113 / 178
第三章 魔人救済編
252 プレゼントのお返し
しおりを挟む
意外と平常運転で花火を見上げていたカイルと共に、屋敷の様子を見守る。二階のバルコニーから泡を食った様子で、ノッポとチビが出てきた。
「あれ? ここノッポの屋敷だよな?」
「仲がいいという噂は本当だったようだ」
黒幕が顔を見せたところで、もう一発打ち上げてやった。
ひゅーるるる……ピカッドカン! ノッポは腰を抜かし、チビはバルコニーから身を乗り出す勢いで、俺達の方を見上げている。
「よお、お前ら。いい夜だな!」
「な、な、なっ……お、お前は……!」
「夜風に当たろうと空中散歩をしていたら、丁度アンタらの屋敷を見つけたんだ。せっかくだからお前らにも、新作魔法の花火を見せてやろうと思ってさ!」
声を張り上げながらもう一発打ち上げる。ノッポは頭を抱えて丸くなってしまった。
「どうだ? 綺麗だろ!」
チビの方はめげずに、果敢に俺達を指差して怒鳴り返してきた。
「おま、お前ぇ!? おい、このチビ! これ以上やるなら、威嚇攻撃と見なすぞ!」
「アンタにチビとは言われたくねえな」
俺よりちょっとばかし小さいだろ、アンタは。俺はハハハッと、わざとらしく笑い飛ばしてみせた。
「アンタらが素敵なプレゼントを毎日のように寄越すから、そのお返しだよ!」
「い、いらん! そんな物騒な物!!」
「それならアンタも大人しくしとけよ。それとも花火を攻撃とみなして、反撃でもしてみるか? 受けてたつぜ」
不敵に笑って凄んでみせる。ついでに威圧を飛ばしてみせると、彼らは顔を真っ青にした。
それでもシラを切るつもりなのか、チビはどもりながらも言い返してくる。
「プッ、プレゼントとは、なんのことだ……? とんと覚えがないぞ」
「毎晩欠かさず送ってくるのにか? ボケるには早すぎるだろう、おっさん」
「ボケているのはお前の方ではないか!? 貴様……」
「おい」
黙って成り行きを見ていたカイルが、そこで突如口を開いた。
「これ以上イツキのことを愚弄するのであれば、不敬罪を犯したと見做し、俺がお前を斬る」
「ひ……!」
カイルの迫力ある表情と威圧は、チビを萎縮させるのに十分な威力だったらしい。
ノッポとチビは、お互いに身を寄せあって震えている。こんだけ脅しておけば、しばらくは悪さしねえよな。
俺がにっこりと笑ってみせると、二人はより震えあがった。
「じゃ、俺らはもう行くな。アンタらも悪だくみばっかしてないで、有意義な夜を過ごしてくれ。じゃあな」
これで任務完了だ。ついでというか、こちらが本命なんだが、ヤツらが花火に気をとられているうちに、屋敷の魔人一人一人にこっそりマーキングをしておいた。
コイツらの動きを追えば、近いうちに悪事の尻尾を出すだろう。ふう、我ながらいい仕事をした。
一足飛びで王の寝室に飛ぶ。今度は刺客が潜んでいたりしなかった。新しい扉番はちゃんと仕事をこなすヤツらしい。
「なかなか刺激的な夜の散歩だったな」
「面白い見せ物だった。花火というのはいいものだな、気に入った」
「本当か? じゃあまたやろうぜ」
寝衣に着替えてベッドに寝転び、うーんと伸びをする。
「はあー……これで落ち着いてカイルとイチャイチャできっかな?」
「なんだ、俺との時間のためにあんな茶番を演じたのか?」
「まあ、うん、それもなくはない……」
「はっきり言ってくれないか? なあイツキ」
「ちょ、近いって! アンタは自分の顔がいいのを自覚してくれってば」
「お前に有効だと思うからこそ、武器として活用しているのだが?」
「くっそ確信犯かよ、勝てっこねえこんなの……!」
まんまと美味しく、魔力的な意味でも性的な意味でもいただかれながら、夜は更けていった。
「あれ? ここノッポの屋敷だよな?」
「仲がいいという噂は本当だったようだ」
黒幕が顔を見せたところで、もう一発打ち上げてやった。
ひゅーるるる……ピカッドカン! ノッポは腰を抜かし、チビはバルコニーから身を乗り出す勢いで、俺達の方を見上げている。
「よお、お前ら。いい夜だな!」
「な、な、なっ……お、お前は……!」
「夜風に当たろうと空中散歩をしていたら、丁度アンタらの屋敷を見つけたんだ。せっかくだからお前らにも、新作魔法の花火を見せてやろうと思ってさ!」
声を張り上げながらもう一発打ち上げる。ノッポは頭を抱えて丸くなってしまった。
「どうだ? 綺麗だろ!」
チビの方はめげずに、果敢に俺達を指差して怒鳴り返してきた。
「おま、お前ぇ!? おい、このチビ! これ以上やるなら、威嚇攻撃と見なすぞ!」
「アンタにチビとは言われたくねえな」
俺よりちょっとばかし小さいだろ、アンタは。俺はハハハッと、わざとらしく笑い飛ばしてみせた。
「アンタらが素敵なプレゼントを毎日のように寄越すから、そのお返しだよ!」
「い、いらん! そんな物騒な物!!」
「それならアンタも大人しくしとけよ。それとも花火を攻撃とみなして、反撃でもしてみるか? 受けてたつぜ」
不敵に笑って凄んでみせる。ついでに威圧を飛ばしてみせると、彼らは顔を真っ青にした。
それでもシラを切るつもりなのか、チビはどもりながらも言い返してくる。
「プッ、プレゼントとは、なんのことだ……? とんと覚えがないぞ」
「毎晩欠かさず送ってくるのにか? ボケるには早すぎるだろう、おっさん」
「ボケているのはお前の方ではないか!? 貴様……」
「おい」
黙って成り行きを見ていたカイルが、そこで突如口を開いた。
「これ以上イツキのことを愚弄するのであれば、不敬罪を犯したと見做し、俺がお前を斬る」
「ひ……!」
カイルの迫力ある表情と威圧は、チビを萎縮させるのに十分な威力だったらしい。
ノッポとチビは、お互いに身を寄せあって震えている。こんだけ脅しておけば、しばらくは悪さしねえよな。
俺がにっこりと笑ってみせると、二人はより震えあがった。
「じゃ、俺らはもう行くな。アンタらも悪だくみばっかしてないで、有意義な夜を過ごしてくれ。じゃあな」
これで任務完了だ。ついでというか、こちらが本命なんだが、ヤツらが花火に気をとられているうちに、屋敷の魔人一人一人にこっそりマーキングをしておいた。
コイツらの動きを追えば、近いうちに悪事の尻尾を出すだろう。ふう、我ながらいい仕事をした。
一足飛びで王の寝室に飛ぶ。今度は刺客が潜んでいたりしなかった。新しい扉番はちゃんと仕事をこなすヤツらしい。
「なかなか刺激的な夜の散歩だったな」
「面白い見せ物だった。花火というのはいいものだな、気に入った」
「本当か? じゃあまたやろうぜ」
寝衣に着替えてベッドに寝転び、うーんと伸びをする。
「はあー……これで落ち着いてカイルとイチャイチャできっかな?」
「なんだ、俺との時間のためにあんな茶番を演じたのか?」
「まあ、うん、それもなくはない……」
「はっきり言ってくれないか? なあイツキ」
「ちょ、近いって! アンタは自分の顔がいいのを自覚してくれってば」
「お前に有効だと思うからこそ、武器として活用しているのだが?」
「くっそ確信犯かよ、勝てっこねえこんなの……!」
まんまと美味しく、魔力的な意味でも性的な意味でもいただかれながら、夜は更けていった。
68
お気に入りに追加
4,054
あなたにおすすめの小説
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
不憫王子に転生したら、獣人王太子の番になりました
織緒こん
BL
日本の大学生だった前世の記憶を持つクラフトクリフは異世界の王子に転生したものの、母親の身分が低く、同母の姉と共に継母である王妃に虐げられていた。そんなある日、父王が獣人族の国へ戦争を仕掛け、あっという間に負けてしまう。戦勝国の代表として乗り込んできたのは、なんと獅子獣人の王太子のリカルデロ! 彼は臣下にクラフトクリフを戦利品として側妃にしたらどうかとすすめられるが、王子があまりに痩せて見すぼらしいせいか、きっぱり「いらない」と断る。それでもクラフトクリフの処遇を決めかねた臣下たちは、彼をリカルデロの後宮に入れた。そこで、しばらく世話をされたクラフトクリフはやがて健康を取り戻し、再び、リカルデロと会う。すると、何故か、リカルデロは突然、クラフトクリフを溺愛し始めた。リカルデロの態度に心当たりのないクラフトクリフは情熱的な彼に戸惑うばかりで――!?
主人公に「消えろ」と言われたので
えの
BL
10歳になったある日、前世の記憶というものを思い出した。そして俺が悪役令息である事もだ。この世界は前世でいう小説の中。断罪されるなんてゴメンだ。「消えろ」というなら望み通り消えてやる。そして出会った獣人は…。※地雷あります気をつけて!!タグには入れておりません!何でも大丈夫!!バッチコーイ!!の方のみ閲覧お願いします。
他のサイトで掲載していました。
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。