507 / 544
第7章 紅玉姫の嫁入りと剣聖の片恋慕編
第502話 攻略会議
しおりを挟む
「じゃあノエルはシルのお義母さんになるの?」
「そんな……気が早いよもうっ」
「ノエル~戻ってきて下さ~い」
ノエルがアラタへの恋心を明確に言葉にしてから数十分後、アラタの屋敷では本人不在の中彼の攻略会議が開かれていた。
参加者はノエル、リーゼ、シル、それからラグエル。
ベルフェゴールは大して興味がないのか参加せず、アラタとクリスは辺境へ魔物討伐に向かっている。
この場を取り仕切るリーゼは先ほど、ノエルを全力で支援することを約束してしまった。
何でそんな難しいことをノリで引き受けてしまったのかと今は少しだけ後悔している。
彼女はノエルが抱えている難問を共有すべく、テーブルの上に黒板とチョークを置いた。
現代で言うタブレットのようなものだと想像すればいいだろう。
紙と羽ペンよりもこちらの方が使い勝手がいい。
「いいですか。まず大公を説得します」
「アラタじゃなくて?」
シルは初めから疑問符を投げかけた。
先にアラタを落として彼の協力を得ながら大公と大公妃攻略が正道だろうと考えたから。
リーゼはシルの反論に対して首を横に振った。
「ノエル、もしアラタにフラれたら……例え! 例えの話ですから!」
想像しただけで少し涙腺が脆くなってしまうノエルのことをカバーしながらリーゼは訊く。
ノエルは先ほどの出奔も含めて少しナーバスになっている。
「……諦めたくない」
「ですよね。じゃあOKしてくれたら?」
「すぐに籍を入れる」
「まあ議論の余地はありますが、概ねそのような流れになると思います。ではもし、もしも大公が首を縦に振らなかったら? シルちゃん」
「えぇっと、駆け落ち?」
「でしょうね」
リーゼは大きく頷きながら2つのルートを書いた。
アラタにフラれたケースと、フラれなかったが大公が認めなかったケース。
どちらも大いに時間がかかるし、正直問題の解決は難しい困難な道だ。
「ラグエルちゃん、いまノエルが抱えているお見合いの件数知ってます?」
「え、知らないです」
「6件です」
「「多っ」」
ラグエルとシルの声が重なった。
6人の男性とその家族から婚約を打診されておいて、それでもアラタが良いとノエルは言っている。
彼女は余程アラタに入れ込んでいるようだ。
「正直私の見立てではアラタは絶対に1度では首を縦に振りません。ぜぇったいに答えを引き延ばすかやんわりと断るかの2択で攻略には時間がかかります。その間大公に一言もなくお見合い相手を待たせるのはどうでしょう」
「まずい気がする」
「ですよね」
「それどころか、私は早急にごめんなさいして話を無かったことにしてもらわなければならないじゃないか」
リーゼは黒板に6個の丸を書き、そこから右に向かって線を伸ばした。
「ノエルが大公やお相手に話をするのが遅くなればなるほど、彼らの時間は失われていきます。お見合い相手に話を通して謝罪と撤回をするのが最優先、そしてそのためには大公の了承つまり攻略が不可欠。みなさんおわかりですね?」
シルはごくりと唾を飲みながら、隣に座っている自称天使のことを見た。
ラグエルは天使なのにこんなに特定の人間に肩入れしてもいいのかなと、そんな感じで見ていた。
ラグエルはシルからの視線に気づいていたが、彼女の心の内までは読むことが出来ず放置している。
ベルフェゴールが嫌がらせをしているのか、それともシル本人がプロテクトをかけているのか、ラグエルからではシルの頭の中をのぞくことが出来ない。
しばしば天使の権能を行使して人類の心中を盗み見ることのあるラグエルだが、屋敷の中で能力の行使が有効な相手はクリスとリーゼだけだった。
アラタ、シル、ベルフェゴールはプロテクトがかかっていて覗けず、ノエルは簡単だが頭の中がアラタか食べ物のことばかりで覗くに値しない。
ラグエルが天使らしさを発揮し損ねている間にも会議は進んでいく。
「シルは分かったけど……リーゼ以外にどうしようもなくない?」
「そうなんですよね……」
リーゼの顔にははっきりと受難の相が現れていた。
シルは人間らしく振舞っているものの、アラタから生み出されたシルキーという妖精だ。
大公と交渉するには少し厳しい。
ラグエルなんて表に出せるはずもなく、ノエルでは大公相手に言い負かされてしまう。
結論として、リーゼしかいなかった。
「やっぱりアラタが異世界人であることを言うしか……」
「ダメ。それじゃ意味がない」
悩むリーゼの出した案を速攻でノエルが却下した。
考えてもらっておいてなんだが、彼女的に譲れない部分なのだろう。
リーゼもそれではアラタからの信用が失われて告白どころではなくなるなと考えを改めた。
しかし考えを変えたところで、他に名案が浮かぶわけでもない。
「シル的には泣き落としが一番だと思う。ノエルは一人っ子だし」
「シル、酷くないか?」
「じゃあノエルが案を出してよ」
「それは……誠心誠意お願いするとか」
「相手が引き下がってくれるといいね」
「なんか棘があるんだよなぁ。そんなところばっかりアラタに似ないでよ」
「ノエルが殴りやすいから……」
「はいその辺で。ラグエルちゃんはどうです?」
この2人に頼ってもろくな案が出てこないことは想定済みなので、未知数な天使に話を振ってみる。
リーゼはこの天使の案を実は期待していた。
ここに居る面子は共に過ごした時間がそこそこ長いので、思考パターンもちょっと似てきつつある。
普段はストレスが無くていいかもしれないが、一発逆転の一手を生み出すにはアイディアのバリエーションが偏り過ぎてしまう。
他の3人の期待の眼差しを受けながら、ラグエルは首を捻り、ついでに頭も捻る。
結論として、ラグエルはまず正攻法で攻めてみることにした。
「まずはお見合い相手のことを徹底的に調べるというのは?」
「どういうことです?」
「相手からすれば、このお見合いは大公の娘婿になろうというものですよね。失礼かもですけど下心の1つや2つあるものでは?」
「失礼かもじゃなくて失礼だな」
「でも事実でしょ? もちろん大公もそれなりに調べているとは思いますが……」
「ここ数年間の不正や内通の多さを考えればあり得ない話ではないと」
リーゼはラグエルの言わんとしていることを察した。
「アラタさんがノエルさんのことをどう考えているかは知りませんけど、お見合い相手の吟味をしっかりと裏表両面でするのは必要なのではないですか?」
「アラタはいわば2年かけて評価されたわけですからね」
「ボロが出たら脱落、そうでなければ向こうの殿方だって十分魅力的なのでは?」
「でも私はアラタが……」
ノエルはどうしてもアラタが良いようで、話が堂々巡りに入りそうな気配が出てきた。
リーゼは話を元の流れに戻すべく少し強引にいく。
「でも、どちらにせよ大公との交渉材料は必要ですよ。お見合い相手を精査するのとアラタを認めさせるのはまた別の話ですから」
「シルさー、いいこと思い付いちゃった」
「なんです?」
「アラタが今まであげてきた功績をちゃんと清算して、勲章モリモリのスーパー叩き上げ軍人にするの。アラタの功績なら佐官なんて余裕だし、もしかしたら少将くらいまで見えてくるかも」
「それはアラタが受け入れるんですかね」
「授与だけなら一方的でも大丈夫でしょ?」
「あ……」
ここまであまり参加できていないノエルが、何かを思い出したようで短く息を漏らした。
思い出したのはあまり良いことではなかったみたいだ。
「どうしました?」
「アラタさ、この前勲章返却しちゃってる。貴族院から嫌がらせされて怒ってそれで……」
「もう1回あげればいいじゃないですか」
「それがね、貴族院のおバカたちが丁度いい機会だって功績も消しちゃったの。報奨金も財源が無いからって」
「誰ですかそんなことした痴れ者共は。クラーク家の名前で締めあげてやりますよ」
「いずれにしてもあまり現実的な方法ではなさそうですね」
ラグエルが全体を俯瞰してそう言うと、とたんに雰囲気が落ち込んできた。
大公やお見合い相手を説得するのも大変だが、ここにきてアラタが自由奔放に振舞った結果と貴族院の腐敗が良い感じに悪く働いている。
シルは少し投げやりになりながら代案を出す。
「もうさ、お見合い相手個別にお金出して解決しない? 異世界人ってこと以外にアラタの価値を底上げするのは無理だよ」
「それはすごく後味が悪くなるのだが……」
「そんなの拘ってたらいつまで経っても解決できないって」
「シルってどっちかというと妖精よりも悪魔とかそっち寄りですよね」
「リーゼ失礼!」
シルが両手をブンブン振り回して抗議する。
しかしリーゼは割と妥当な評価でしょうと取り合わない。
リーゼは半ば諦めたように締めくくった。
「まあ、お見合い相手を調査しつつ先延ばしですかね。このままでは断る理由すらまともに言えませんし」
「でも、早くしないとアラタが帰ってきちゃう。絶対早くお見合いしろって言われるよ」
「そうですねぇ」
一同が沈黙して、これで会議は終わりかに見えた。
名案を期待されていたラグエルも不発のまま、ただ真っ白な灰になっている。
そんな時、ソファに寝っ転がりながら猫のダイフクを撫でていたベルフェゴールは独り言を言い始めた。
「そういえば、アラタはウル帝国に行きたがっていたわね」
「なに?」
「諸事情でね。これってまずいかしら」
少し甘かったかなとベルフェゴールは反省した。
ただ彼女にも目的があって、今アラタにこの国を出て行かれると少し困るのだ。
ノエルはいまいちピンと来ていないようだったが、他の3人は同じことを思ったらしい。
「Bランク最上位の国外流出」
「それもまだ休戦状態の敵国へ」
「それを防止する鎖としての役割」
「「「ありですね」」」
リーゼは隣に座るノエルの顔を見て、満足げに笑った。
「ノエル、何とかなりそうですよ」
まだ事態が飲み込めていないノエルだったが、自信満々に言い放つリーゼを見てなんだか元気が出てきた。
「……そっか、そっか!」
「早速大公の所に行きますよ!」
「うん!」
「そんな……気が早いよもうっ」
「ノエル~戻ってきて下さ~い」
ノエルがアラタへの恋心を明確に言葉にしてから数十分後、アラタの屋敷では本人不在の中彼の攻略会議が開かれていた。
参加者はノエル、リーゼ、シル、それからラグエル。
ベルフェゴールは大して興味がないのか参加せず、アラタとクリスは辺境へ魔物討伐に向かっている。
この場を取り仕切るリーゼは先ほど、ノエルを全力で支援することを約束してしまった。
何でそんな難しいことをノリで引き受けてしまったのかと今は少しだけ後悔している。
彼女はノエルが抱えている難問を共有すべく、テーブルの上に黒板とチョークを置いた。
現代で言うタブレットのようなものだと想像すればいいだろう。
紙と羽ペンよりもこちらの方が使い勝手がいい。
「いいですか。まず大公を説得します」
「アラタじゃなくて?」
シルは初めから疑問符を投げかけた。
先にアラタを落として彼の協力を得ながら大公と大公妃攻略が正道だろうと考えたから。
リーゼはシルの反論に対して首を横に振った。
「ノエル、もしアラタにフラれたら……例え! 例えの話ですから!」
想像しただけで少し涙腺が脆くなってしまうノエルのことをカバーしながらリーゼは訊く。
ノエルは先ほどの出奔も含めて少しナーバスになっている。
「……諦めたくない」
「ですよね。じゃあOKしてくれたら?」
「すぐに籍を入れる」
「まあ議論の余地はありますが、概ねそのような流れになると思います。ではもし、もしも大公が首を縦に振らなかったら? シルちゃん」
「えぇっと、駆け落ち?」
「でしょうね」
リーゼは大きく頷きながら2つのルートを書いた。
アラタにフラれたケースと、フラれなかったが大公が認めなかったケース。
どちらも大いに時間がかかるし、正直問題の解決は難しい困難な道だ。
「ラグエルちゃん、いまノエルが抱えているお見合いの件数知ってます?」
「え、知らないです」
「6件です」
「「多っ」」
ラグエルとシルの声が重なった。
6人の男性とその家族から婚約を打診されておいて、それでもアラタが良いとノエルは言っている。
彼女は余程アラタに入れ込んでいるようだ。
「正直私の見立てではアラタは絶対に1度では首を縦に振りません。ぜぇったいに答えを引き延ばすかやんわりと断るかの2択で攻略には時間がかかります。その間大公に一言もなくお見合い相手を待たせるのはどうでしょう」
「まずい気がする」
「ですよね」
「それどころか、私は早急にごめんなさいして話を無かったことにしてもらわなければならないじゃないか」
リーゼは黒板に6個の丸を書き、そこから右に向かって線を伸ばした。
「ノエルが大公やお相手に話をするのが遅くなればなるほど、彼らの時間は失われていきます。お見合い相手に話を通して謝罪と撤回をするのが最優先、そしてそのためには大公の了承つまり攻略が不可欠。みなさんおわかりですね?」
シルはごくりと唾を飲みながら、隣に座っている自称天使のことを見た。
ラグエルは天使なのにこんなに特定の人間に肩入れしてもいいのかなと、そんな感じで見ていた。
ラグエルはシルからの視線に気づいていたが、彼女の心の内までは読むことが出来ず放置している。
ベルフェゴールが嫌がらせをしているのか、それともシル本人がプロテクトをかけているのか、ラグエルからではシルの頭の中をのぞくことが出来ない。
しばしば天使の権能を行使して人類の心中を盗み見ることのあるラグエルだが、屋敷の中で能力の行使が有効な相手はクリスとリーゼだけだった。
アラタ、シル、ベルフェゴールはプロテクトがかかっていて覗けず、ノエルは簡単だが頭の中がアラタか食べ物のことばかりで覗くに値しない。
ラグエルが天使らしさを発揮し損ねている間にも会議は進んでいく。
「シルは分かったけど……リーゼ以外にどうしようもなくない?」
「そうなんですよね……」
リーゼの顔にははっきりと受難の相が現れていた。
シルは人間らしく振舞っているものの、アラタから生み出されたシルキーという妖精だ。
大公と交渉するには少し厳しい。
ラグエルなんて表に出せるはずもなく、ノエルでは大公相手に言い負かされてしまう。
結論として、リーゼしかいなかった。
「やっぱりアラタが異世界人であることを言うしか……」
「ダメ。それじゃ意味がない」
悩むリーゼの出した案を速攻でノエルが却下した。
考えてもらっておいてなんだが、彼女的に譲れない部分なのだろう。
リーゼもそれではアラタからの信用が失われて告白どころではなくなるなと考えを改めた。
しかし考えを変えたところで、他に名案が浮かぶわけでもない。
「シル的には泣き落としが一番だと思う。ノエルは一人っ子だし」
「シル、酷くないか?」
「じゃあノエルが案を出してよ」
「それは……誠心誠意お願いするとか」
「相手が引き下がってくれるといいね」
「なんか棘があるんだよなぁ。そんなところばっかりアラタに似ないでよ」
「ノエルが殴りやすいから……」
「はいその辺で。ラグエルちゃんはどうです?」
この2人に頼ってもろくな案が出てこないことは想定済みなので、未知数な天使に話を振ってみる。
リーゼはこの天使の案を実は期待していた。
ここに居る面子は共に過ごした時間がそこそこ長いので、思考パターンもちょっと似てきつつある。
普段はストレスが無くていいかもしれないが、一発逆転の一手を生み出すにはアイディアのバリエーションが偏り過ぎてしまう。
他の3人の期待の眼差しを受けながら、ラグエルは首を捻り、ついでに頭も捻る。
結論として、ラグエルはまず正攻法で攻めてみることにした。
「まずはお見合い相手のことを徹底的に調べるというのは?」
「どういうことです?」
「相手からすれば、このお見合いは大公の娘婿になろうというものですよね。失礼かもですけど下心の1つや2つあるものでは?」
「失礼かもじゃなくて失礼だな」
「でも事実でしょ? もちろん大公もそれなりに調べているとは思いますが……」
「ここ数年間の不正や内通の多さを考えればあり得ない話ではないと」
リーゼはラグエルの言わんとしていることを察した。
「アラタさんがノエルさんのことをどう考えているかは知りませんけど、お見合い相手の吟味をしっかりと裏表両面でするのは必要なのではないですか?」
「アラタはいわば2年かけて評価されたわけですからね」
「ボロが出たら脱落、そうでなければ向こうの殿方だって十分魅力的なのでは?」
「でも私はアラタが……」
ノエルはどうしてもアラタが良いようで、話が堂々巡りに入りそうな気配が出てきた。
リーゼは話を元の流れに戻すべく少し強引にいく。
「でも、どちらにせよ大公との交渉材料は必要ですよ。お見合い相手を精査するのとアラタを認めさせるのはまた別の話ですから」
「シルさー、いいこと思い付いちゃった」
「なんです?」
「アラタが今まであげてきた功績をちゃんと清算して、勲章モリモリのスーパー叩き上げ軍人にするの。アラタの功績なら佐官なんて余裕だし、もしかしたら少将くらいまで見えてくるかも」
「それはアラタが受け入れるんですかね」
「授与だけなら一方的でも大丈夫でしょ?」
「あ……」
ここまであまり参加できていないノエルが、何かを思い出したようで短く息を漏らした。
思い出したのはあまり良いことではなかったみたいだ。
「どうしました?」
「アラタさ、この前勲章返却しちゃってる。貴族院から嫌がらせされて怒ってそれで……」
「もう1回あげればいいじゃないですか」
「それがね、貴族院のおバカたちが丁度いい機会だって功績も消しちゃったの。報奨金も財源が無いからって」
「誰ですかそんなことした痴れ者共は。クラーク家の名前で締めあげてやりますよ」
「いずれにしてもあまり現実的な方法ではなさそうですね」
ラグエルが全体を俯瞰してそう言うと、とたんに雰囲気が落ち込んできた。
大公やお見合い相手を説得するのも大変だが、ここにきてアラタが自由奔放に振舞った結果と貴族院の腐敗が良い感じに悪く働いている。
シルは少し投げやりになりながら代案を出す。
「もうさ、お見合い相手個別にお金出して解決しない? 異世界人ってこと以外にアラタの価値を底上げするのは無理だよ」
「それはすごく後味が悪くなるのだが……」
「そんなの拘ってたらいつまで経っても解決できないって」
「シルってどっちかというと妖精よりも悪魔とかそっち寄りですよね」
「リーゼ失礼!」
シルが両手をブンブン振り回して抗議する。
しかしリーゼは割と妥当な評価でしょうと取り合わない。
リーゼは半ば諦めたように締めくくった。
「まあ、お見合い相手を調査しつつ先延ばしですかね。このままでは断る理由すらまともに言えませんし」
「でも、早くしないとアラタが帰ってきちゃう。絶対早くお見合いしろって言われるよ」
「そうですねぇ」
一同が沈黙して、これで会議は終わりかに見えた。
名案を期待されていたラグエルも不発のまま、ただ真っ白な灰になっている。
そんな時、ソファに寝っ転がりながら猫のダイフクを撫でていたベルフェゴールは独り言を言い始めた。
「そういえば、アラタはウル帝国に行きたがっていたわね」
「なに?」
「諸事情でね。これってまずいかしら」
少し甘かったかなとベルフェゴールは反省した。
ただ彼女にも目的があって、今アラタにこの国を出て行かれると少し困るのだ。
ノエルはいまいちピンと来ていないようだったが、他の3人は同じことを思ったらしい。
「Bランク最上位の国外流出」
「それもまだ休戦状態の敵国へ」
「それを防止する鎖としての役割」
「「「ありですね」」」
リーゼは隣に座るノエルの顔を見て、満足げに笑った。
「ノエル、何とかなりそうですよ」
まだ事態が飲み込めていないノエルだったが、自信満々に言い放つリーゼを見てなんだか元気が出てきた。
「……そっか、そっか!」
「早速大公の所に行きますよ!」
「うん!」
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる