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エイダンは軽い行水だけして、風呂から上がってきた。
早くしてほしいとは思ったがあまりにも早いので、疑いの目でジロジロと背の高い立派な体を見据える。
「貴方ちゃんと洗ったんでしょうね? 土埃や汗の匂いが残っていたら承知しませんよ」
「大丈夫、ちゃんと洗ったよ。早くセルジュをちゃんと抱きしめたかったから、急いできたんだ」
「な……は、恥ずかしい人ですね。次は私がシャワーを使うから、さっさと服を着てください」
顔に熱が昇った私の姿を、エイダンは満足気に見つめる。彼は声をワントーン低くして、誘うように呟いた。
「もっと見ててくれてもいいんだけどな」
「黙りなさい」
パンツとズボンだけ身につけた彼を半ば追いだすようにして、脱衣所にこもった。
彼の逞しい体はうっとりするほど好きだけれど、たくさんの傷跡が残った体は、正直まともに見るのが怖い。
暗闇の中で向きあう方が、まだ見えにくくて安心だ。
念入りに体中を洗って、自慢の猫耳もしっかり洗い、毛並みに沿って梳かした。
それから、不浄の穴もよくよく綺麗にした。顔から火がでる思いをしながらも、潤滑油を注入しておく。
「んっ……」
これでよし。疲れているであろうエイダンを煩わせずに済む。それに何より……私がもう、彼と抱きあいたくて我慢がきかないんだ。
しっかり服を着こんで寝室に戻ると、とろんと目蓋を重くしていたエイダンが、パァッと顔を輝かせた。
「セルジュ! こっちに来て、早くおいで」
「待てができない犬のようですね貴方は」
「僕は熊獣人だ、セルジュも知っているでしょう? 今は他の人の話をしないで」
「人の話をしているわけでは……ちょっと貴方、シャツはどうしたんです」
上半身を露出した、半裸のままのエイダンに小言を漏らすと、彼は髭を剃ってさっぱりした頬を、気まずげに指先で掻いた。
「もう待ちきれなくって。どうせすぐ脱ぐんだからいいでしょ?」
「だから貴方のそういうところが……っわ!」
エイダンに手を引っ張られて、腕の中に引きこまれた。
頭上の顔を抗議の気持ちをこめて見つめると、小鳥がついばむようなキスが降ってくる。
「んっ」
「心配してくれるのは嬉しいけど、今はもっと違う声が聞きたいな」
「や、待って、っ」
「待てない」
胸元を押して離れようとする私を無視して、エイダンは情熱的に口を吸った。歯列を割って侵入した舌は、無遠慮に口中を蹂躙する。
注ぎこまれた唾液をこくんと飲みこんで、抵抗する手の力がふにゃふにゃになる頃に、やっと解放された。
「あ、待てと……言ったでしょう、ふ……」
「セルジュがかわいいから、待ちきれなかったんだ」
「貴方、かわいいと言えばなんでも許されると思ったら大間違いですよ。するならカーテンを閉めてからにしてください」
外はまだ昼間で、薄いレースカーテンで視界は遮られているものの、部屋の中は十分に明るい。
早くしてほしいとは思ったがあまりにも早いので、疑いの目でジロジロと背の高い立派な体を見据える。
「貴方ちゃんと洗ったんでしょうね? 土埃や汗の匂いが残っていたら承知しませんよ」
「大丈夫、ちゃんと洗ったよ。早くセルジュをちゃんと抱きしめたかったから、急いできたんだ」
「な……は、恥ずかしい人ですね。次は私がシャワーを使うから、さっさと服を着てください」
顔に熱が昇った私の姿を、エイダンは満足気に見つめる。彼は声をワントーン低くして、誘うように呟いた。
「もっと見ててくれてもいいんだけどな」
「黙りなさい」
パンツとズボンだけ身につけた彼を半ば追いだすようにして、脱衣所にこもった。
彼の逞しい体はうっとりするほど好きだけれど、たくさんの傷跡が残った体は、正直まともに見るのが怖い。
暗闇の中で向きあう方が、まだ見えにくくて安心だ。
念入りに体中を洗って、自慢の猫耳もしっかり洗い、毛並みに沿って梳かした。
それから、不浄の穴もよくよく綺麗にした。顔から火がでる思いをしながらも、潤滑油を注入しておく。
「んっ……」
これでよし。疲れているであろうエイダンを煩わせずに済む。それに何より……私がもう、彼と抱きあいたくて我慢がきかないんだ。
しっかり服を着こんで寝室に戻ると、とろんと目蓋を重くしていたエイダンが、パァッと顔を輝かせた。
「セルジュ! こっちに来て、早くおいで」
「待てができない犬のようですね貴方は」
「僕は熊獣人だ、セルジュも知っているでしょう? 今は他の人の話をしないで」
「人の話をしているわけでは……ちょっと貴方、シャツはどうしたんです」
上半身を露出した、半裸のままのエイダンに小言を漏らすと、彼は髭を剃ってさっぱりした頬を、気まずげに指先で掻いた。
「もう待ちきれなくって。どうせすぐ脱ぐんだからいいでしょ?」
「だから貴方のそういうところが……っわ!」
エイダンに手を引っ張られて、腕の中に引きこまれた。
頭上の顔を抗議の気持ちをこめて見つめると、小鳥がついばむようなキスが降ってくる。
「んっ」
「心配してくれるのは嬉しいけど、今はもっと違う声が聞きたいな」
「や、待って、っ」
「待てない」
胸元を押して離れようとする私を無視して、エイダンは情熱的に口を吸った。歯列を割って侵入した舌は、無遠慮に口中を蹂躙する。
注ぎこまれた唾液をこくんと飲みこんで、抵抗する手の力がふにゃふにゃになる頃に、やっと解放された。
「あ、待てと……言ったでしょう、ふ……」
「セルジュがかわいいから、待ちきれなかったんだ」
「貴方、かわいいと言えばなんでも許されると思ったら大間違いですよ。するならカーテンを閉めてからにしてください」
外はまだ昼間で、薄いレースカーテンで視界は遮られているものの、部屋の中は十分に明るい。
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