のんびり屋の熊獣人は、ツンデレ猫獣人を可愛がりたくてしょうがない

兎騎かなで

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 真っ暗な部屋の中で、エイダンの吐息と熱い体に没頭していたい。私の好みを知っているエイダンは、けれど今日は困ったように首を傾げた。

「たまにはセルジュの顔を、明るい中で見ながらしたいんだけど、ダメ?」
「駄目です。お断りします」
「そこをなんとか」
「嫌です」
「えー」

 しょぼんと肩を落とすエイダンに、そわそわと落ち着かない気持ちになる。

 でもだからって、感じきってあられもないことになっている様子を、見られながらするなんて……私には耐えられない。

 エイダンの腕の中から抜けだし、カーテンをピッチリ閉める。

 何重にも布を重ねて、留め具にも工夫を凝らした特製カーテンは、部屋の中を真っ暗にしてくれた。

 これで夜目のきく私はともかく、彼は見えなくなったことだろう。

 しなやかな足取りで素早くベッドに戻ると、しょうがないなと言いたげにクスリと笑ったエイダンが、私に覆い被さってきた。

 エイダンはからかうような口調で私に告げる。

「お坊ちゃま、準備はよろしいですか?」
「何を言っているんです、もうお坊ちゃまじゃありませんよ」
「うん、知ってる」

 彼と一緒に王都に来る時に、故郷は捨ててきた。家族の期待より、裕福な商家の跡取りという身分より、なにより彼が大切だったから。

「ふ……ぅ」

 唇をちゅうちゅうと吸うエイダンの、慈しむような舌使いに、きゅんと下腹部が反応する。

 同時に胸を大きな手のひらで撫でられて、期待で胸が震えた。上着をたくしあげて侵入した手は、手探りで胸の突起を探りあてる。

「んっ……ん……」

 陶然とした気分で快感に身を委ねながら、エイダンの肩に腕を回す。彼がクスッと笑った気配がして、唇を離した。

「セルジュ、かわいい」

 エイダンの語彙力は、知的な私とは違って貧弱だ。すぐに人のことをかわいいと言うし、それしか知らないのかと思うほど、その言葉をくり返す。

 口では呆れたように揶揄しながらも、私はその稚拙な褒め言葉を聞くのがとても好きだ。確かに愛されていると感じるから。

 角度を変えて降りてきた顔が、私の眼鏡とぶつかった。エイダンにそっと外されてしまう。

「あ、なに勝手に人の物を取ってるんですか」
「だってキスするのに邪魔でしょう? どうせ見えないんだからいいよね」

 違いますよ私は貴方の欲にギラつく表情も熱心に胸を弄る様子も、全てガン見して心に刻んでいるんです! とは反論できなくて、口をつぐむ。

 セルジュばっかり夜目が効くからって、見てるのずるいよなんて言われたら、窮地に追いこまれるのは私の方だ。

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