のんびり屋の熊獣人は、ツンデレ猫獣人を可愛がりたくてしょうがない

兎騎かなで

文字の大きさ
上 下
2 / 10

2

しおりを挟む
 勝手に機嫌よくクネクネとうごめく尻尾は、カウンターの中にしっかり隠しているから、いくらエイダンの上背があっても見えないはず。

「お褒めいただきありがとうございます。ギルド内ではそれ以上の好意を表す言葉は、口説き文句とみなし、鉄槌を下しますから」
「相変わらずお堅いねえ」
「そうよ、私達は気にしないのに。むしろもっとイチャついてくれてもいいのよ」

 背後から野次が飛んでくるが、もう無視してしまおう。

 恋愛はプライベートで楽しめばいい、今は仕事の時間。ちょっとエイダンに褒められたくらいで、嬉しくなってる場合じゃない。

 コホンと咳払いしてから、会話を切り替えた。

「それで今回の探索では、無茶はしなかったでしょうね?」
「えーっと……うん」
「なんですか、その歯切れの悪い返事は」
「まあ、その、それなりだよ」
「疑わしいことこの上ないですね。そんなことじゃ命を落とすのも時間の問題ですよ」

 エイダンが死ぬなんて考えたくもなくて、言葉は棘を帯び口調は辛辣になる。

 絶対に彼に死んでほしくないと思うたびに、私の小言は口酸っぱくなり、彼を詰るような言葉を吐いてしまう。

「いくら強かろうと、そうやって実力があると驕った探索者が帰ってこないなんて話、ざらにあるんですよ」
「そうだよね」
「わかっているなら自重したらどうなんです。もし死んだら葬式で盛大に笑って、馬鹿にしてやります」

 だから絶対に死なないで。危ないことはしないでほしい。

 できれば探索者なんてやめてもらって、故郷の森で前みたいに過ごしたい。

 貴方が命をかける探索者じゃなくて、ただの木こりで、私がそんな貴方にちょっかいをかけにいく、そういう生活に戻りたい…….

 キュッと唇を噛みしめると、エイダンは嬉しそうに頬を緩めた。

「いつも僕のこと心配してくれてありがとう、セルジュ」
「なっ……違います、都合よく解釈しないでください。無茶をする貴方なんて、いつかダンジョンの藻屑と化しますよと警告してるんです」
「素直じゃないなあセルジュは。でもそんなところも好きだよ」
「あああ貴方はこんな公共の場で何を言いだすんですか、恥を知りなさい恥を」

 だから仕事中だと言っているでしょう、仕事中に愛の言葉をささやくのはルール違反! そのくらい常識でしょう!?

「ところでこの後時間ある?」
「人の話を聞きなさい!」

 私ではなく、あえてカウンター奥の二人に声をかけるエイダン。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

異世界へ下宿屋と共にトリップしたようで。

やの有麻
BL
山に囲まれた小さな村で下宿屋を営んでる倉科 静。29歳で独身。 昨日泊めた外国人を玄関の前で見送り家の中へ入ると、疲労が溜まってたのか急に眠くなり玄関の前で倒れてしまった。そして気付いたら住み慣れた下宿屋と共に異世界へとトリップしてしまったらしい!・・・え?どーゆうこと? 前編・後編・あとがきの3話です。1話7~8千文字。0時に更新。 *ご都合主義で適当に書きました。実際にこんな村はありません。 *フィクションです。感想は受付ますが、法律が~国が~など現実を突き詰めないでください。あくまで私が描いた空想世界です。 *男性出産関連の表現がちょっと入ってます。苦手な方はオススメしません。

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

捨て猫はエリート騎士に溺愛される

135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。 目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。 お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。 京也は総受け。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。

えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた! どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。 そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?! いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?! 会社員男性と、異世界獣人のお話。 ※6話で完結します。さくっと読めます。

騎士団長を咥えたドラゴンを団長の息子は追いかける!!

ミクリ21
BL
騎士団長がドラゴンに咥えられて、連れ拐われた! そして、団長の息子がそれを追いかけたーーー!! 「父上返せーーー!!」

処理中です...