理性崩壊ダンジョンで、俺を襲った悲劇〜〇〇しないと出られない部屋

兎騎かなで

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 ここが前人未到のダンジョンか……俺はブルリと身震いした。

 剣を主体に戦う俺は、魔力や霊の気配なんて感じとれないはずだが、それでもこの空間には恐怖を感じた。

「流石にビビってるみたいだな、ロイド」
「キーファ……だって、雰囲気ヤバくないか、ここ」
「まあな……なんつうか、怪しげだよな」

 紫とピンクが入り混じった毒々しい色の壁はぬるぬるしていて、湿度の高い空気が時々頬をうっそりと撫でるのがうっとうしい。

 前人未到のダンジョンに挑もう! と酒の勢いで決めたのは、軽率すぎたかもしれない。

 相棒のキーファと俺は、同時期に冒険者となった。意気投合した俺達は二人で組んで、ダンジョンに挑んでいる。

 金髪のキーファは弓、赤髪の俺は剣で戦い、最近は安定して稼げるようになってきたところだ。

 俺もキーファもまだまだ若手冒険者で、ついでに俺はまっさら新品の童貞だ……キーファくらい顔がよかったらなあ。まあコイツも童貞だろうけど。

 そんな俺がモテるためには、金と実力を得るしかない。

 背伸びして一攫千金狙ってみたいよな。初踏破すれば一躍有名になって金も稼げて、モテモテになれるはず! と選んだのがこのダンジョンだ。

 人呼んで、理性崩壊ダンジョン。恐ろしすぎて正気ではいられないと噂のダンジョンだ。

 最後まで踏破できた者はおらず、みな逃げ帰ってくるという。

 ある者はげっそりとやつれ、ある者はフラフラと立てないほど消耗し、またある者は廃人のようになって帰ってくると噂されている。

 俺達の知り合いも、例のダンジョンから逃げ帰ってきた一人だ。

 だが、ヤバいから絶対行かない方がいいと言っていたアイツは、時々理性崩壊ダンジョンに潜っているらしい。

 しかも帰ってくると、妙にスッキリとした幸せそうな顔をしている時がある。恍惚としているというか……理由は聞いても教えてくれなかった。

 これは臭うよな……きっとなにか、俺達には教えたくない美味しい話があるに違いない。

「おいロイド、そこに突起があるぞ、気をつけろ」
「あ、やべ」

 キーファが教えてくれた突起を避けて通る。長さ二十センチ、直径五センチはありそうな巨大な突起が、そこら中に生えているのだ。

 こんなんの上に尻餅でもついちまったら、すごく痛そうだ。ぬるぬるして滑りやすい床を、キーファと二人で協力しながら慎重に進んだ。

 ……俺達が通り過ぎた後で、突起がぬらりと揺らめいていたが。俺達はそれを知るよしもなかった。

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