息子の彼氏にクレームをつけにいったら、そのパパに美味しくいただかれました

兎騎かなで

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第三章 初デート

巽視点3

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 くるんと腰を丸めてベッドの脇に逃げようとする郁巳を、上から腕で囲い込む。生理的な涙で潤んだ瞳が色っぽくて、尽きる気配のない煩悩が胸の中で育っていく。

 安心させるように穏やかに笑いかけたかったが、きっと郁巳には欲望の滲んだ笑みに見えていることだろう。

「ふふ……乳首でイッちゃいましたね?」
「違う……っ! お前が、中を擦るから……っ!」
「そうですか、どんどん中で感じるようになってきましたね」
「っ!」

 墓穴を掘ったと思ったのだろう、郁巳はふいっと顔を逸らしてそっぽを向いた。その首筋に顔を埋めたくなる。

 心の赴くままに口を寄せ、鎖骨の下にキスマークをつけた。

「ばっ、何して……」
「早く私のモノになってください、郁巳……」
「うっ、それやめろっ……」

 何度も吸いついていると、グッと頭を押さえられて顔を上げさせられた。

「勝手に跡をつけるなっ」
「見えるところにはやりませんよ」
「そういう問題じゃないから。ほら、終わったなら退いてくれ」

 強気な彼は私の胸元を押して腕の中から逃れようとするので、素直に退いた。あまりしつこくしすぎない方が、今の彼には効果的だろう。

 郁巳はキスマークをつけられた場所を指先で押さえながら、恨みがましい視線を私に向けた。ああ、その顔、たまらないな。

 度重なる快感で頬は赤く色づき、涼しげな目元は男を誘うように潤んでいる。煽られそうになり、さりげなく視線を逸らした。

「まだ時間はありますが、どうします?」
「……っ、帰る」

 一瞬迷うような間があったことにほくそ笑む。体だけでなく、心の中にまで己の存在が侵食し始めている手応えを感じた。

「では、送りましょう」

 時刻はすでに夕刻だ。脱ぎ捨てた服をお互い無言で身につけると、部屋を後にした。

 物憂げな顔をした郁巳は、自身の片腕を抱えるように握りしめたまま、ゆっくりと遊歩道を引き返していく。

「明日の予定はあるんですか?」
「別に、家でゆっくりする」
「そうなんですか、だったら今度こそ健全なデートをしませんか?」

 あまりにも急な誘いだし、きっと断られるだろうとわかっていながらも、誘わずにはいられなかった。

 もっと彼と共に過ごしたい。尽きぬ欲望が私の舌を操って、考えるよりも先に彼を求めてしまう。

「嫌だ。なんか尻がジンジンするし、ゆっくり休みたいんだ」

 郁巳はかあっと頬を染めて、私の方を見ないようにして歩いている。意識されていることが嬉しくて、弾んだ声音で返答した。

「ふふ……では、一緒にオンラインでゲームをしましょう。それならベッドの上で休みながらでもできますよね?」
「嫌だってば……お前が一緒だと思うと、休めないから」
「ドキドキしちゃいますか?」
「そ、んなことは、ない、けど」

 とても怪しい返事が返ってきた。私の一言でたじろぐ彼を見るのはとても楽しい。赤く染まった頬に口づけたくなった。

「今度は郁巳さんの好きな場所に行きましょう。どこがいいですか」
「え……」

 郁巳は行かないとは言わずに、真剣に考えだした。しばらく無言で歩いていた彼は、やがて無言で首を振る。

「もうこういうのはやめないか? やっぱりおかしいっていうか、和泉にバレたらどう思われるか……」
「何もおかしいことなどありませんよ。息子達も自由に恋愛しているんですから、私達だって自由にすればいいと思いませんか?」
「だって、僕は……」

 郁巳はそれきり黙りこんでしまった。唇が微かに動いて、夏葉と呟いたように聞こえた。確か、彼の奥さんがそのような名前だったように思う。

 忘れられないのだろうか……自身の元妻である美香のことを思い出してみても、すでに愛おしいとは露ほども感じない。死別と離婚ではきっと、感覚が違うのだろう。

 私ももし美香に死なれていたら、もっとああしてあげればよかったという未練があったのかもしれない。

 背を丸めて歩く郁巳はとても寂しそうに見えて、抱きしめてあげたくなった。
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