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第三章 魔人救済編

252 プレゼントのお返し

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 意外と平常運転で花火を見上げていたカイルと共に、屋敷の様子を見守る。二階のバルコニーから泡を食った様子で、ノッポとチビが出てきた。

「あれ? ここノッポの屋敷だよな?」
「仲がいいという噂は本当だったようだ」

 黒幕が顔を見せたところで、もう一発打ち上げてやった。

 ひゅーるるる……ピカッドカン! ノッポは腰を抜かし、チビはバルコニーから身を乗り出す勢いで、俺達の方を見上げている。

「よお、お前ら。いい夜だな!」
「な、な、なっ……お、お前は……!」
「夜風に当たろうと空中散歩をしていたら、丁度アンタらの屋敷を見つけたんだ。せっかくだからお前らにも、新作魔法の花火を見せてやろうと思ってさ!」

 声を張り上げながらもう一発打ち上げる。ノッポは頭を抱えて丸くなってしまった。

「どうだ? 綺麗だろ!」

 チビの方はめげずに、果敢に俺達を指差して怒鳴り返してきた。

「おま、お前ぇ!? おい、このチビ! これ以上やるなら、威嚇攻撃と見なすぞ!」
「アンタにチビとは言われたくねえな」

 俺よりちょっとばかし小さいだろ、アンタは。俺はハハハッと、わざとらしく笑い飛ばしてみせた。

「アンタらが素敵なプレゼントを毎日のように寄越すから、そのお返しだよ!」
「い、いらん! そんな物騒な物!!」
「それならアンタも大人しくしとけよ。それとも花火を攻撃とみなして、反撃でもしてみるか? 受けてたつぜ」

 不敵に笑って凄んでみせる。ついでに威圧を飛ばしてみせると、彼らは顔を真っ青にした。

 それでもシラを切るつもりなのか、チビはどもりながらも言い返してくる。

「プッ、プレゼントとは、なんのことだ……? とんと覚えがないぞ」
「毎晩欠かさず送ってくるのにか? ボケるには早すぎるだろう、おっさん」
「ボケているのはお前の方ではないか!? 貴様……」
「おい」

 黙って成り行きを見ていたカイルが、そこで突如口を開いた。

「これ以上イツキのことを愚弄するのであれば、不敬罪を犯したと見做し、俺がお前を斬る」
「ひ……!」

 カイルの迫力ある表情と威圧は、チビを萎縮させるのに十分な威力だったらしい。

 ノッポとチビは、お互いに身を寄せあって震えている。こんだけ脅しておけば、しばらくは悪さしねえよな。

 俺がにっこりと笑ってみせると、二人はより震えあがった。

「じゃ、俺らはもう行くな。アンタらも悪だくみばっかしてないで、有意義な夜を過ごしてくれ。じゃあな」

 これで任務完了だ。ついでというか、こちらが本命なんだが、ヤツらが花火に気をとられているうちに、屋敷の魔人一人一人にこっそりマーキングをしておいた。

 コイツらの動きを追えば、近いうちに悪事の尻尾を出すだろう。ふう、我ながらいい仕事をした。

 一足飛びで王の寝室に飛ぶ。今度は刺客が潜んでいたりしなかった。新しい扉番はちゃんと仕事をこなすヤツらしい。

「なかなか刺激的な夜の散歩だったな」
「面白い見せ物だった。花火というのはいいものだな、気に入った」
「本当か? じゃあまたやろうぜ」

 寝衣に着替えてベッドに寝転び、うーんと伸びをする。

「はあー……これで落ち着いてカイルとイチャイチャできっかな?」
「なんだ、俺との時間のためにあんな茶番を演じたのか?」
「まあ、うん、それもなくはない……」
「はっきり言ってくれないか? なあイツキ」
「ちょ、近いって! アンタは自分の顔がいいのを自覚してくれってば」
「お前に有効だと思うからこそ、武器として活用しているのだが?」
「くっそ確信犯かよ、勝てっこねえこんなの……!」

 まんまと美味しく、魔力的な意味でも性的な意味でもいただかれながら、夜は更けていった。


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