友人だと思ってたヤツに実はクソデカ感情向けられていて、のこのこ家について行ったら逃げ損ねた話

兎騎かなで

文字の大きさ
上 下
2 / 5

2

しおりを挟む
 俺のしょぼくれた様子を見て、翔也は苦笑する。

「あー、落ちこんでるなあ」
「当たり前だろ」
「なになに、俺でよければ話聞くよ?」
「いや、いいよ」
「なんで。話すことで改善点とか見つかるかもしれないじゃん」

 改善点……見つかれば、また神崎さんに振り向いてもらえる未来もあるだろうか。

 翔也はドンと自分の胸を叩いた。

「いいから俺に話してみな? モテ男のテク、伝授してやるよ」
「うん……」

 神崎さんとした話の内容や、その時の自分の態度を話す。

 いい雰囲気になった時、緊張しすぎて手を握れなかったことを話すと、翔也はあちゃーと上を仰いで手で目を隠した。

「そりゃだめだぜ千草、全然なってない」
「わかってるよ……!」
「そういう時どうやったらいい雰囲気に持ちこめるのか、俺にはわかる。教えてやろうか?」
「わっ」

 急に翔也が手を握ってきた。恋人繋ぎでギュッとされた手は、何度か感触を確かめるように握りなおされる。

「手ちっちゃいなー」
「うるさい」

 背が八センチも違えば、手の大きさも違うのも当たり前だろう。コンプレックスなんだから、いちいち口に出さないでほしいな。

「うるさいじゃないだろ? 今千草は彼女役なんだから、そこは頬を染めて恥じらう場面だ」
「ええ……?」

 翔也プロデュースのトキメキ指南教室が、いつの間にか始まっていたらしい。

 唐突で行動が迅速な翔也についていくのは大変だが、そういうところはじっくり考えこむ俺にとって新鮮だ。

 彼女がときめく方法を教えてくれるらしいし、しばらく翔也にあわせてつきあってみることにする。

「で、こうやって親指で手の甲をなぞる。できるだけ優しく」
「……くすぐったい」
「だろ? わざとくすぐったいくらいの強さで撫でる。それで、彼女がなにか反応を返してきたら、ジッと目を見るんだ」

 翔也の言葉に従い視線をあわせた。ジッとこちらを見るダークブラウンの瞳は、思いの他真剣な色を帯びていた。

「……で、嫌がってなさそうだと思ったら、次の段階に進む」
「次って?」
「キス」

 翔也の顔が近づく。俺はぽかんと口を開けたままそれを見ていた。そっと唇と唇があわさり、ふわふわの柔らかい感触が残った……

「って、え? んん……!」

 友達同士でそこまでする必要ある!? 
 混乱して動けないでいると、翔也はなんと舌を入れてきた。

 これはもしかして、ディープキスとかいうやつか……!

「ぅぐ……ふぅんっ」

 がっつくように口の中を貪られて、鼻にかかったような甘い声が出てしまう。待って翔也、これはヤバいんじゃ……

「まっ、しょう……んっ、ん!」

 彼は情熱的に唇に吸いつき、逃げようとする俺の頭と腰に手を回して、ガッチリと固定した。

 口蓋を舐められ、ジュッと音を立てて吸われると、腰に甘い疼きが走る。や、マジでこれ以上は勃つからやめて……!

「千草……」
「っ、はあ、お前、なに……」
「好きだ」

 唇を濡らした色気たっぷりの翔也が、俺を射抜くように見据える。

 ドッと血流が身体中を、すごい勢いで巡りはじめた。高鳴る心臓の音がうるさい。

 まるで普段のふざけた様子とは別人の翔也から、視線が離せなかった。

 しばらく声もなく見つめあっていると、ヘラリと翔也が笑った。

「なーんてな。どうだ? ときめいたか?」
「おま……な、なんてことするんだ、急に……」
「だから、彼女を虜にする方法を教えてやってんだろ? それとも……恋に落ちちゃった? 俺に」

 翔也は俺の顎をクイっと指先で持ち上げる。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

お酒に酔って、うっかり幼馴染に告白したら

夏芽玉
BL
タイトルそのまんまのお話です。 テーマは『二行で結合』。三行目からずっとインしてます。 Twitterのお題で『お酒に酔ってうっかり告白しちゃった片想いくんの小説を書いて下さい』と出たので、勢いで書きました。 執着攻め(19大学生)×鈍感受け(20大学生)

多分前世から続いているふたりの追いかけっこ

雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け 《あらすじ》 高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。 桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。 蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

俺の指をちゅぱちゅぱする癖が治っていない幼馴染

海野
BL
 唯(ゆい)には幼いころから治らない癖がある。それは寝ている間無意識に幼馴染である相馬の指をくわえるというものだ。相馬(そうま)はいつしかそんな唯に自分から指を差し出し、興奮するようになってしまうようになり、起きる直前に慌ててトイレに向かい欲を吐き出していた。  ある日、いつもの様に指を唯の唇に当てると、彼は何故か狸寝入りをしていて…?

逃げるが勝ち

うりぼう
BL
美形強面×眼鏡地味 ひょんなことがきっかけで知り合った二人。 全力で追いかける強面春日と全力で逃げる地味眼鏡秋吉の攻防。

俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

BL
背も小さくて、オメガのようにフェロモンを振りまいてしまうアルファの睟。そんな特異体質のせいで、馬鹿なアルファに体を噛まれまくるある日、クラス委員の落合が………!!

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

処理中です...