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くっ、こんなところで……っ
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強い眼差しで見つめ返すと、先生が戸惑ったような声を出した。
「どうしても石油王になりたいのかね」
「石油王なんて無理よ、考え直しなさい」
「嫌だ! 俺は絶対に油田を掘り当ててみせる!」
残念ながら理解してもらえなかったが、祐希は意見を曲げなかった。
面談は長時間行われたけれど、祐希は一度として無理だとかやめるなどと言わずに、頑なに石油王になりたいと主張した。
(ここで諦めたら遠海くんに失望されて、二度と興味を持ってもらえない気がする。そんなのは嫌なんだ!)
祐希は本気で石油王になろうと思っていて、諦める気だってさらさらない。
けれど心のどこかで、石油王になんて薄々なれないのではないかという予感もあった。
遠海の残したロックフェラーの本を読んで、石油王はあの時代だからこそなれたのだろうとも感じた。
だからといって、二人に反対されたからと意見を曲げる気はない。祐希が遠海に抱く気持ちは、人に言われて変わるような軽いものじゃないのだ。
三者面談は意見が割れたまま終わった。困ったように笑う先生と別れて、疲れた顔をした母の後をついていく。
廊下を歩いている時に、会いたいと願っていた人物とすれ違う。遠海はチラリと祐希を見下ろすと、そのまま声もかけずに教室の方向へと去っていった。
(どうしたんだろう、こんな時間に。忘れ物でも取りに来たのかな。まさか俺のことを心配して……なーんて、あるわけないよね)
もしもそうだとしたら飛び上がるほど嬉しいんだけどなと夢想する。学校を出るなり始まった母の小言を右から左へと聞き流した。
祐希はスケジュールを組み立てながら唸っていた。どうやりくりしても時間が足りない……
週六のバイトとサウジアラビア関係の勉強、更に学校の勉強をこなすとなると、もっと睡眠時間を削る他なかった。
学校に通わないという選択肢はハナからない。遠海に会えなくなってしまうからだ。
また失言を繰り返してしまいそうで、祐希からは話しかけられない。頬杖をついて少し丸まった背中を見つめるだけだけだ。それだけでも頑張る気力が湧いてきた。
(バイト資金を八月になるまで貯めて、サウジアラビアに行くんだ。夏休みの間に勝負をかける)
幸い手元には三年前に取ったパスポートがある。親に反対されようと、止まる気なんて全くない。祐希は睡眠時間を削ってバイトと勉強に勤しんだ。
「……山、真山! おい、起きろ」
「ふぁ⁉︎」
「ちゃんと聞いてろよ、ここテスト範囲だからな」
どうやら授業中に寝てしまっていたみたいだ。午後イチの国語の授業はまるで子守唄のようだと頭を描いて、必死でノートを取った。
どうにも頭がふわふわして、文字が霞んで見える。
授業が終わるなり席までやってきた翔太は、祐希の目の前でひらひらと手を振った。
「おーい、大丈夫か? うっわ、目の下の隈ヤバいな」
「そんなに目立つ?」
「ああ、真っ黒だ。最近つきあいも悪いし、本当にどうしたんだよ」
「ごめん、バイトが忙しくてさ。勉強にも手が抜けないし」
「バイトの時間減らせば?」
それはできない、夏休みにサウジアラビアに出発するための資金が足りなくなってしまう。親からは反対されているから、金を借りられそうにもない。
祐希は首を振ってノートをまとめはじめた。ため息をついた翔太は席を離れていく。
(ごめん翔太、それでもこればっかりは譲れないんだ)
次は移動教室だと立ち上がる。急にめまいがして立っていられなくなり、目の前が急速に暗くなっていく。
きゃあ、と隣にいた女子の悲鳴が聞こえる。誰かが支えてくれたような気がしたけれど、確かめる前に意識は閉ざされた。
「どうしても石油王になりたいのかね」
「石油王なんて無理よ、考え直しなさい」
「嫌だ! 俺は絶対に油田を掘り当ててみせる!」
残念ながら理解してもらえなかったが、祐希は意見を曲げなかった。
面談は長時間行われたけれど、祐希は一度として無理だとかやめるなどと言わずに、頑なに石油王になりたいと主張した。
(ここで諦めたら遠海くんに失望されて、二度と興味を持ってもらえない気がする。そんなのは嫌なんだ!)
祐希は本気で石油王になろうと思っていて、諦める気だってさらさらない。
けれど心のどこかで、石油王になんて薄々なれないのではないかという予感もあった。
遠海の残したロックフェラーの本を読んで、石油王はあの時代だからこそなれたのだろうとも感じた。
だからといって、二人に反対されたからと意見を曲げる気はない。祐希が遠海に抱く気持ちは、人に言われて変わるような軽いものじゃないのだ。
三者面談は意見が割れたまま終わった。困ったように笑う先生と別れて、疲れた顔をした母の後をついていく。
廊下を歩いている時に、会いたいと願っていた人物とすれ違う。遠海はチラリと祐希を見下ろすと、そのまま声もかけずに教室の方向へと去っていった。
(どうしたんだろう、こんな時間に。忘れ物でも取りに来たのかな。まさか俺のことを心配して……なーんて、あるわけないよね)
もしもそうだとしたら飛び上がるほど嬉しいんだけどなと夢想する。学校を出るなり始まった母の小言を右から左へと聞き流した。
祐希はスケジュールを組み立てながら唸っていた。どうやりくりしても時間が足りない……
週六のバイトとサウジアラビア関係の勉強、更に学校の勉強をこなすとなると、もっと睡眠時間を削る他なかった。
学校に通わないという選択肢はハナからない。遠海に会えなくなってしまうからだ。
また失言を繰り返してしまいそうで、祐希からは話しかけられない。頬杖をついて少し丸まった背中を見つめるだけだけだ。それだけでも頑張る気力が湧いてきた。
(バイト資金を八月になるまで貯めて、サウジアラビアに行くんだ。夏休みの間に勝負をかける)
幸い手元には三年前に取ったパスポートがある。親に反対されようと、止まる気なんて全くない。祐希は睡眠時間を削ってバイトと勉強に勤しんだ。
「……山、真山! おい、起きろ」
「ふぁ⁉︎」
「ちゃんと聞いてろよ、ここテスト範囲だからな」
どうやら授業中に寝てしまっていたみたいだ。午後イチの国語の授業はまるで子守唄のようだと頭を描いて、必死でノートを取った。
どうにも頭がふわふわして、文字が霞んで見える。
授業が終わるなり席までやってきた翔太は、祐希の目の前でひらひらと手を振った。
「おーい、大丈夫か? うっわ、目の下の隈ヤバいな」
「そんなに目立つ?」
「ああ、真っ黒だ。最近つきあいも悪いし、本当にどうしたんだよ」
「ごめん、バイトが忙しくてさ。勉強にも手が抜けないし」
「バイトの時間減らせば?」
それはできない、夏休みにサウジアラビアに出発するための資金が足りなくなってしまう。親からは反対されているから、金を借りられそうにもない。
祐希は首を振ってノートをまとめはじめた。ため息をついた翔太は席を離れていく。
(ごめん翔太、それでもこればっかりは譲れないんだ)
次は移動教室だと立ち上がる。急にめまいがして立っていられなくなり、目の前が急速に暗くなっていく。
きゃあ、と隣にいた女子の悲鳴が聞こえる。誰かが支えてくれたような気がしたけれど、確かめる前に意識は閉ざされた。
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