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第二章 陰謀恋愛編

200 またね

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 エイダンとセルジュが、鳥車を運転できるらしいからな。後はテオとレジオットに挨拶して、フィオナ様にも顔を見せておかねえと。

「ところでアンタの母さんに呼ばれてるんだが、今どこにいるか知らないか?」
「母様なら、この時間はティールームでくつろいでいると思うよ」
「そうか、なんか呼ばれてるみたいだから行ってくるぜ。じゃあな、クインシー」

 軽く手を振ると、クインシーは眩しいものでも見るかのような目をこちらに向けて、そっと微笑んだ。

「うん……じゃあね、さよならイツキ。カイル君も」
「……ああ」

 とんだ腹黒セクハラ野郎かと思ったが、なんだかんだいいヤツだったな、クインシーは。どこかでまた会えるといいな。

 パタリと扉を閉めて、人の気配がないことを確認してから、ズッシリと重いコイン袋をインベントリに収納した。

「カイルの分の報酬も、俺と同じだけありそうだな」
「そうだな。アイツは腹は黒いが、ケチ臭くはないらしい」

 カイルも自分のインベントリに袋を入れる。身軽になった俺達は、ティールームとやらを目指して廊下を歩いた。

 フィオナ様は変わらないテンションで俺の容姿を褒めちぎり、カイルと俺の距離感が縮まっているのを見てとり、とてもいい笑顔になった。

「本当に素敵だわイツキ、カイルと一緒に肖像画を描いてもらいましょう?」
「ありがたいお言葉ですがフィオナ様、すでにマーシャルに帰る手配を進めているんです」
「あら、そうなの? ゆっくりしていけばいいのに」

 クインシーと同じ台詞で引きとめられたが、なんとか説得して肖像画のモデルは回避した。邸に滞在させてもらったお礼を伝えて、別れを告げる。

「後はテオとレジオットか。あいつらはどこにいるんだ」

 レジオットの魔力を探ってみると、彼は談話室にいるようだった。テオも同じ部屋にいるようだ。

 談話室に向かうと、ちょうど部屋から出てきた二人が俺達に気づいた。

「あれ、旦那方! 来てたんっスね、なんかの用事で来た感じかな?」
「こんにちは、イツキ、カイルさん」
「よう。実は二日後に王都を発つことになってな、挨拶しに来たんだ」

 テオはピンと尻尾を立てて、びっくり顔を披露した。レジオットも軽く目を見開いて、驚いているようだ。

「ええっ!? もう戻っちゃうんっスか?」
「ああ、急で悪いな。テオはもう少し王都に滞在するのか?」
「俺はボスの婚約がどうなるか次第で……」
「テオ」

 レジオットが口の前にバッテンマークをつくると、テオは慌てて自分の口を塞いだ。

「よ、予定は未定っス! はは」
「へえ、クインシーには婚約者がいるのか? どんなヤツなんだ?」
「勘弁してくださいよ、イツキの旦那……! 今は教えられないんっス、もう少ししたらどう転がるかわかると思うんで、追求しないでー」

 耳を伏せて必死に言い募るテオ。仕方ねえな、マーシャル領にいれば領主の息子の婚約話くらい、噂で流れてくるだろう。

 気にはなるが、問いつめるほどのことでもない。軽く流すと、レジオットが俺の袖をギュっと握った。

「僕はマーシャルに帰る。でもイツキ達より遅くなる、たぶん春中月くらいに戻ることになると思う」
「そうか、ならまた会える日を楽しみにしてるぜ」
「うん。本当はイツキ達と一緒に戻りたかったな」

 いじらしいレジオットの蜂蜜色の頭を、ポンポンと撫でて慰める。

「もうすぐ春だ、じきに会えるさ」
「そうだね……それまで元気でね、カイルさんも」
「ああ」
「カイルの旦那もお元気で!」

 二人と別れの挨拶を交わして、クインシーの邸を出た。



第二章 陰謀恋愛編 完


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