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第二章 陰謀恋愛編

唐突にポッキー小話(王都ケルス、冬)

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 あー、暇だなあ。冬は寒さから外に出たくなくて、どうしても屋内にこもりがちになるが、いつまでも本ばかり読んでいると目が痛くなる。

 そういう時は窓の景色を見たり、インベントリの中の物を整理したり、実験の真似事をして過ごしているが、やがてそれも飽きてきた。

 隣のベッドの端で足を組んで、黙々と読書をするカイルに、ふとイタズラ心がわく。

 インベントリから取りだした野菜スティックを手に持って、カイルに話を持ちかけた。

「なあなあカイル、ゲームしようぜ」
「なんだ」

 カイルは目線だけを俺の方に向けた。カイルの隣に座って、野菜スティックを目の前に掲げる。

「ポッキーゲームっていうんだが、一方の端を俺が咥えて、反対側をカイルが咥えるんだ。で、端から食べていく。先に離した方が負け」
「ほう」
「とりあえずやってみよう。ほら、カイルはこっち側な」

 片方の端を持ってカイルの方にもう片方を差しだすと、パクリと食いついてきた。

 あ、失敗したかもしれない……この時点でかなり顔との距離が近い。彫像のように整った顔が、俺を凝視してくる。圧がすごい。

 なんだ、やらないのか? とでも言いたげな目で見つめられて、覚悟を決めて反対側を咥えた。

 ……近い、やっぱり近い、思った以上に近すぎる。カッと頬に熱が灯るのがわかったが、さすがに咥えてすぐリタイアはしたくない。

 カリッとかじると、カイルも一口食べた。そして更に近づいてきた。負けじと食べ進めるが、もはや味なんぞわからない。

「……」

 もういいだろ、そろそろ離さないと口がくっつくんだが……まだ離さないのか!?

 マジでキスする一秒前な距離に近づいても、カイルは平然と食べ続けている。推し顔が至近距離すぎて、しんどいんだが。

 ……わかった、俺の負けでいいわ。お前に勝負をふっかけた俺が間違っていたな……

 勝利を諦めて口を離そうとした瞬間、カイルの目元が笑みの形を描き、ガッと頭を両手でとらえられた。

「んっ!?」

 口を開けて一息で野菜スティックを咀嚼し、カイルは俺にキスをした。

「ふぐっ……!」

 ぬるりと舌が、開いた唇の隙間から侵入してくる。口内をベロリと舐めたカイルは、一度口を離して文句を言った。

「野菜がゴロゴロしていてキスがしづらい」
「いや、ゲホッ……キスまでいったらゲームにならねえじゃねえか」

 口の中の野菜を苦労して飲みこんでいると、同じく口の中を空にしたカイルが、クイっと俺の顎を捉えた。

「まどろっこしいな、俺は普通にイツキにキスがしたい」
「へ? だからそういう誘いじゃなくてだな……んむっ」

 再び唇をあわせられ、歯列を舌先でノックされる。まったく……俺は諦めてカイルを受け入れた。

 ……やっぱりカイルはキスが上手いな、腰にクる。俺は残った野菜スティックをインベントリにしまいなおして、とろけるような口づけに集中した。
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