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第二章 陰謀恋愛編

188 提案

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 エイダンが間一髪で、腕の中に引き寄せた。肩で息をするクレミアは、蓄積された疲労が限界にきているようだ。

「よくやった」

 カイルが労うと、クレミアは辛うじて瞳を開いた。

「有難き……幸せに、ございます……」
「もう喋らなくていいよ。母さんは休んでて」
「休む……そうですね、活動を……休止、させます……入り口に、ついたら……」
「それまで休んでおけ」
「……は、い」

 すうっと意識を飛ばしたクレミアを、エイダンが再び抱きかかえる。

「カイルくん、母さんは大丈夫かな?」
「問題ない、じきに目を覚ますだろう。ダンジョンの入り口まで戻ろう」

 もう急いで戻る必要もないので、ゆっくり歩いて地上を目指した。





 ダンジョンの入り口のすぐ側に着いて、帰還陣を設置した場所に四人で潜りこんだ。

「ここでクレミア母さんを、起こした方がいいのか?」

 カイルに尋ねると、彼は周囲を見渡しつつ頷いた。

「……いや、その前にやっておくべきことがある。イツキ、防音と目眩しの結界を張ってくれ」
「わかった」
「……母さん、まだ起きそうにないや。今すぐ起こさなくていいなら、少し休んでてもらおう」

 エイダンが床に毛布を敷いて彼女を寝かせる。カイルは腕を組んで壁にもたれかかった。

「そうだな、そいつは休ませておけ。先に熊男に話すべきことがある」
「僕?」
「ああ」

 カイルはハアと息を吐くと、観念したように話しはじめた。

「……テメェには二つの選択肢がある」

 カイルは眼光鋭くエイダンを見据えた。まるで、覚悟を試すかのように。

「ひとつは、ここで見聞きしたことは全て忘れて、母親をダンジョンに戻す」
「僕は母さんを置いていかないよ!」

 エイダンは一つ目の案に抵抗を示した。

「話は最後まで聞け。もう一つは、魔人の秘密を守るために口外禁止契約を交わす。この場合、母親がダンジョンに留まるかどうかは、お前達次第だ」
「そっちがいい。僕を契約で縛ってほしい。そうすれば、母さんをここから連れだせるんだよね?」

 カイルが頷くと、エイダンも力強い目でカイルを見つめ返した。

「わかった。どうすればいい?」
「イツキ、助力を頼めるか」
「いいぜ。契約だな?」
「ああ」

 魔力の支配ギフトがあれば、契約陣を用意するなんて朝飯前だ。だが、その前に俺も確かめたいことがあるぜ、カイル。

「それは全然いいんだが……契約陣を用意する俺が詳しい話を知らないんじゃ、契約内容に漏れが出かねない。俺にも話してくれ、魔人の秘密とやらを」

 カイルに視線を当てると、彼はゆっくりと俺を振り向いた。


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