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第四章 海へ

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スキンを処理して布団に場所を移した巽は、布団の上にタオルをひいてその上に僕が寝転がるように促す。

「これならいくら漏らしても構いませんよ」
「う、漏らすとか言うなよ」
「ふふ、気持ちよすぎて漏らして泣きそうになっている郁巳さん、ぜひ見てみたいです」
「ばか」

 寝転んだ瞬間、ついに腰に引っかかっていた帯が解ける。大きく前が開いた浴衣を着ていた巽も、潔く全てを脱ぎ去ったらしい。

 間接照明だけを残した淫靡な雰囲気の空間で、汗ばんだセクシーな彼に組み敷かれて、ドキリと胸が高鳴った。

「郁巳さん、足を開いて」

 低く欲情のこもった声に導かれて、僕はそろりと股をひろげる。あんなに口では嫌がっていたのに、こんなことをしているから巽につけいられるんだと頭では思う。

 今ならまだ逃げ出せるはずなのに、どうしてだか言うことを聞いてしまうんだよな……

(やっぱり僕は、巽さんに惹かれているのかもしれない)

 これからされることを考えるだけで、胸のドキドキが治らずに顔が火照ってきてしまう。会いたくないのは、変えられてしまいそうだから。巽に恋をしていると自覚してしまいそうだから。

 そう考えると全てが自然で、僕はもう自分が恥ずかしくてここから消え去りたくなった。

「……ぁっ」

 濡れた水音がくちりと耳に届いて、後孔に怒張が当てられた。亀頭が入り込んでくると圧迫感は感じるけれど、雁首も引っかかることなく体内へと潜りこんでくる。

 強引に、けれど労りを持って接してくる巽の顔をときめきと共に眺めた。

 彼は快感に表情を歪めながらも、狂おしいほどに熱のこもった瞳で僕を見下ろしている。ああ、この顔……巽も僕を本気で好いていると伝わってきて、きゅんと胸が締め付けられた。

 拒否をしながらも、求められることが心地よかった。僕自身でさえ自覚していない寂しさを埋めて、一つになりたがる彼の行いを嫌がっていたけれど、本当は……迎え入れた彼の分身を締めつけながら、うっとりとため息を吐く。

「ん、巽さん……」
「なんですか郁巳、私を締めつけて……そんなにコレが欲しかったんですか?」

 僕は肯定も否定もできずに、ただ彼の腰に足を絡めた。巽は唇の端を吊り上げ、色っぽく笑う。

「いいですよ、満足するまで啼かせてあげます」
「ぅ、あっ」

 とちゅん、とちゅんと奥を揺さぶるようにして突き入れられ、切なくなって巽の背中に手を回す。

 まるで大好きだと伝えているような体勢に羞恥心がガンガン込み上げるけれど、もう僕はそれどころじゃなかった。

「あ、あっ」

 腹のお腹側にあるしこりにカリが引っかかる度に、じゅわりと溶けるような心地よさが腰いっぱいに広がる。僕は巽に与えられる雌の快感にすっかり病みつきになり、従順に受け入れていた。

「あっ……!」
「良さそうですね、郁巳」
「ん、気持ちい……きもちいい」

 僕が素直に心情を吐露すると、巽はますます熱心に剛直を差し込んでくる。じゅぷじゅぷと水音が立つほど律動を繰り返されて、僕の中にマグマのような熱がどんどん溜まっていく。

「はあぁ、あ、んあぁ……」
「貴方の顔、堪らないな……とろけきっていて、とてもそそる」

 抽送されながら片方の乳首をつねられて、腰がずくんと重くなる。何度も何度も擦られ続けたナカがうねって、更なる快楽を引き出そうと勝手に動きはじめた。

 巽の動きにあわせて腰を振っていると、今にも堰を切って何かが溢れ出しそうになった。

「あ、あっ?」

 熱い、熱い、お腹の奥から何か来る。触られないままの屹立が巽の腹に擦れて、中途半端に固くなっているのがわかった。何が来るっていうのだろう、怖い、でもとんでもなく気持ちがいい。

「な、待って、巽さ、へん、変だっ、僕……」

 快感に浮かされた声を聞き、巽は顔を寄せて僕の情けない表情をじっくりと眺める。

「気持ち良すぎて変になりそうなんですね? どうぞいくらでもイッてください」
「は、あんぅっ、うんんっ!」

 巽は僕に口づけ、舌を口内に侵入させた。そのまま硬いモノで激しく中を穿たれる。ぬるりとした舌が僕の舌を吸い、巽の剛直が腹側を思いきり擦り上げた瞬間、僕は思いきり彼の肩に爪を立てて絶頂した。

「ん、ぅんんんんっ!」

 きゅうきゅう中がうねって、巽の子種を絞るかのように収縮を繰り返している。僕の身体はおかしくなっていた。達したはずなのに前は緩やかに勃っているだけで、開放した兆しがない。

 ずっと体の奥から波のように気持ちよさが押し寄せてきて、どうやら中でイッたようだと遅れて理解をする。

 中の動きにつられて巽は律動を早め、堪えきれないとでも言いたげに一際奥に差し込むと温かい液体を中に放った。

「ん、ぅ、ぅんん……」

 心臓の鼓動が全力で走ったみたいに高鳴っている。身体中、どこもかしこも熱くて堪らない。二、三度中に塗りこめるような動きをした後、巽は僕の中から出ていった。足の力を抜いて大の字で寝転がる。

「はあ、は……あぁ」
「ふう……ふふ、郁巳さん。中で上手にいけたようですね」
「あ、今の……そう、なのか?」

 いわゆるメスイキという状態を経験したようだと、朧げに理解をした。ああ、どんどん巽によって変えられてしまう。心も身体も……僕は居心地が悪くなって、彼から背を向けて体を丸めた。

 スキンを捨てた巽が、後ろから抱きしめながら寝そべってくる。肩から腕にかけて確かめるように撫で下ろされた。

 汗ばんだ肌が触れ合うのはそこまで心地よいとは言えなかったが、やめてほしいとは思わなかった。

「郁巳さん、好きです」
「う……わ、わかってるよ」
「おや、ようやく私の気持ちを受け入れてくださる気になったので?」
「いや、そこまではちょっと」

 僕の覚悟が定まっていないので、待ってほしいというか。それに僕は、巽のことが好きかもしれないと思いながらも夏葉を大切に思っている。きっと一生忘れられないし、忘れるつもりもない。

 そんな中途半端な状態で巽の想いに応えていいのかと考えると、どうしても首を縦には振れなかった。
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