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22 不思議な夕食デコレーション
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カリオスは数点用意されていた大人用の服に素早く着替えた。
あ、ここで着替えんの? 自室だからそりゃそうか……俺もなるべく彼の逞ましい体を気にしないようにして、ちゃっちゃと着替える。
「眼福ですね」
「やめれ、こっち見んなし」
遠慮を知らないカリオスに、しっしと手を払いつつ背を向けて、急いで着替えを終えた。
クルリと振り向き襟元を整えていると、カリオスは感心したように顎に手を当てた。
「思っていた通り、よく似合います」
「……カリオスも似合ってるぞ」
カリオスは明るいグレーのシャツにチャコールのベスト、モスグリーンのボトムを組みあわせていた。鎧姿やラフなシャツもマッチしていたが、貴族然とした格好も抜群に映える。
「ありがとうございます」
カリオス少年の服は少しだけ袖が短かったが、そういうデザインの服だと言われたら納得しそうな自然な着こなしができていた。
シンプルな淡いグリーンのシャツと、濃い灰色のボトムは見た目より動きやすいが、きちんと良家のお坊ちゃんに見える。
それよか気になるのは、裾が長くて折り返さないと着れなかったことだ……子どもの頃から足が長かったんだなカリオスは。ふーんだ、別に悔しくなんかないやーい。
口を尖らせてすねている俺を尻目に、カリオスは熱心に俺の全身を見下ろしている。
「ハッキリ言って想像以上に似合っています。至急画家を呼びましょう、この可愛らしい姿を絵画として残さなければ」
「やめてくれー」
カリオスの視線から逃れるように、胸の前で腕をクロスさせたところで、コンコンとノックの音が響いた。
「カリオス様、お食事をお持ちしました」
「ああ、入って」
失礼しますと部屋に入室してきたのは、先程のメイドだった。彼女は静々と食事を窓際に備えつけられた二人掛けのテーブルに置く。
「……ん?」
食事に乗せるには若干おかしな大きさのカラフルなメッセージカードが刺さっている……なんの絵だコレ、金髪と黒髪の二人が仲良く手を取り合っている絵が描かれてるけど、もしかして俺とカリオス?
目をこらしてよくみると、その絵は食べ物で描かれていた。いわゆるチョコアート的なやつ。粘性のある立体的な線画が細かなタッチで描かれている。
なにこれすっご。こんな精巧なお菓子の絵を見たのなんて、日本にいた時以来かもしれん。キャラケーキの絵師でも雇ってんのかな、この家は。
「よく描けているよナタリー、特にツカサの鼻のあたりが本人そっくりでとてもかわいらしい」
「お褒めいただきありがとうございます」
「え、このカードみたいなやつ、メイドさんが描いたの?」
「はい。歓迎の気持ちを絵に表してみました」
鉄壁の無表情でナタリーさんはそうのたまった。人のこと言えないけど、無表情がすぎる。この絵がなければとても歓迎されているとは思えないくらいに、彼女はピクリとも笑わない。
いやでも、歓迎してくれているというならお礼言っとこうか。
「そうか、わざわざありがとな。嬉しいなー」
「当家の誇りであるカリオス様が選ばれた方です、さぞ素晴らしい人柄なのでしょう。お会いできて光栄です、ツカサ様」
「いやー、それほどでも」
「夜の闇のような漆黒の髪と瞳は、太陽と夏の葉のように眩しいカリオス様と対のようですね。正直に申しまして、大変萌える組合せでございます。使用人一同、総力を上げてお二人の仲を応援していきたい所存です」
「はあ、どうも?」
能面のような表情で俺とカリオスを謎の視点で誉めそやしたナタリー。給仕はいらないと告げたカリオスの言葉を受けて、彼女は静かに退出していった。
独特なキャラクターだったな、あの人。腐のつく女子の方だろうか……掘り下げるとヤブから蛇が出そうだから、そっとしておこう。
「いただきましょう。ツカサ、どれから食べたいですか?」
「ならその赤いソースのかかった白身魚をもらおうかな」
夕食はとても美味だった。食べたことのないフルーティでスパイシーなソースだったが、近年流行っている味らしい。
食べている間に俺の領域がチクチク攻撃されている感覚がしたけれど、それが気にならなくなるほど楽しいひと時を過ごすことができた。
そして食後。差し入れられたお酒までいただいちゃってほろ酔いふわふわ気分な俺は、上機嫌でカリオスに尋ねた。
「ごっそさん、満足満足。さーて、俺の客室も用意してくれちゃってんのかな、いやー悪いねー。そろそろ案内をお願いしていいかな?」
「はい? ツカサはこの部屋で僕と一緒に寝る予定にしていましたけど」
「え」
おっと、なんてこった。 この部屋にはベッドが一つしかないんだぞ?
「えーと、なら俺ソファーで」
「なぜベッドがあるのにわざわざソファーを借りるんですか?」
食い気味に疑問をぶつけられて、うかがうようにして緑の目を覗きこむ。エメラルドの瞳はライトの下できらめいて見えた。
「……じゃあカリオスがソファー使う?」
「僕と一緒に寝るのは嫌ですか」
カリオスがいつもより潜めた低めの声で、意味深に問いかけてくる。
これはアレか。夜のお誘いってヤツなのか!?
二人旅行だわーいどこいこー、と行き先を考えるだけで浮かれていた俺は、今この瞬間までアダルティな展開をまったく予想していなかった。
カリオスはこちらを注意深く伺いながら、獲物を狙う狩人のように俺の一挙一動を観察している。
「ツカサ」
向かいに座るカリオスに、テーブルの上で握り締めていた右手を包み込まれる。指の股あたりをスッと撫でられて、慌てて手を引っこめようとするも止められた。
「ツカサはもう、僕のことを好きですよね?」
「す……っ、きじゃ、ない」
「本当に?」
カリオスはくるくると指先で円を描くようにして、俺の手の甲をなぞり続ける。やめろって、めっちゃくすぐったい。ビクビクしちゃう。
「僕と気持ちいいことするの、嫌いじゃないんですよね。もっと深く触れあいたいとは思いませんか?」
全く想像しなかったかと問われれば嘘になる。あの長くて太いので、身体の奥の方まで穿たれたらいったいどんな感覚がするんだろうって。
怖くて、でも確かに興味はあって。でもそれは、ただの好奇心じゃないのか? それとも性欲?
カリオスだから、最後まですることを想像しても気持ち悪くならないし、やってみたいような気もする。けれどそれは恋愛的なものかと問われると、途方に暮れてしまう。
「……悪い、本当にわからないんだ。カリオスのことは気に入ってるし、側にいると楽しいし落ち着く。体を触られるのも気持ちいいし嫌じゃない。けど、これが恋かどうかと言われると……わからない」
うつむいて考えこむ俺を目の前にして、カリオスも指先の動きを止めてなにやら考えだした。
あ、ここで着替えんの? 自室だからそりゃそうか……俺もなるべく彼の逞ましい体を気にしないようにして、ちゃっちゃと着替える。
「眼福ですね」
「やめれ、こっち見んなし」
遠慮を知らないカリオスに、しっしと手を払いつつ背を向けて、急いで着替えを終えた。
クルリと振り向き襟元を整えていると、カリオスは感心したように顎に手を当てた。
「思っていた通り、よく似合います」
「……カリオスも似合ってるぞ」
カリオスは明るいグレーのシャツにチャコールのベスト、モスグリーンのボトムを組みあわせていた。鎧姿やラフなシャツもマッチしていたが、貴族然とした格好も抜群に映える。
「ありがとうございます」
カリオス少年の服は少しだけ袖が短かったが、そういうデザインの服だと言われたら納得しそうな自然な着こなしができていた。
シンプルな淡いグリーンのシャツと、濃い灰色のボトムは見た目より動きやすいが、きちんと良家のお坊ちゃんに見える。
それよか気になるのは、裾が長くて折り返さないと着れなかったことだ……子どもの頃から足が長かったんだなカリオスは。ふーんだ、別に悔しくなんかないやーい。
口を尖らせてすねている俺を尻目に、カリオスは熱心に俺の全身を見下ろしている。
「ハッキリ言って想像以上に似合っています。至急画家を呼びましょう、この可愛らしい姿を絵画として残さなければ」
「やめてくれー」
カリオスの視線から逃れるように、胸の前で腕をクロスさせたところで、コンコンとノックの音が響いた。
「カリオス様、お食事をお持ちしました」
「ああ、入って」
失礼しますと部屋に入室してきたのは、先程のメイドだった。彼女は静々と食事を窓際に備えつけられた二人掛けのテーブルに置く。
「……ん?」
食事に乗せるには若干おかしな大きさのカラフルなメッセージカードが刺さっている……なんの絵だコレ、金髪と黒髪の二人が仲良く手を取り合っている絵が描かれてるけど、もしかして俺とカリオス?
目をこらしてよくみると、その絵は食べ物で描かれていた。いわゆるチョコアート的なやつ。粘性のある立体的な線画が細かなタッチで描かれている。
なにこれすっご。こんな精巧なお菓子の絵を見たのなんて、日本にいた時以来かもしれん。キャラケーキの絵師でも雇ってんのかな、この家は。
「よく描けているよナタリー、特にツカサの鼻のあたりが本人そっくりでとてもかわいらしい」
「お褒めいただきありがとうございます」
「え、このカードみたいなやつ、メイドさんが描いたの?」
「はい。歓迎の気持ちを絵に表してみました」
鉄壁の無表情でナタリーさんはそうのたまった。人のこと言えないけど、無表情がすぎる。この絵がなければとても歓迎されているとは思えないくらいに、彼女はピクリとも笑わない。
いやでも、歓迎してくれているというならお礼言っとこうか。
「そうか、わざわざありがとな。嬉しいなー」
「当家の誇りであるカリオス様が選ばれた方です、さぞ素晴らしい人柄なのでしょう。お会いできて光栄です、ツカサ様」
「いやー、それほどでも」
「夜の闇のような漆黒の髪と瞳は、太陽と夏の葉のように眩しいカリオス様と対のようですね。正直に申しまして、大変萌える組合せでございます。使用人一同、総力を上げてお二人の仲を応援していきたい所存です」
「はあ、どうも?」
能面のような表情で俺とカリオスを謎の視点で誉めそやしたナタリー。給仕はいらないと告げたカリオスの言葉を受けて、彼女は静かに退出していった。
独特なキャラクターだったな、あの人。腐のつく女子の方だろうか……掘り下げるとヤブから蛇が出そうだから、そっとしておこう。
「いただきましょう。ツカサ、どれから食べたいですか?」
「ならその赤いソースのかかった白身魚をもらおうかな」
夕食はとても美味だった。食べたことのないフルーティでスパイシーなソースだったが、近年流行っている味らしい。
食べている間に俺の領域がチクチク攻撃されている感覚がしたけれど、それが気にならなくなるほど楽しいひと時を過ごすことができた。
そして食後。差し入れられたお酒までいただいちゃってほろ酔いふわふわ気分な俺は、上機嫌でカリオスに尋ねた。
「ごっそさん、満足満足。さーて、俺の客室も用意してくれちゃってんのかな、いやー悪いねー。そろそろ案内をお願いしていいかな?」
「はい? ツカサはこの部屋で僕と一緒に寝る予定にしていましたけど」
「え」
おっと、なんてこった。 この部屋にはベッドが一つしかないんだぞ?
「えーと、なら俺ソファーで」
「なぜベッドがあるのにわざわざソファーを借りるんですか?」
食い気味に疑問をぶつけられて、うかがうようにして緑の目を覗きこむ。エメラルドの瞳はライトの下できらめいて見えた。
「……じゃあカリオスがソファー使う?」
「僕と一緒に寝るのは嫌ですか」
カリオスがいつもより潜めた低めの声で、意味深に問いかけてくる。
これはアレか。夜のお誘いってヤツなのか!?
二人旅行だわーいどこいこー、と行き先を考えるだけで浮かれていた俺は、今この瞬間までアダルティな展開をまったく予想していなかった。
カリオスはこちらを注意深く伺いながら、獲物を狙う狩人のように俺の一挙一動を観察している。
「ツカサ」
向かいに座るカリオスに、テーブルの上で握り締めていた右手を包み込まれる。指の股あたりをスッと撫でられて、慌てて手を引っこめようとするも止められた。
「ツカサはもう、僕のことを好きですよね?」
「す……っ、きじゃ、ない」
「本当に?」
カリオスはくるくると指先で円を描くようにして、俺の手の甲をなぞり続ける。やめろって、めっちゃくすぐったい。ビクビクしちゃう。
「僕と気持ちいいことするの、嫌いじゃないんですよね。もっと深く触れあいたいとは思いませんか?」
全く想像しなかったかと問われれば嘘になる。あの長くて太いので、身体の奥の方まで穿たれたらいったいどんな感覚がするんだろうって。
怖くて、でも確かに興味はあって。でもそれは、ただの好奇心じゃないのか? それとも性欲?
カリオスだから、最後まですることを想像しても気持ち悪くならないし、やってみたいような気もする。けれどそれは恋愛的なものかと問われると、途方に暮れてしまう。
「……悪い、本当にわからないんだ。カリオスのことは気に入ってるし、側にいると楽しいし落ち着く。体を触られるのも気持ちいいし嫌じゃない。けど、これが恋かどうかと言われると……わからない」
うつむいて考えこむ俺を目の前にして、カリオスも指先の動きを止めてなにやら考えだした。
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