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第7章 紅玉姫の嫁入りと剣聖の片恋慕編
第505話 絶対に振り向かせてみせるから
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その表情には見覚えがあった。
その視線にも覚えがあった。
きっと自分も誰かに対して、そんな顔をしたことがあるのだろうという確信があった。
同じクラスの生徒も、同じ部活のマネージャーも、違う学校に所属している自分の追っかけも、幼馴染も、そしてノエルも。
きっと彼女たちは俺のことが好きなんだろうなと思いつつ、そうとは口に出来なかった。
普通にイタイ奴だし何より外した時のショックの大きさが想像できなかった。
だからこちらから告白することはあっても、向こうの気持ちに気付いていたと明かしたことはなかった。
そう訊かれても、鈍感だから気付かなかったと嘘をついていた。
「アラタ、大好き」
彼の背中に抱き着きながら、ノエルの顔は火を噴いていた。
首元から耳、おでこまで真っ赤に染めあがり、残るのは白目くらいのものだ。
アラタは自分の意気地と甲斐性の無さにうんざりしつつ、透き通る天を仰いだ。
「何となく分かってたのに、ここは居心地が良かったから離れられなかった。ごめん、俺はノエルの気持ちには応えられない」
ノエルがアラタを抱き締める力は元々強かったが、それがより一層強固になる。
「痛っ、ちょ、落ち着いて」
「お願い、好きって言って」
「それはちょっと……」
さらに強まるノエルの手を握り、それを解いていく。
最悪クラッチされたままジャーマンスープレックスを極められるところまでは覚悟していたアラタは、出来る限り慎重にノエルの手を取って自由になろうとする。
「アラタ、アラタ」
「落ち着いて。とりあえず中に入って——」
「ヤダ。ここに座って」
ノエルが指さしたのは、玄関前の階段だ。
石で出来た3つの階段は、腰を落ち着けて話をするのにちょうどよかった。
ただ、ここは少し冷える。
早く中に入りつつ話を有耶無耶にしたいアラタと、それを許さないノエル。
正面から向き合わないのも失礼だなと、アラタは言われた通りにそこに座った。
ノエルはその隣に腰かけ、2人は玄関を背に冬の星空を見上げていた。
「ずっと好きだったんだ」
「………………」
「アラタがダンジョンで死んじゃって、生き返って、それから私にありがとうと言ってくれて。それがすごく嬉しかったから何度も何度もありがとうって言ってもらって、その時からずっと好きだったんだ」
「なんていうか……うん」
ノエルが話すエピソードというのは、もうずいぶん前の話である。
アラタがこの世界にやって来たのは帝国歴1580年8月、そして今は帝国歴1582年3月。
1年半も前から、ずっと好きだったと言われたのだ。
アラタも少し反応に困る。
「そういう目で見たことなかったから……なんて言えばいいんだろう」
「知ってた。なんか眼中にないって感じだった」
「俺はほら、異世界人だし。ゴリゴリの貴族のノエルとは合わないよ」
「エリザベスのことは好きなのに?」
「あ、いやー…………」
「いいんだ、近くで見てたから。ただエリザベスが羨ましくて、憎らしくて、妬ましかった。こんな人間だから剣聖のクラスが暴走してしまったんだろうな」
ノエルはポニーテールをまとめていた髪留めを外した。
それはアラタがノエルの誕生日にプレゼントしてくれたものだった。
なんてことはない、普通に売られている簡素なもの。
好みなんて分かんないから、あとでリボンとか付け替えられるタイプが無難だろうと思って買ったもの。
そんな安全牌に走ったプレゼントでも、アラタから貰ったものだから他の何よりも大事だった。
ノエルはそれを大切そうに胸元で握り締める。
「もしかしたら、ほんの少しだけでも脈があるかなって思ったんだ」
「……ごめん」
「一番じゃなくてもいいんだ。エリザベスのことが一番でもいいから、私のことも少しでいいから気にしてくれないかな」
「それは——」
分かった。
そうするよ。
そう言えたら苦労はない。
そんなに簡単に割り切れねえよ。
俺は元犯罪者で、ノエルはこの国の最高権力者の娘で俺の護衛対象、立場が違いすぎる。
「お願い」
ノエルの右手がアラタに触れた。
まだ春は先で、夜になって冷え込んでいるというのにノエルは手袋を着けていない。
かく言うアラタも手袋は家の鍵を取り出すときに外してしまった。
お互い悴む指先を絡ませて暖を取る。
相手の気持ちは十分伝わっている。
それでも、アラタの中に刻まれた黄金の呪いがノエルを抱き締めることを良しとしない。
「俺はエリーのことが好きだから、まだ気持ちに区切りがつかない。だから……」
俺は君の想いには応えられない。
アラタは先ほど言ったことをもう一度言おうとしたが、口が動いてくれない。
何を躊躇ってるんだよ。
希望を持たされて待たされる辛さは知ってるくせに、いまさら楽をするなよ。
ノエルを待たせたまんま放置するのか。
言えよ、お前のことなんか眼中にないからさっさと結婚しちまえって言うんだよ。
「あ、ぁ……」
ノエルが長く秘めていた想いを口にしたと思ったら、今度はアラタの口が動かない。
今まで散々好き放題発言してきたくせに、肝心の時に必要な言葉が出てきてくれない。
アラタは相手に願った。
1回断ったんだから、もう諦めてくれよと。
残念だった、それで諦めてくれと。
だがノエルは紅く燃える瞳で見つめてくるだけで、まるで諦めようとしてくれない。
思えば彼女はいつだって諦めなかった。
アラタとの喧嘩に端を発した剣聖の暴走の時も。
闇に深く堕ちたアラタが自力では戻ってこれなくなった時も。
戦争の傷跡が深く、アラタがPTSDを発症した時も。
そして今も。
諦めの悪さはアラタよりもノエルの専売特許だ。
ノエルはおもむろに手を離すと、立ち上がって尻をはたいた。
「急にこんなこと言ってごめん」
「あ……いや、そんな」
月明かりは出ていない。
星が輝く程度では、闇夜を照らすには物足りない。
玄関前の照明がノエルのことを明るく照らしていた。
「あーあ! 言っちゃった!」
腰に手を当てて空を見上げるノエルの眼に涙は無かった。
言ってやったと、やっと言えたという達成感の方が勝っているのだろう。
今の彼女は実に清々しい表情をしていた。
「ノエル、俺——」
「私、絶対に振り向かせてみせるから!」
ニシシと笑うながら宣言したノエルを見て、アラタはなんて返したらいいのか分からず困惑する。
こんな時に気の利いた一言が言えれば違うのだろうが、それはあまりに多くを求め過ぎだろう。
「俺、ノエルのことフったよね?」
「そうだね」
「普通諦めない?」
「私普通じゃないもん。なんで一回フラれたくらいで諦めなきゃいけないんだ」
「メンタルが強すぎる……」
座ったまま頭を抱えたアラタはふと下を見た。
階段には自分の影が伸びていて、前の方から別の影が重なって来た。
「おいっ!」
「エヘヘ~隙あり~」
今度は正面から抱擁してきたノエルに対し、アラタはまるで抵抗ができなかった。
あまりに力が強すぎて、【身体強化】ナシでは対応できそうにない。
ノエルのことを引き剥がすために【身体強化】を起動しようとしたアラタ、そんな予感を覚えたのかノエルは機先を制して彼の耳元に口を近づけた。
「あんまり待たされると襲っちゃうから」
びくりと身体を震わせて、たまらずアラタはノエルを引き剥がそうとした。
それと同時に大きく深呼吸をして落ち着こうとしているその様子は、今まさに彼が揺れている証拠だと受け止められてしまう。
今がチャンスと再アタックしたノエルの首元からは、アラタがあげた香水の匂いがした。
人の発する熱によって、香水はその印象を変える。
図らずも今が最高潮、ノエルはこれでもかとアラタに体を密着させた。
いくら冬で厚着をしていると言っても、流石にアラタだって色々と分かってしまうことはある。
「俺断ったよね!? 待たせてもないよね!?」
「オッケーって言ってくれるまで待ってるよ」
「ちょ、はなっ離れて!」
「イヤだ~」
「力強すぎ……いいから!」
アラタは必死の思いでノエルから脱出した。
あまりに不意を突かれて肩で息をしている。
昨日までの魔物討伐であれだけ戦ってもまったく息が切れなかったというのに、今はたった数十秒のやり取りで尋常ではない程消耗している。
「お前……性別逆だったら逮捕案件だからな」
「私はアラタの方からきてくれると嬉しいな」
「無敵すぎる……」
途方に暮れるアラタを見て、恍惚とした表情をするノエル。
ニヤニヤ、ニマニマしている相手を見て、アラタは亡き想い人に助けを求めた。
——君がいない世界で俺は迷ってばかりだ。
「大公にこのこと言ったの?」
「うん。アラタのこと大好きだって」
「そりゃ怒るよ……」
「大丈夫。何とかなるよ」
「なる気がしない」
「大丈夫! それより、絶対に私のこと好きにさせるから!」
ノエルはアラタの横を通り過ぎると刺さったままの鍵を回した。
家の扉が開き、向こうにはリーゼたちやじ馬たちが待機している。
「早く入って来てね。風邪ひいちゃうよ」
そう言い残すとノエルは扉の向こうへ消えていった。
残されたアラタは玄関前の階段に座ったままだった。
背中の感触も、指先の感覚も、耳元に残る余韻も、鼻に届いた香りも、どれもこれも今なお鮮明に克明に脳裏に焼き付けられている。
告白したことも告白されたこともあるアラタだったが、自他ともに経験した限り知り得る限りで、ここまで真っ直ぐ情熱的なものは未だかつてなかった。
断ってなおいつか好きにさせるという決意表明もだ。
アラタの耳は寒さで真っ赤になっていた。
真っ赤になる原因は寒さでなければならない。
彼は再び下を向き、中に入っていったノエルにツッコんだ。
「アクセルベタ踏みし過ぎだよ……」
その視線にも覚えがあった。
きっと自分も誰かに対して、そんな顔をしたことがあるのだろうという確信があった。
同じクラスの生徒も、同じ部活のマネージャーも、違う学校に所属している自分の追っかけも、幼馴染も、そしてノエルも。
きっと彼女たちは俺のことが好きなんだろうなと思いつつ、そうとは口に出来なかった。
普通にイタイ奴だし何より外した時のショックの大きさが想像できなかった。
だからこちらから告白することはあっても、向こうの気持ちに気付いていたと明かしたことはなかった。
そう訊かれても、鈍感だから気付かなかったと嘘をついていた。
「アラタ、大好き」
彼の背中に抱き着きながら、ノエルの顔は火を噴いていた。
首元から耳、おでこまで真っ赤に染めあがり、残るのは白目くらいのものだ。
アラタは自分の意気地と甲斐性の無さにうんざりしつつ、透き通る天を仰いだ。
「何となく分かってたのに、ここは居心地が良かったから離れられなかった。ごめん、俺はノエルの気持ちには応えられない」
ノエルがアラタを抱き締める力は元々強かったが、それがより一層強固になる。
「痛っ、ちょ、落ち着いて」
「お願い、好きって言って」
「それはちょっと……」
さらに強まるノエルの手を握り、それを解いていく。
最悪クラッチされたままジャーマンスープレックスを極められるところまでは覚悟していたアラタは、出来る限り慎重にノエルの手を取って自由になろうとする。
「アラタ、アラタ」
「落ち着いて。とりあえず中に入って——」
「ヤダ。ここに座って」
ノエルが指さしたのは、玄関前の階段だ。
石で出来た3つの階段は、腰を落ち着けて話をするのにちょうどよかった。
ただ、ここは少し冷える。
早く中に入りつつ話を有耶無耶にしたいアラタと、それを許さないノエル。
正面から向き合わないのも失礼だなと、アラタは言われた通りにそこに座った。
ノエルはその隣に腰かけ、2人は玄関を背に冬の星空を見上げていた。
「ずっと好きだったんだ」
「………………」
「アラタがダンジョンで死んじゃって、生き返って、それから私にありがとうと言ってくれて。それがすごく嬉しかったから何度も何度もありがとうって言ってもらって、その時からずっと好きだったんだ」
「なんていうか……うん」
ノエルが話すエピソードというのは、もうずいぶん前の話である。
アラタがこの世界にやって来たのは帝国歴1580年8月、そして今は帝国歴1582年3月。
1年半も前から、ずっと好きだったと言われたのだ。
アラタも少し反応に困る。
「そういう目で見たことなかったから……なんて言えばいいんだろう」
「知ってた。なんか眼中にないって感じだった」
「俺はほら、異世界人だし。ゴリゴリの貴族のノエルとは合わないよ」
「エリザベスのことは好きなのに?」
「あ、いやー…………」
「いいんだ、近くで見てたから。ただエリザベスが羨ましくて、憎らしくて、妬ましかった。こんな人間だから剣聖のクラスが暴走してしまったんだろうな」
ノエルはポニーテールをまとめていた髪留めを外した。
それはアラタがノエルの誕生日にプレゼントしてくれたものだった。
なんてことはない、普通に売られている簡素なもの。
好みなんて分かんないから、あとでリボンとか付け替えられるタイプが無難だろうと思って買ったもの。
そんな安全牌に走ったプレゼントでも、アラタから貰ったものだから他の何よりも大事だった。
ノエルはそれを大切そうに胸元で握り締める。
「もしかしたら、ほんの少しだけでも脈があるかなって思ったんだ」
「……ごめん」
「一番じゃなくてもいいんだ。エリザベスのことが一番でもいいから、私のことも少しでいいから気にしてくれないかな」
「それは——」
分かった。
そうするよ。
そう言えたら苦労はない。
そんなに簡単に割り切れねえよ。
俺は元犯罪者で、ノエルはこの国の最高権力者の娘で俺の護衛対象、立場が違いすぎる。
「お願い」
ノエルの右手がアラタに触れた。
まだ春は先で、夜になって冷え込んでいるというのにノエルは手袋を着けていない。
かく言うアラタも手袋は家の鍵を取り出すときに外してしまった。
お互い悴む指先を絡ませて暖を取る。
相手の気持ちは十分伝わっている。
それでも、アラタの中に刻まれた黄金の呪いがノエルを抱き締めることを良しとしない。
「俺はエリーのことが好きだから、まだ気持ちに区切りがつかない。だから……」
俺は君の想いには応えられない。
アラタは先ほど言ったことをもう一度言おうとしたが、口が動いてくれない。
何を躊躇ってるんだよ。
希望を持たされて待たされる辛さは知ってるくせに、いまさら楽をするなよ。
ノエルを待たせたまんま放置するのか。
言えよ、お前のことなんか眼中にないからさっさと結婚しちまえって言うんだよ。
「あ、ぁ……」
ノエルが長く秘めていた想いを口にしたと思ったら、今度はアラタの口が動かない。
今まで散々好き放題発言してきたくせに、肝心の時に必要な言葉が出てきてくれない。
アラタは相手に願った。
1回断ったんだから、もう諦めてくれよと。
残念だった、それで諦めてくれと。
だがノエルは紅く燃える瞳で見つめてくるだけで、まるで諦めようとしてくれない。
思えば彼女はいつだって諦めなかった。
アラタとの喧嘩に端を発した剣聖の暴走の時も。
闇に深く堕ちたアラタが自力では戻ってこれなくなった時も。
戦争の傷跡が深く、アラタがPTSDを発症した時も。
そして今も。
諦めの悪さはアラタよりもノエルの専売特許だ。
ノエルはおもむろに手を離すと、立ち上がって尻をはたいた。
「急にこんなこと言ってごめん」
「あ……いや、そんな」
月明かりは出ていない。
星が輝く程度では、闇夜を照らすには物足りない。
玄関前の照明がノエルのことを明るく照らしていた。
「あーあ! 言っちゃった!」
腰に手を当てて空を見上げるノエルの眼に涙は無かった。
言ってやったと、やっと言えたという達成感の方が勝っているのだろう。
今の彼女は実に清々しい表情をしていた。
「ノエル、俺——」
「私、絶対に振り向かせてみせるから!」
ニシシと笑うながら宣言したノエルを見て、アラタはなんて返したらいいのか分からず困惑する。
こんな時に気の利いた一言が言えれば違うのだろうが、それはあまりに多くを求め過ぎだろう。
「俺、ノエルのことフったよね?」
「そうだね」
「普通諦めない?」
「私普通じゃないもん。なんで一回フラれたくらいで諦めなきゃいけないんだ」
「メンタルが強すぎる……」
座ったまま頭を抱えたアラタはふと下を見た。
階段には自分の影が伸びていて、前の方から別の影が重なって来た。
「おいっ!」
「エヘヘ~隙あり~」
今度は正面から抱擁してきたノエルに対し、アラタはまるで抵抗ができなかった。
あまりに力が強すぎて、【身体強化】ナシでは対応できそうにない。
ノエルのことを引き剥がすために【身体強化】を起動しようとしたアラタ、そんな予感を覚えたのかノエルは機先を制して彼の耳元に口を近づけた。
「あんまり待たされると襲っちゃうから」
びくりと身体を震わせて、たまらずアラタはノエルを引き剥がそうとした。
それと同時に大きく深呼吸をして落ち着こうとしているその様子は、今まさに彼が揺れている証拠だと受け止められてしまう。
今がチャンスと再アタックしたノエルの首元からは、アラタがあげた香水の匂いがした。
人の発する熱によって、香水はその印象を変える。
図らずも今が最高潮、ノエルはこれでもかとアラタに体を密着させた。
いくら冬で厚着をしていると言っても、流石にアラタだって色々と分かってしまうことはある。
「俺断ったよね!? 待たせてもないよね!?」
「オッケーって言ってくれるまで待ってるよ」
「ちょ、はなっ離れて!」
「イヤだ~」
「力強すぎ……いいから!」
アラタは必死の思いでノエルから脱出した。
あまりに不意を突かれて肩で息をしている。
昨日までの魔物討伐であれだけ戦ってもまったく息が切れなかったというのに、今はたった数十秒のやり取りで尋常ではない程消耗している。
「お前……性別逆だったら逮捕案件だからな」
「私はアラタの方からきてくれると嬉しいな」
「無敵すぎる……」
途方に暮れるアラタを見て、恍惚とした表情をするノエル。
ニヤニヤ、ニマニマしている相手を見て、アラタは亡き想い人に助けを求めた。
——君がいない世界で俺は迷ってばかりだ。
「大公にこのこと言ったの?」
「うん。アラタのこと大好きだって」
「そりゃ怒るよ……」
「大丈夫。何とかなるよ」
「なる気がしない」
「大丈夫! それより、絶対に私のこと好きにさせるから!」
ノエルはアラタの横を通り過ぎると刺さったままの鍵を回した。
家の扉が開き、向こうにはリーゼたちやじ馬たちが待機している。
「早く入って来てね。風邪ひいちゃうよ」
そう言い残すとノエルは扉の向こうへ消えていった。
残されたアラタは玄関前の階段に座ったままだった。
背中の感触も、指先の感覚も、耳元に残る余韻も、鼻に届いた香りも、どれもこれも今なお鮮明に克明に脳裏に焼き付けられている。
告白したことも告白されたこともあるアラタだったが、自他ともに経験した限り知り得る限りで、ここまで真っ直ぐ情熱的なものは未だかつてなかった。
断ってなおいつか好きにさせるという決意表明もだ。
アラタの耳は寒さで真っ赤になっていた。
真っ赤になる原因は寒さでなければならない。
彼は再び下を向き、中に入っていったノエルにツッコんだ。
「アクセルベタ踏みし過ぎだよ……」
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