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表彰式
ヴァレリオ視点SS
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突然だが俺の伴侶は、どんな美姫よりも美しくて可愛らしいと思う。
豹獣人らしくしなやかな身体つきに、耳の中が綿毛のようにふさふさな豹耳、誘うように揺れる尻尾。上品な顔立ちの美形で、とても愛想がいい。
初めて会った子どもの頃から、なんて愛らしい人だと思っていたんだ。そして中身は顔に見合わずヤンチャでイタズラ好きなところも、とても魅力的でたちまち好きになった。
生命力に溢れた彼のことを、幼い頃の俺は眩しい思いで見つめていた。いつからだったのだろう、そんな貴方が無理をするようになったのは。
騎士学校を卒業した後、クインシーが別の人と婚約したと聞いて、本気で愕然とした。納得がいかなくて、一目でいいから顔を見にいこうと、貴族学校の門戸を叩いた。
学生時代の彼は一見して、卒なく微笑み紳士的に振る舞い、なんの憂いもなさそうに見えた。だが彼にはかつてあったような、溢れんばかりの生気が足りていないように思えた。
いざ実際に目の前にクインシーがいて、彼が思い悩んでいるのかもしれないと思うと、いてもたってもいられず声をかけたんだ。
「ちょっといいか」
「なに?」
クインシーは迷惑そうな顔で俺を見て、まるで痛みを堪えるようにして俯いた。俺は急いで彼に駆け寄る。
「どうした、体調でも悪いのか!?」
「気にしないで……それより、近づかないでくれ。ごめんよ、君は全然悪くないんだけど、俺はなぜだか狼獣人って苦手でさ。ちょっと離れてよ」
あまりの衝撃に、言葉が出てこなかった。狼獣人が苦手……近づかないでくれ……離れてよ……クインシーの発した言葉が、グルグル頭の中をループする。
気づけば、クインシーは目の前からいなくなっていた。俺は耳を伏せ、尻尾を下げ、肩を落として校舎を後にした……
あの時はもう、二度とクインを伴侶に迎えることができないのではと、絶望したものだが……念願叶って先日、ついに彼と身も心も結ばれた。
本当に夢のような出来事だ。いつ彼の気が変わってもいいように、武術を極め、出世街道を登り、社交界での振る舞いを磨いてきたわけだが。
こうして無事に報われて、全力で頑張ってきた甲斐があった。想い続けていれば願いは叶うのだなと、神に感謝を捧げたい気分だ。
俺は腕の中で眠る彼を起こさないように、そっと稲穂色の髪を撫でた。
「……愛している、クイン」
何度愛を囁いても足りない。たくさん抱きたくて、抱いたらずっと繋がっていたくて、昨晩もずいぶん無理をさせてしまった。
素直になったクインは大層素晴らしい可愛らしさで、俺はなす術もなくとり乱し、彼の一挙一動に振り回されてしまった。
思い出すだけで尻尾が揺れてしまう……いけない、うるさくしたらクインが起きてしまうな。気合いを入れて尻尾の動きを止めた。
すう、すう、と規則的な寝息が聞こえる。寝息まで愛くるしいなんて、もはや反則ではないか。
「かわいいな……」
少しだけ……と、髪の先にキスを贈った。彼の金の睫毛がぴく、と震えたが、そのまま眠り続けている。
白く滑らかな頬にも、触れるだけのキスを落とした。無防備に眠り続ける様子を眺めて、あまりの可憐さに悶えた。
「なんてかわいいんだ……」
俺は気が済むまでクインにキスを贈ってから、しっかりと彼を腕の中に抱きしめて、幸せな眠りについた。
豹獣人らしくしなやかな身体つきに、耳の中が綿毛のようにふさふさな豹耳、誘うように揺れる尻尾。上品な顔立ちの美形で、とても愛想がいい。
初めて会った子どもの頃から、なんて愛らしい人だと思っていたんだ。そして中身は顔に見合わずヤンチャでイタズラ好きなところも、とても魅力的でたちまち好きになった。
生命力に溢れた彼のことを、幼い頃の俺は眩しい思いで見つめていた。いつからだったのだろう、そんな貴方が無理をするようになったのは。
騎士学校を卒業した後、クインシーが別の人と婚約したと聞いて、本気で愕然とした。納得がいかなくて、一目でいいから顔を見にいこうと、貴族学校の門戸を叩いた。
学生時代の彼は一見して、卒なく微笑み紳士的に振る舞い、なんの憂いもなさそうに見えた。だが彼にはかつてあったような、溢れんばかりの生気が足りていないように思えた。
いざ実際に目の前にクインシーがいて、彼が思い悩んでいるのかもしれないと思うと、いてもたってもいられず声をかけたんだ。
「ちょっといいか」
「なに?」
クインシーは迷惑そうな顔で俺を見て、まるで痛みを堪えるようにして俯いた。俺は急いで彼に駆け寄る。
「どうした、体調でも悪いのか!?」
「気にしないで……それより、近づかないでくれ。ごめんよ、君は全然悪くないんだけど、俺はなぜだか狼獣人って苦手でさ。ちょっと離れてよ」
あまりの衝撃に、言葉が出てこなかった。狼獣人が苦手……近づかないでくれ……離れてよ……クインシーの発した言葉が、グルグル頭の中をループする。
気づけば、クインシーは目の前からいなくなっていた。俺は耳を伏せ、尻尾を下げ、肩を落として校舎を後にした……
あの時はもう、二度とクインを伴侶に迎えることができないのではと、絶望したものだが……念願叶って先日、ついに彼と身も心も結ばれた。
本当に夢のような出来事だ。いつ彼の気が変わってもいいように、武術を極め、出世街道を登り、社交界での振る舞いを磨いてきたわけだが。
こうして無事に報われて、全力で頑張ってきた甲斐があった。想い続けていれば願いは叶うのだなと、神に感謝を捧げたい気分だ。
俺は腕の中で眠る彼を起こさないように、そっと稲穂色の髪を撫でた。
「……愛している、クイン」
何度愛を囁いても足りない。たくさん抱きたくて、抱いたらずっと繋がっていたくて、昨晩もずいぶん無理をさせてしまった。
素直になったクインは大層素晴らしい可愛らしさで、俺はなす術もなくとり乱し、彼の一挙一動に振り回されてしまった。
思い出すだけで尻尾が揺れてしまう……いけない、うるさくしたらクインが起きてしまうな。気合いを入れて尻尾の動きを止めた。
すう、すう、と規則的な寝息が聞こえる。寝息まで愛くるしいなんて、もはや反則ではないか。
「かわいいな……」
少しだけ……と、髪の先にキスを贈った。彼の金の睫毛がぴく、と震えたが、そのまま眠り続けている。
白く滑らかな頬にも、触れるだけのキスを落とした。無防備に眠り続ける様子を眺めて、あまりの可憐さに悶えた。
「なんてかわいいんだ……」
俺は気が済むまでクインにキスを贈ってから、しっかりと彼を腕の中に抱きしめて、幸せな眠りについた。
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カイルとイツキがイチャイチャしてる間に、クインシーはこんな波乱があったのですね!イツキにちょっかい出す遊びに慣れていそうなクインシーがこんなに純情だったなんて!
すごく素敵なカップル💕溺愛良き✨
一緒に暮らす頃にはヴィーって呼んであげるのかな(=^x^=)
Aiiroさん、ご感想ありがとうございます♪
本気の恋には疎いクインシーさん、実は純情でした♡
ヴィーって呼んでくれたら、またヴァレリオが尻尾を振って喜びそうですね(*´ω`*)
こんにちはしんちゃんままさーん✨ ご感想ありがとうございます♪
本編の方と照らしあわせると、なんとなーくどっちが勝ったのか推測できるようになっておりますが、読み通りですね(*´ω`*)👍🏻✨
ロバートはただ噛ませ犬扱いで出したのですが、クインシーに認めてほしくてキャンキャン吠えてる子なので、実は惚れてる……なんて設定あっても美味しいですね!!
ええ、彼はクインシーのことが好きだから吠えかかっているのかもしれません(*´∀`*)💕
退会済ユーザのコメントです
奏音さん、再びのご感想ありがとうございます(*^^*)
クインシーは匂いフェチで耳フェチです(*´ω`*)
ありがとうございます、毎日更新続けますね!!