のんびり屋の熊獣人は、ツンデレ猫獣人を可愛がりたくてしょうがない

兎騎かなで

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 勝手に機嫌よくクネクネとうごめく尻尾は、カウンターの中にしっかり隠しているから、いくらエイダンの上背があっても見えないはず。

「お褒めいただきありがとうございます。ギルド内ではそれ以上の好意を表す言葉は、口説き文句とみなし、鉄槌を下しますから」
「相変わらずお堅いねえ」
「そうよ、私達は気にしないのに。むしろもっとイチャついてくれてもいいのよ」

 背後から野次が飛んでくるが、もう無視してしまおう。

 恋愛はプライベートで楽しめばいい、今は仕事の時間。ちょっとエイダンに褒められたくらいで、嬉しくなってる場合じゃない。

 コホンと咳払いしてから、会話を切り替えた。

「それで今回の探索では、無茶はしなかったでしょうね?」
「えーっと……うん」
「なんですか、その歯切れの悪い返事は」
「まあ、その、それなりだよ」
「疑わしいことこの上ないですね。そんなことじゃ命を落とすのも時間の問題ですよ」

 エイダンが死ぬなんて考えたくもなくて、言葉は棘を帯び口調は辛辣になる。

 絶対に彼に死んでほしくないと思うたびに、私の小言は口酸っぱくなり、彼を詰るような言葉を吐いてしまう。

「いくら強かろうと、そうやって実力があると驕った探索者が帰ってこないなんて話、ざらにあるんですよ」
「そうだよね」
「わかっているなら自重したらどうなんです。もし死んだら葬式で盛大に笑って、馬鹿にしてやります」

 だから絶対に死なないで。危ないことはしないでほしい。

 できれば探索者なんてやめてもらって、故郷の森で前みたいに過ごしたい。

 貴方が命をかける探索者じゃなくて、ただの木こりで、私がそんな貴方にちょっかいをかけにいく、そういう生活に戻りたい…….

 キュッと唇を噛みしめると、エイダンは嬉しそうに頬を緩めた。

「いつも僕のこと心配してくれてありがとう、セルジュ」
「なっ……違います、都合よく解釈しないでください。無茶をする貴方なんて、いつかダンジョンの藻屑と化しますよと警告してるんです」
「素直じゃないなあセルジュは。でもそんなところも好きだよ」
「あああ貴方はこんな公共の場で何を言いだすんですか、恥を知りなさい恥を」

 だから仕事中だと言っているでしょう、仕事中に愛の言葉をささやくのはルール違反! そのくらい常識でしょう!?

「ところでこの後時間ある?」
「人の話を聞きなさい!」

 私ではなく、あえてカウンター奥の二人に声をかけるエイダン。
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