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第二章 陰謀恋愛編
175 蜜月のような
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本戦が始まるまでの短い日々を、俺達はほとんど宿から出ずに過ごした。
カイルを受け入れた日は、あの後すぐに眠ってしまった。ダンジョンで疲れが溜まっていたところに、激しい運動をしたからな。さもありなん。
次の日の朝はカイルが部屋まで食事を持ってきてくれて、手づから食べさせられた。
「ほら、口を開けろ」
「自分で食べれるからスプーンを寄越せよ」
「嫌だ。俺はイツキに食べさせたい。それともお前は、俺の愛情表現を受け入れてはくれないのか?」
好みすぎる顔が少し寂しそうな様子で、俺をじっと見つめてきたら、応えないわけにはいかないだろう。
「くっそ……あー……」
「あーん」
「むぐ」
「どうだ?」
「……ふぉいひい」
俺もカイルの口に、サラダの葉っぱを放りこんでやる。食べさせあって、思う存分イチャイチャした。
お互い体のどこかしらをひっつけながら、本を読んだり、お茶したり、耳のマッサージをされたりもした。
極楽すぎる耳のマッサージを受けながら、ふと俺ばっかり気持ちいいのもよくねえよなあ、と考える。
部屋にちょうど、耳かきにちょうどよさそうな木の棒があったので、カイルにしてやることにした。
「なあカイル、ここに頭を乗せてくれ」
ぽんぽんと膝を叩くと、カイルはすぐにベッドに横になって、俺の膝に頭を乗せてくれた。
「なんだ、枕になってくれるのか?」
面白そうな表情で、俺を見上げるカイル。その表情と角度、新鮮だな……と数秒見惚れてから、ハッとして返答した。
「それよりも、もっといいコトしてやるよ。耳を見せてくれ」
カイルの髪を避けて、先が尖った耳を露出させる。もの珍しくて耳の先を触ると、カイルがくすぐったそうに笑い声を漏らした。
「ふ……」
「カイルはここ、弱いのか?」
「どうだろうな、獣人のように性感帯というわけではないが」
「だよな」
気がすむまで触った後、カイルの耳の中に耳かきをそっと入れた。
「動くなよ」
「何をしてるんだ」
「耳かき」
「なんだそれは」
「耳の中を掃除するんだよ。気持ちいいぞ」
本来人の耳は、耳かきなんてしなくても、耳の自浄作用で汚れが出てくる仕様になっている。
けれど耳の中には気持ちよくなる神経があって、それでみんな耳かきをしたがるらしい。
カイルはちょっと難しい顔をして、意味がわからないとでも言いたげな表情をしていたが、大人しく耳かきさせてくれた。
その表情が、だんだんと解れていく。ほお、と気持ちよさげな吐息が、カイルの口から漏れる。
「なるほどな……これはいい」
「だろ? ほら、反対側向いてくれ」
カイルが俺の腹に顔が向くように、顔の位置を調整してくれた。
腰を抱かれながら、耳かきをする。途中胸元に伸びてこようとした不埒な手は、はたき落とした。
「おいこら、危ねえだろ」
「見てたら触りたくなったんだ」
「じっとしててくれよ、もう終わるから」
こしょこしょと耳奥をくすぐってから、ほとんど耳垢の出なかった耳掃除を終えた。
「これで終わりだ」
「そうか。なら次は俺の番だ。その棒を貸せ」
「え? いや、俺は別にいらないんだが」
「遠慮するな」
ヒョイと体の場所を入れ替えられて、今度はカイルの膝の上に俺の頭が乗る。
カイルを受け入れた日は、あの後すぐに眠ってしまった。ダンジョンで疲れが溜まっていたところに、激しい運動をしたからな。さもありなん。
次の日の朝はカイルが部屋まで食事を持ってきてくれて、手づから食べさせられた。
「ほら、口を開けろ」
「自分で食べれるからスプーンを寄越せよ」
「嫌だ。俺はイツキに食べさせたい。それともお前は、俺の愛情表現を受け入れてはくれないのか?」
好みすぎる顔が少し寂しそうな様子で、俺をじっと見つめてきたら、応えないわけにはいかないだろう。
「くっそ……あー……」
「あーん」
「むぐ」
「どうだ?」
「……ふぉいひい」
俺もカイルの口に、サラダの葉っぱを放りこんでやる。食べさせあって、思う存分イチャイチャした。
お互い体のどこかしらをひっつけながら、本を読んだり、お茶したり、耳のマッサージをされたりもした。
極楽すぎる耳のマッサージを受けながら、ふと俺ばっかり気持ちいいのもよくねえよなあ、と考える。
部屋にちょうど、耳かきにちょうどよさそうな木の棒があったので、カイルにしてやることにした。
「なあカイル、ここに頭を乗せてくれ」
ぽんぽんと膝を叩くと、カイルはすぐにベッドに横になって、俺の膝に頭を乗せてくれた。
「なんだ、枕になってくれるのか?」
面白そうな表情で、俺を見上げるカイル。その表情と角度、新鮮だな……と数秒見惚れてから、ハッとして返答した。
「それよりも、もっといいコトしてやるよ。耳を見せてくれ」
カイルの髪を避けて、先が尖った耳を露出させる。もの珍しくて耳の先を触ると、カイルがくすぐったそうに笑い声を漏らした。
「ふ……」
「カイルはここ、弱いのか?」
「どうだろうな、獣人のように性感帯というわけではないが」
「だよな」
気がすむまで触った後、カイルの耳の中に耳かきをそっと入れた。
「動くなよ」
「何をしてるんだ」
「耳かき」
「なんだそれは」
「耳の中を掃除するんだよ。気持ちいいぞ」
本来人の耳は、耳かきなんてしなくても、耳の自浄作用で汚れが出てくる仕様になっている。
けれど耳の中には気持ちよくなる神経があって、それでみんな耳かきをしたがるらしい。
カイルはちょっと難しい顔をして、意味がわからないとでも言いたげな表情をしていたが、大人しく耳かきさせてくれた。
その表情が、だんだんと解れていく。ほお、と気持ちよさげな吐息が、カイルの口から漏れる。
「なるほどな……これはいい」
「だろ? ほら、反対側向いてくれ」
カイルが俺の腹に顔が向くように、顔の位置を調整してくれた。
腰を抱かれながら、耳かきをする。途中胸元に伸びてこようとした不埒な手は、はたき落とした。
「おいこら、危ねえだろ」
「見てたら触りたくなったんだ」
「じっとしててくれよ、もう終わるから」
こしょこしょと耳奥をくすぐってから、ほとんど耳垢の出なかった耳掃除を終えた。
「これで終わりだ」
「そうか。なら次は俺の番だ。その棒を貸せ」
「え? いや、俺は別にいらないんだが」
「遠慮するな」
ヒョイと体の場所を入れ替えられて、今度はカイルの膝の上に俺の頭が乗る。
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