優しげな微笑を口元に乗せて頷いた。
「ええ、もちろん構いません」
「待てよ、スバル!」
クロノスが応えると間髪入れずにヘルが立ち上がって叫ぶ。メレがヘルの肩を掴んで、まあまあまあと宥めながら椅子に戻らせた。
「アンタにはこれから、アタシのヤケ酒につきあってもらうんだから。アンタだって飲みたい気分でしょ?」
「誰が……っ、離せ! 俺はテメーじゃなくてスバルに用があんだよ!!」
「あ、俺もクロノスと話が終わった後は、ヘルに話したいことがあったんだけど……!」
告白の返事をするからには、クロノスとずっと一緒にいられなくなるかもだし、主従契約を解いた方がよさそうだから。
だからその話をしてから、ずっと待たせていたヘルに返事をしたいと思ってるんだ。
「は? 俺に? 何の話だ」
ヘルは本当にわからないって顔をしていたが、クロノスはなにかを察した様子だった。
「……スバル、私への話は後で構いません。ヘルムートに伝えたいことがあるのでしょう? 私が望むのは、貴方が幸せでいることですから」
あ、クロノスにはわかっちゃったみたいだ。俺がこれからヘルに何を話すのか。
「えっと、ごめんねクロノス」
「いえ、私のことは本当に気にしないでください」
「じゃあ、お言葉に甘えて……ヘル、できれば二人っきりで聞いてほしいんだけど、ダメかな?」
そこでやっと何かを察したのか、ヘルはハッと表情を変えると勢いよく首を横に振った。
「ダメなわけあるかよ! 今すぐ部屋に戻ろうぜ!」
バッと俺の手を掴んで階段を登りはじめるヘルについていく。背後からメレの声が聞こえてきた。
「あーあ、フラれちゃったんじゃない? アタシ達。一杯つきあいなさいよ……って、アンタ酒飲めないじゃないの、使えないわねえ」
「貴方にどのように思われようと毛ほども痒くありませんが、ヤケ酒ですか、いいでしょう。つきあいますよ」
「アンタ自棄になってるわね!? ダメよ! 飲ませないから!」
「何故です? 自棄酒でしょう? 私も傷心……というのに、……不公平……」
バタンと扉が閉まり、階下の音は完全に聞こえなくなった。
急に静かになって緊張しながらも、クルリと振り向いたヘルの真剣な瞳と向きあう。
「なあ、話ってもしかして、告白の返事をくれるってことでいいのか? 俺で、いいってことか?」
「う、うん。そ……」
「ぃよっしゃ!!!」
最後まで伝える間もなく、痛いくらいに抱きしめられて、踵がちょっと浮いてしまう。
「ヤベェ、マジで嬉しい……スバル……!!」
それ以上言葉が出てこないようで、更に力を込めようとしてくるので慌てて胸板を押した。
「ちょっと待って! 痛いよヘル」
「あ、すまねえ!」
ヘルは俺の言葉を聞くなりパッと体を離してくれる。
普段は好き勝手して突っ走るのに、俺のことは気遣ってくれて一番に考えてくれるところ、やっぱり好きだなあって思った。
不器用だしツンデレだし、目のこともあって大変だっただろうに、それでも俺のためにってしてくれる行動を受け取っていたら、いつのまにか心の中で一番大きな存在になっていた。
首を絞められた時だって、俺のことじゃなくてヘルが傷ついていないかばかり気になってしまった。
こんなにも好きになってたんだって、自分でも愕然としたくらいだ。
もう日本に帰れないってわかって、迷いが吹っきれた。これからはヘルの側にいて、彼を支えていきたい。
想いを込めて抱きしめ返すと、また力をこめそうになって慌てて引っこめる気配を感じた。
思わずくす、と笑ってしまう。
俺の反応に勇気をもらったのか、ヘルは内心を吐露した。
「スバル、俺、ぜってーお前のこと大切にする」
「うん」
「前みたいに傷つけたりは、もう二度としない」
「うん、信じてるよ」
「おう……だから、抱いていいか?」
ドキ、と鼓動が跳ねる。いつかはそうなると思ってたけど、え、今日? 今?
「そ、そんな急に?」
「急じゃねえよ、俺はスバルのこと十分に待っただろ? ……マジで気が狂うくらい我慢して、夜暴れて酒飲んで誤魔化して、もう一秒だって待てねえよ」
俺の肩を掴んだヘルの海色の目と視線が交錯する。ゆらりゆらりと揺蕩う水が、複雑な模様を描いている。
「なあ、お願いだ……スバルに触れたくてたまんねえんだ」
そう言ったきり、首筋に顔を埋めて動かなくなったヘルの銀色の頭を、おずおずと撫でてみた。
普段はクールでかっこいいのに、時々ツンデレを発動したりこんな風に可愛くお願いごとをしてくるから、つい応えたくなってしまう。
今までは俺だって、応えるのを我慢してたんだよね。今日からは、我慢しなくていいんだ。
「あの……」
「なんだ?」
「痛くしないなら、その、いいよ……っうわあ!」
答えると同時に抱き抱えられて、ベッドの上に連れ去られた。
ぼすりと音を立ててのしかかられ、唇に熱いものが触れた。
「ん、んうぅ!?」
びっくりして半開きになった唇から、熱い舌が潜りこんでくる。
ちゅぱ、くちゅ、と恥ずかしい音がしたり、舌先から口蓋まで無遠慮に舐めまわされたりして、俺の頭はだんだん熱に浮かされていく。
気づいた時には全ての服を取り去られ、半裸のヘルが熱心に後腔を解していた。
刃物を手入れするためのオイルをたっぷりと塗され、ドロドロになった俺の後ろの穴は、すでにヘルを迎えいれる準備が整っている。
「あ、はあ、ふう……っ!」
「くっそ、エロ……、なあ、そろそろいいか?」
「ん、たぶん、んぅっ!」
はあはあと息を荒げながら、一度指を抜いて前をくつろげるヘルの姿を月の光で確認しながら、俺はたくましい体についた無数の傷をそっとなぞった。
途端にピクリと身をすくませて動かなくなるヘル。
「ね、ヘルも、全部脱いで、よ」
「スバル……」
バツが悪そうに目を背けるヘルの顔をこちらに向かせて、眼帯の紐も引っ張った。
「これも、とって」
「いや、これは……こんな汚ねえもん、できれば見せたくねえんだ」
俺の手を押さえるようにして目を隠すヘルに、俺はなおも言いつのる。
「汚くなんて、ない。俺は、傷だらけになって、がんばってきた、ヘルが好きだよ。それに……この目だって」
俺が眼帯を解こうとすると、大した抵抗もなくしゅるりとそれは外れた。
赤い瞳の中には、轟々と濁流のように荒れ狂う魔力の流れが見える。
「この目も、ヘルの一部なんだよ。ヘルと一緒に、今までがんばってきたんだよ」
力の入らない体を気合いで起こして、右の瞼の傷跡にキスをする。
目を見開いて俺を見つめるヘルに笑いかけると、ヘルの両目の海が波打って、じわりと水滴が滲みだした。
つう、と頬に流れた涙はぽたり、ぽた、と俺の腹を濡らす。
呆然とそれを見ていると、ヘルは突然顔を背けて瞳を腕で隠した。
「ばっ、お前……! なんでんなこと、今言うんだよ……!」
「え、え? ダメだった?」
「ダメじゃねえよ! ダメじゃねえけど、クソ……カッコわりい」
ぐし、と鼻を啜る音が聞こえてくる。
擦られて赤くなった鼻を見つめて、なんてかわいい人なんだろうと、こんな状況だって言うのに笑ってしまう。
「ヘル、好きだよ」
「俺の方が、好きだっ! クッソ!! せっかく優しくしてやろうと思ってるのに!」
「ふふ、ふっ、ん! あっ!!」
乱暴にシャツを脱ぎ捨てたヘルは、大きく反りかえった肉棒を俺の孔に押し当てた。
グリ、と一番太いところが入った後は、ゴリゴリと中を擦られながらどんどん奥に進んでくる。
「あ、あ、あっ!」
「く、キッツ……痛くねえよな!?」
「だ、だいじょ、ぶっ、あん!」
一度引き抜かれて、ぱちゅん! と音が立つほど勢いよく突かれる。もうその後は、容赦のない抽送に嵐のように翻弄されるばかり。
「んあぁっ! あ、あぁ!!」
「スバル、スバル……!」
我も忘れて喘いでいると、腹の中に熱いものが注ぎこまれる。
「うっ……」
「っ、はあ、はあ……あぁ……あ、ん!?」
やっと止まった、と息を落ち着けているそばからまた中を擦られる。
雑に拭ったせいで赤くなったヘルの目元よりも俺の頬は火照ってしまって、まるで治まりそうにない。
「ま、待ってぇ、ヘルぅ!」
「止まんねえよ、こんな……! スバル、明日は責任とって全部世話すっから、つきあえ!」
「あ、あぁ! やあぁ!!」
そうして俺は喉が枯れるまで声を上げつづけることになった。
そんなことがあってから、俺はヘルと二人でイエルトに家を借りて暮らしはじめた。
しばらくはヘルが働きに出て、夜になると抱きつぶされ、俺が寝込んでいる間にまたどこかに稼ぎに行っている……という生活が続いたんだけど。
様子を見にきたクロノスとメレ……メヴィに笑顔でメチャクチャキレられて、俺からもヘルの目を治すために日中動ける体力を残してほしいと伝えると反省したらしく、手加減してくれるようになった。
時々我を忘れて抱きつぶされる日もあるけどね。
それでやっと動けるようになった俺は、隆臣さんの研究所の力を借りて本格的にヘルの目の研究に取り組んだ。
そしたらね、なんと! 紆余曲折あって、ヘルの目は無事に赤から青に戻ったんだよ!
これはすごい! と隆臣さんも興奮して、魔獣にも効くかどうか実験してみると、魔獣化してそう時間の経っていない、少しでも理性が残っている個体には効果があることがわかったんだ。
俺はその功績で王家から表彰されそうになったけど、騒がれるのを嫌ったヘルの力技により、一研究員として今も平和に隆臣さんの研究所に勤められている。
それでまた魔力が使えるようになったヘルは、日雇いだったり裏の危険な仕事から脱却して、なんと今は公共治水事業の筆頭技術者として日々腕を奮っている。
いつかクロノスとメヴィの視力も回復させて、魔法を自分で使えるようになってほしいなあというのが今の俺の研究課題だ。
なので、隆臣さんの研究所で、時々二人とも交流している。ヘルはいい顔しないけど、仕事だから渋々許してくれている。
クロノスは主従関係を解いた後、どうやらレオの執事として雇われたみたい。自由なレオに振り回されつつも、やっぱり執事の仕事が性に合ってるみたい。
メヴィも新しい事業を立ちあげて、服屋と眼鏡屋が一緒くたになったファッションストアを楽しそうに経営してるよ。
今日も今日とて研究所での仕事を終えて家にたどり着く。
食材の入った袋からカラフルな野菜を取りだし、慣れた手つきでそれを切って鍋に入れて煮こむ。
最近のヘルは仕事一筋でがんばってるから、もっぱら料理は俺の仕事だ。
「ふんふんふふーん」
俺もずいぶん料理が上手くなったよね、と自画自賛しながら、スープの味見をしていると。
ガチャガチャ、と扉の鍵が回り、背の高いシルエットが銀の髪を翻して、部屋の中にスルリと入ってくる。
「スバル! 帰ったぞ」
「ヘル! おかえり!!」
お玉をキッチンに置いて、急いで玄関に駆けていく。
部屋の中は、美味しそうで幸せな香りに満ちていた。
たくさんの困難と波乱の毎日を乗り越えて、俺はこれからもヘル共に暮らしていく。
きっとこれから先も、ずっと。
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お読みいただきありがとうございました!
三人一緒まとめてエンドも書きたい気持ちはあったのですが、
私の中では三人ともヤンデレになってしまうイメージがありやめてしまいました……
もしまた三人仲良しエンドが思い浮かんだら形にするかもしれません。最後まで読んでいただきありがとうございました。