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第三章 魔人救済編
250 ずれていくものと合致するもの
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色々と皮算用をしていると、カイルが俺の顔をのぞきこんできた。
「おいイツキ、また仕事のことを考えているだろう」
「あーいや、仕事っちゃ仕事の一部だけどさ……」
カイルの前で意識をよそに飛ばしていたらしい。気まずげに視線を逸らすと、カイルの指先がそっと俺の頬を撫でた。
「今はデート中だろう? 俺のことだけを考えてくれないか」
ドキッとして思わず顔を上げると、紫みを帯びた柘榴色の瞳と目があった。
愛しげな視線に、ほのかに寂しそうな色が混ざっているのを見つけて、たまらない気持ちになりカイルの手をとる。
「ごめん、そうするよ」
「ああ、ぜひそうしてくれ」
話がいち段落したところで、店員がサラダらしき料理を持ってやってきた。
「おお、これは……」
「まるで芸術作品のようだな」
マゼンダ色に着色されたソースが目を引く。山菜は大ぶりにざく切りにされて、前衛的な角度で盛られている。
「食べられるんだよな?」
「そのはずだが」
カイルが小皿にとってわけてくれたので、まずはソースをちろりと舐めてみる。
「酸っぱ! 酸っぱさしかないぞ」
「ふむ……まあまあだ」
「アンタにはどういう味に感じるんだ?」
「甘酸っぱくて旨味があり、魔力が濃厚だ」
きっと永遠に、カイルと食の好みが被ることはないな……カイルは俺の魔力が一番好きらしいから、そもそも味わえないし。
「俺の魔力とどっちが美味い?」
「イツキの魔力に決まっている」
ほらな。即答されたぜ。カイルは意味深な流し目を送ってきた。
「わざと聞くってことは、食べられたいということか?」
「ちげーよ。ほら、続き食おうぜ」
こんなところで色気を出すのはやめてくれよ。うっかり頬が赤くなっちまったら、魔王としての威厳に関わるだろ?
さっきから、もしかしてあれ魔王様じゃね? いや、まさか魔王様がこんなところにくるはずない、みたいな噂話が耳に入ってくるんだから。
カイルの方を見ないようにしながら、ぜんまいのような形をした緑色の生山菜を、勇気を出して口にした。
んー……ああ、これはなんとか食べれるわ」
「山菜は普通だな。美味くも不味くもない」
店の人に失礼な感想を口にしながら、二人で分けあって魔人風サラダを完食した。
「どうだ、もう一軒いくか」
「次は屋台の方をのぞいてみようぜ」
下町の方まで行くと、色とりどりのジュースを売っている、改造魔車もどきの店があった。さっそく一杯購入してみる。
「黄色いのをくれ」
「はいよ」
マンゴーのような色の飲み物が、一番いい匂いがしたので買ってみた。果たして飲める代物なのか……
まずはカイルが一口味見をした。男らしい喉仏が、ゴクリと動くのを見守る。
「悪くないな」
「へえ? 俺にも飲ませてくれよ」
カップを受け取りちょびっと舐めてみる。バナナとメロンを混ぜたような味がして、普通に美味しかった。
「あ、これは美味しい」
「ほう。初めて食の好みがあったようだ」
「本当だな」
二人でかわりばんこにジュースを味わった。カイルと食の好みがあうことはないだろうって、諦めてた矢先のことだからけっこう嬉しいな。
「やってよかったわ」
「何がだ」
「魔人の國の食糧改革。そのお陰でこうしてカイルと同じものを、美味しいって味わえるんだから」
「……そうだな」
カイルはフッと優しげに微笑んで、俺に手を絡めた。
「次はどこに行こうか」
「そうだなあ、じゃあ……」
俺達は日が暮れるまで街を練り歩いて、デートを楽しんだ。
「おいイツキ、また仕事のことを考えているだろう」
「あーいや、仕事っちゃ仕事の一部だけどさ……」
カイルの前で意識をよそに飛ばしていたらしい。気まずげに視線を逸らすと、カイルの指先がそっと俺の頬を撫でた。
「今はデート中だろう? 俺のことだけを考えてくれないか」
ドキッとして思わず顔を上げると、紫みを帯びた柘榴色の瞳と目があった。
愛しげな視線に、ほのかに寂しそうな色が混ざっているのを見つけて、たまらない気持ちになりカイルの手をとる。
「ごめん、そうするよ」
「ああ、ぜひそうしてくれ」
話がいち段落したところで、店員がサラダらしき料理を持ってやってきた。
「おお、これは……」
「まるで芸術作品のようだな」
マゼンダ色に着色されたソースが目を引く。山菜は大ぶりにざく切りにされて、前衛的な角度で盛られている。
「食べられるんだよな?」
「そのはずだが」
カイルが小皿にとってわけてくれたので、まずはソースをちろりと舐めてみる。
「酸っぱ! 酸っぱさしかないぞ」
「ふむ……まあまあだ」
「アンタにはどういう味に感じるんだ?」
「甘酸っぱくて旨味があり、魔力が濃厚だ」
きっと永遠に、カイルと食の好みが被ることはないな……カイルは俺の魔力が一番好きらしいから、そもそも味わえないし。
「俺の魔力とどっちが美味い?」
「イツキの魔力に決まっている」
ほらな。即答されたぜ。カイルは意味深な流し目を送ってきた。
「わざと聞くってことは、食べられたいということか?」
「ちげーよ。ほら、続き食おうぜ」
こんなところで色気を出すのはやめてくれよ。うっかり頬が赤くなっちまったら、魔王としての威厳に関わるだろ?
さっきから、もしかしてあれ魔王様じゃね? いや、まさか魔王様がこんなところにくるはずない、みたいな噂話が耳に入ってくるんだから。
カイルの方を見ないようにしながら、ぜんまいのような形をした緑色の生山菜を、勇気を出して口にした。
んー……ああ、これはなんとか食べれるわ」
「山菜は普通だな。美味くも不味くもない」
店の人に失礼な感想を口にしながら、二人で分けあって魔人風サラダを完食した。
「どうだ、もう一軒いくか」
「次は屋台の方をのぞいてみようぜ」
下町の方まで行くと、色とりどりのジュースを売っている、改造魔車もどきの店があった。さっそく一杯購入してみる。
「黄色いのをくれ」
「はいよ」
マンゴーのような色の飲み物が、一番いい匂いがしたので買ってみた。果たして飲める代物なのか……
まずはカイルが一口味見をした。男らしい喉仏が、ゴクリと動くのを見守る。
「悪くないな」
「へえ? 俺にも飲ませてくれよ」
カップを受け取りちょびっと舐めてみる。バナナとメロンを混ぜたような味がして、普通に美味しかった。
「あ、これは美味しい」
「ほう。初めて食の好みがあったようだ」
「本当だな」
二人でかわりばんこにジュースを味わった。カイルと食の好みがあうことはないだろうって、諦めてた矢先のことだからけっこう嬉しいな。
「やってよかったわ」
「何がだ」
「魔人の國の食糧改革。そのお陰でこうしてカイルと同じものを、美味しいって味わえるんだから」
「……そうだな」
カイルはフッと優しげに微笑んで、俺に手を絡めた。
「次はどこに行こうか」
「そうだなあ、じゃあ……」
俺達は日が暮れるまで街を練り歩いて、デートを楽しんだ。
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