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俺のしょぼくれた様子を見て、翔也は苦笑する。
「あー、落ちこんでるなあ」
「当たり前だろ」
「なになに、俺でよければ話聞くよ?」
「いや、いいよ」
「なんで。話すことで改善点とか見つかるかもしれないじゃん」
改善点……見つかれば、また神崎さんに振り向いてもらえる未来もあるだろうか。
翔也はドンと自分の胸を叩いた。
「いいから俺に話してみな? モテ男のテク、伝授してやるよ」
「うん……」
神崎さんとした話の内容や、その時の自分の態度を話す。
いい雰囲気になった時、緊張しすぎて手を握れなかったことを話すと、翔也はあちゃーと上を仰いで手で目を隠した。
「そりゃだめだぜ千草、全然なってない」
「わかってるよ……!」
「そういう時どうやったらいい雰囲気に持ちこめるのか、俺にはわかる。教えてやろうか?」
「わっ」
急に翔也が手を握ってきた。恋人繋ぎでギュッとされた手は、何度か感触を確かめるように握りなおされる。
「手ちっちゃいなー」
「うるさい」
背が八センチも違えば、手の大きさも違うのも当たり前だろう。コンプレックスなんだから、いちいち口に出さないでほしいな。
「うるさいじゃないだろ? 今千草は彼女役なんだから、そこは頬を染めて恥じらう場面だ」
「ええ……?」
翔也プロデュースのトキメキ指南教室が、いつの間にか始まっていたらしい。
唐突で行動が迅速な翔也についていくのは大変だが、そういうところはじっくり考えこむ俺にとって新鮮だ。
彼女がときめく方法を教えてくれるらしいし、しばらく翔也にあわせてつきあってみることにする。
「で、こうやって親指で手の甲をなぞる。できるだけ優しく」
「……くすぐったい」
「だろ? わざとくすぐったいくらいの強さで撫でる。それで、彼女がなにか反応を返してきたら、ジッと目を見るんだ」
翔也の言葉に従い視線をあわせた。ジッとこちらを見るダークブラウンの瞳は、思いの他真剣な色を帯びていた。
「……で、嫌がってなさそうだと思ったら、次の段階に進む」
「次って?」
「キス」
翔也の顔が近づく。俺はぽかんと口を開けたままそれを見ていた。そっと唇と唇があわさり、ふわふわの柔らかい感触が残った……
「って、え? んん……!」
友達同士でそこまでする必要ある!?
混乱して動けないでいると、翔也はなんと舌を入れてきた。
これはもしかして、ディープキスとかいうやつか……!
「ぅぐ……ふぅんっ」
がっつくように口の中を貪られて、鼻にかかったような甘い声が出てしまう。待って翔也、これはヤバいんじゃ……
「まっ、しょう……んっ、ん!」
彼は情熱的に唇に吸いつき、逃げようとする俺の頭と腰に手を回して、ガッチリと固定した。
口蓋を舐められ、ジュッと音を立てて吸われると、腰に甘い疼きが走る。や、マジでこれ以上は勃つからやめて……!
「千草……」
「っ、はあ、お前、なに……」
「好きだ」
唇を濡らした色気たっぷりの翔也が、俺を射抜くように見据える。
ドッと血流が身体中を、すごい勢いで巡りはじめた。高鳴る心臓の音がうるさい。
まるで普段のふざけた様子とは別人の翔也から、視線が離せなかった。
しばらく声もなく見つめあっていると、ヘラリと翔也が笑った。
「なーんてな。どうだ? ときめいたか?」
「おま……な、なんてことするんだ、急に……」
「だから、彼女を虜にする方法を教えてやってんだろ? それとも……恋に落ちちゃった? 俺に」
翔也は俺の顎をクイっと指先で持ち上げる。
「あー、落ちこんでるなあ」
「当たり前だろ」
「なになに、俺でよければ話聞くよ?」
「いや、いいよ」
「なんで。話すことで改善点とか見つかるかもしれないじゃん」
改善点……見つかれば、また神崎さんに振り向いてもらえる未来もあるだろうか。
翔也はドンと自分の胸を叩いた。
「いいから俺に話してみな? モテ男のテク、伝授してやるよ」
「うん……」
神崎さんとした話の内容や、その時の自分の態度を話す。
いい雰囲気になった時、緊張しすぎて手を握れなかったことを話すと、翔也はあちゃーと上を仰いで手で目を隠した。
「そりゃだめだぜ千草、全然なってない」
「わかってるよ……!」
「そういう時どうやったらいい雰囲気に持ちこめるのか、俺にはわかる。教えてやろうか?」
「わっ」
急に翔也が手を握ってきた。恋人繋ぎでギュッとされた手は、何度か感触を確かめるように握りなおされる。
「手ちっちゃいなー」
「うるさい」
背が八センチも違えば、手の大きさも違うのも当たり前だろう。コンプレックスなんだから、いちいち口に出さないでほしいな。
「うるさいじゃないだろ? 今千草は彼女役なんだから、そこは頬を染めて恥じらう場面だ」
「ええ……?」
翔也プロデュースのトキメキ指南教室が、いつの間にか始まっていたらしい。
唐突で行動が迅速な翔也についていくのは大変だが、そういうところはじっくり考えこむ俺にとって新鮮だ。
彼女がときめく方法を教えてくれるらしいし、しばらく翔也にあわせてつきあってみることにする。
「で、こうやって親指で手の甲をなぞる。できるだけ優しく」
「……くすぐったい」
「だろ? わざとくすぐったいくらいの強さで撫でる。それで、彼女がなにか反応を返してきたら、ジッと目を見るんだ」
翔也の言葉に従い視線をあわせた。ジッとこちらを見るダークブラウンの瞳は、思いの他真剣な色を帯びていた。
「……で、嫌がってなさそうだと思ったら、次の段階に進む」
「次って?」
「キス」
翔也の顔が近づく。俺はぽかんと口を開けたままそれを見ていた。そっと唇と唇があわさり、ふわふわの柔らかい感触が残った……
「って、え? んん……!」
友達同士でそこまでする必要ある!?
混乱して動けないでいると、翔也はなんと舌を入れてきた。
これはもしかして、ディープキスとかいうやつか……!
「ぅぐ……ふぅんっ」
がっつくように口の中を貪られて、鼻にかかったような甘い声が出てしまう。待って翔也、これはヤバいんじゃ……
「まっ、しょう……んっ、ん!」
彼は情熱的に唇に吸いつき、逃げようとする俺の頭と腰に手を回して、ガッチリと固定した。
口蓋を舐められ、ジュッと音を立てて吸われると、腰に甘い疼きが走る。や、マジでこれ以上は勃つからやめて……!
「千草……」
「っ、はあ、お前、なに……」
「好きだ」
唇を濡らした色気たっぷりの翔也が、俺を射抜くように見据える。
ドッと血流が身体中を、すごい勢いで巡りはじめた。高鳴る心臓の音がうるさい。
まるで普段のふざけた様子とは別人の翔也から、視線が離せなかった。
しばらく声もなく見つめあっていると、ヘラリと翔也が笑った。
「なーんてな。どうだ? ときめいたか?」
「おま……な、なんてことするんだ、急に……」
「だから、彼女を虜にする方法を教えてやってんだろ? それとも……恋に落ちちゃった? 俺に」
翔也は俺の顎をクイっと指先で持ち上げる。
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