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第三章 魔人救済編
203 和やかな旅
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鳥車は旅程通りに、軽やかに道を駆け抜けた。雪はほとんど積もっておらず、途中で立ち往生することもなかった。
道中、エイダン達とは色々話をした。二人はタルモ領出身だそうだが、今は家族と疎遠になっているらしい。
「エイダン、今は貴方の父親は……」
「母さん……もう、いないんだ」
「そう……貴方を立派に育ててくれてありがとうって、お礼を言いたかったわ」
クレミア母さんは悩ましげな様子で、時々考え事をしていたが、それ以外の時はエイダンとセルジュのやりとりを、楽しそうに見守っていた。
「だからエイダンは大雑把すぎるんです。ミュードにあげるエサの時間は決まっていると、言っておいたでしょう」
エイダンとセルジュは、細かいことでよく言い争いをしている。今も鳥のエサを巡って口論を繰り広げていた。
「えー、でもお腹空いてたみたいだったから、ついあげちゃった。ごめんね?」
「まったく、病気にさせたら大変なんですから。ちゃんと守ってくださいね?」
「セルジュはちゃんとミュードの体調まで考えて、面倒をみてるんだね。セルジュのそういう細かいとこまで気遣う姿勢って、素敵だよ」
「ちょっと、やめてくださいよ! こんな公衆の面前で腰を抱こうとしないでください、何を考えてるんですか!」
エイダンはそんなセルジュに慣れているようで、上手く丸めこんでいる。
セルジュは文句を口にしつつも、なんだかんだ嬉しそうだ。口論ってより痴話喧嘩だったな。
クレミアもニコニコしながら二人を見守っていた。
「貴方達の仲がよくて、わたくしは嬉しいわ」
「ほら、お母様に恥ずかしいところを見られたじゃないですか!」
「仲良くするのは恥ずかしいことじゃないよ。ねえ母さん?」
「そうね、エイダン」
「だから、そこ触ったら尻尾に触れるから、やめなさいって言ってるでしょうが!」
ほのぼの親子にプリプリ怒るセルジュ。俺も微笑ましく見守らせてもらうことにするぜ。
他人事のような気持ちでいると、カイルが俺の肩に後ろから手をかけた。
「仲良くするのは、恥ずかしいことじゃないそうだが」
「それはエイダンの意見だろ?」
「俺もイツキと仲良くしたい」
耳を遊ぶようにくすぐりながら、低い美声でけしからんことを囁くカイル。やめろって……俺も旅の間は、アンタにくっつくのを我慢してるんだ。
「勘弁してくれよ、マーシャルについたら構ってやるからさ」
「……わかった。約束だからな」
耳をひと撫でして、温かな体温が離れていく。ああ、もう……早くマーシャルにつかねえかなって、期待しちまうじゃねえか。
待ちきれなくて、セルジュ達にバレないように、鳥車の中で手と手を絡めて恋人繋ぎをした。
気恥ずかしくて赤くなる俺の頬を、カイルが飽きもせずに見つめてくる気配を感じるが、絶対に振り向いてなんてやらないからな。
……時々指先で手の甲をなぞられたり、敏感な手のひらをくすぐられたりするので、その度に負けじとやり返した。
きっと俺の顔は、真っ赤になっていることだろう。
カイルがクスリと笑う気配がしたが、見たらまた美麗すぎる顔にときめいてしまうだろうから、頑なに反対側の窓の外を凝視していた。
道中、エイダン達とは色々話をした。二人はタルモ領出身だそうだが、今は家族と疎遠になっているらしい。
「エイダン、今は貴方の父親は……」
「母さん……もう、いないんだ」
「そう……貴方を立派に育ててくれてありがとうって、お礼を言いたかったわ」
クレミア母さんは悩ましげな様子で、時々考え事をしていたが、それ以外の時はエイダンとセルジュのやりとりを、楽しそうに見守っていた。
「だからエイダンは大雑把すぎるんです。ミュードにあげるエサの時間は決まっていると、言っておいたでしょう」
エイダンとセルジュは、細かいことでよく言い争いをしている。今も鳥のエサを巡って口論を繰り広げていた。
「えー、でもお腹空いてたみたいだったから、ついあげちゃった。ごめんね?」
「まったく、病気にさせたら大変なんですから。ちゃんと守ってくださいね?」
「セルジュはちゃんとミュードの体調まで考えて、面倒をみてるんだね。セルジュのそういう細かいとこまで気遣う姿勢って、素敵だよ」
「ちょっと、やめてくださいよ! こんな公衆の面前で腰を抱こうとしないでください、何を考えてるんですか!」
エイダンはそんなセルジュに慣れているようで、上手く丸めこんでいる。
セルジュは文句を口にしつつも、なんだかんだ嬉しそうだ。口論ってより痴話喧嘩だったな。
クレミアもニコニコしながら二人を見守っていた。
「貴方達の仲がよくて、わたくしは嬉しいわ」
「ほら、お母様に恥ずかしいところを見られたじゃないですか!」
「仲良くするのは恥ずかしいことじゃないよ。ねえ母さん?」
「そうね、エイダン」
「だから、そこ触ったら尻尾に触れるから、やめなさいって言ってるでしょうが!」
ほのぼの親子にプリプリ怒るセルジュ。俺も微笑ましく見守らせてもらうことにするぜ。
他人事のような気持ちでいると、カイルが俺の肩に後ろから手をかけた。
「仲良くするのは、恥ずかしいことじゃないそうだが」
「それはエイダンの意見だろ?」
「俺もイツキと仲良くしたい」
耳を遊ぶようにくすぐりながら、低い美声でけしからんことを囁くカイル。やめろって……俺も旅の間は、アンタにくっつくのを我慢してるんだ。
「勘弁してくれよ、マーシャルについたら構ってやるからさ」
「……わかった。約束だからな」
耳をひと撫でして、温かな体温が離れていく。ああ、もう……早くマーシャルにつかねえかなって、期待しちまうじゃねえか。
待ちきれなくて、セルジュ達にバレないように、鳥車の中で手と手を絡めて恋人繋ぎをした。
気恥ずかしくて赤くなる俺の頬を、カイルが飽きもせずに見つめてくる気配を感じるが、絶対に振り向いてなんてやらないからな。
……時々指先で手の甲をなぞられたり、敏感な手のひらをくすぐられたりするので、その度に負けじとやり返した。
きっと俺の顔は、真っ赤になっていることだろう。
カイルがクスリと笑う気配がしたが、見たらまた美麗すぎる顔にときめいてしまうだろうから、頑なに反対側の窓の外を凝視していた。
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