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まるで自嘲するような微笑み方だった。
「いい親子関係を築かれていらっしゃるんですね。私のところは、連絡事項程度しか話してくれませんよ」
「そうですか……ちょっと寂しいですね」
「花屋敷さんのお人柄がよいのでしょうね」
「そうなんでしょうか? ありがとうございます」
なぜか褒められてしまったが、話の筋がズレてしまったので本題に戻す。
「それで僕としては、なんとか二人におつきあいをやめさせたくてですね」
「何故ですか?」
「え?」
森栄は、心底不思議だと言いたげに意見を述べた。
「彼らはすでに高校生です。恋の一つや二つしたい年頃でしょうし、節度をもったおつきあいであれば、親が交際をやめさせる必要はないでしょう」
彼は上品な仕草でコーヒーを一口含むと、続きを話す。
「双方に恋愛感情があり同意があるのなら、私は構わないと思いますよ」
「貴方は構わなくとも僕は構うんです!」
「まあまあ、落ち着いてください花屋敷さん。息子さんが心配なお気持ちは、よくわかります。私だって妻と別れてから、息子が真っ当に育ってくれるか不安でしたから」
「あ、貴方も奥さんがいらっしゃらないのですか?」
「ということは、花屋敷さんも?」
偶然にも同じ境遇だったようだ。こんな風に出会わなければ、同じシングルファザーとして協力できる仲になっていたかもしれない。今更遅いけれど。
しかし森栄はそうは思わなかったみたいで、眼鏡の奥の瞳を細めて、華やかな笑顔になる。少し身を乗りだして、僕を見つめた。
「そうでしたか。よろしければ、郁巳さんとお呼びしても? 私のことも巽でいいですよ」
「いや、呼び方はどうでも、というか今その話をしているのではなくてですね。僕は息子が心配なんです、今朝も首に……キ、キスマークをつけていて」
「そうなんですか? どのあたりに?」
森栄は立ち上がって僕に歩み寄ってきた。僕はうなじの後ろを指先で指し示す。
「この辺りですよ」
「ここですか」
ヒヤリとした指先が首と肩の境界線を突く。なっ、なんで触ってくるんだよこの人。
「いえ、もう少し上ですが」
「この辺かな?」
「……っ、あの、触らないでいただけますか」
「おや、感じてしまいましたか? 敏感なんですね」
つつつ……と首を指先でなぞられて、肩を竦める。身動いだ拍子にコーヒーカップに触れてしまい、中身を溢してしまった。
「あっ!」
慌ててコーヒーカップを掴む。よかった、高級カップは無事だ。その代わり、僕の服は悲惨なことになってしまった。
腹から下腹部にかけて、黒い染みがぐっちょりと服の色を変えている。
「いい親子関係を築かれていらっしゃるんですね。私のところは、連絡事項程度しか話してくれませんよ」
「そうですか……ちょっと寂しいですね」
「花屋敷さんのお人柄がよいのでしょうね」
「そうなんでしょうか? ありがとうございます」
なぜか褒められてしまったが、話の筋がズレてしまったので本題に戻す。
「それで僕としては、なんとか二人におつきあいをやめさせたくてですね」
「何故ですか?」
「え?」
森栄は、心底不思議だと言いたげに意見を述べた。
「彼らはすでに高校生です。恋の一つや二つしたい年頃でしょうし、節度をもったおつきあいであれば、親が交際をやめさせる必要はないでしょう」
彼は上品な仕草でコーヒーを一口含むと、続きを話す。
「双方に恋愛感情があり同意があるのなら、私は構わないと思いますよ」
「貴方は構わなくとも僕は構うんです!」
「まあまあ、落ち着いてください花屋敷さん。息子さんが心配なお気持ちは、よくわかります。私だって妻と別れてから、息子が真っ当に育ってくれるか不安でしたから」
「あ、貴方も奥さんがいらっしゃらないのですか?」
「ということは、花屋敷さんも?」
偶然にも同じ境遇だったようだ。こんな風に出会わなければ、同じシングルファザーとして協力できる仲になっていたかもしれない。今更遅いけれど。
しかし森栄はそうは思わなかったみたいで、眼鏡の奥の瞳を細めて、華やかな笑顔になる。少し身を乗りだして、僕を見つめた。
「そうでしたか。よろしければ、郁巳さんとお呼びしても? 私のことも巽でいいですよ」
「いや、呼び方はどうでも、というか今その話をしているのではなくてですね。僕は息子が心配なんです、今朝も首に……キ、キスマークをつけていて」
「そうなんですか? どのあたりに?」
森栄は立ち上がって僕に歩み寄ってきた。僕はうなじの後ろを指先で指し示す。
「この辺りですよ」
「ここですか」
ヒヤリとした指先が首と肩の境界線を突く。なっ、なんで触ってくるんだよこの人。
「いえ、もう少し上ですが」
「この辺かな?」
「……っ、あの、触らないでいただけますか」
「おや、感じてしまいましたか? 敏感なんですね」
つつつ……と首を指先でなぞられて、肩を竦める。身動いだ拍子にコーヒーカップに触れてしまい、中身を溢してしまった。
「あっ!」
慌ててコーヒーカップを掴む。よかった、高級カップは無事だ。その代わり、僕の服は悲惨なことになってしまった。
腹から下腹部にかけて、黒い染みがぐっちょりと服の色を変えている。
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