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「それで、あなたのことについて教えてくれるかしら?」
魔物の死体のそばで休憩するわけにもいかず、少し離れた場所へ移動すると、アメリアが静かに口を開いた。
リアムは飲み物を人数分作っているし、ノアは解体した魔物の肉や毛皮の確認をしているようだった。
俺はとりあえずリアムのそばへ行くと、リアムが作り終えた飲み物をアメリアやグレージュヘアの人に渡すことにした。
「え? あ、いや、悪い。 俺の国じゃあ見たことなかったから、驚いただけだ。」
アメリアたちのところに行って、飲み物を渡そうとして初めてグレージュヘアの人をしっかりと見た俺は、予想もしていなかった姿に驚きの声をあげてしまった。
俺の反応に、グレージュヘアの人がこっちを見て睨んできたから慌てて謝ったけど、正直いまだに戸惑っている。
「悪かったな。 そいつ、別の世界から飛ばされてきたみたいで、こっちのことは全く知らないんだ。 こいつも含めて、何も知らない子どもだと思ってくれたら構わない。」
飲み物を全員分作り終えたのか、コップを手に戻ってきたリアムの言葉に、グレージュヘアの人は驚いたように俺と零を見たが、俺も子どもだと言われたのは納得がいかず、リアムに非難の目を向けた。
でも本当のことだろうと言うように視線を受け流されてしまったため、これ以上ボロを出さないように黙って聞くことにした。
「私たちも驚いたりして、ごめんなさいね。 あなたの種族……と言うのかしら、獣人って言われている人々は滅んだって聞かされていたの。 だから、あなたを見た時にすごく驚いて。」
「俺たちは隠れて暮らしていたからな。 でも、俺が住んでいた村も、昨日、魔獣に襲われて生き残ったのは俺一人だ。 他に隠れ里があれば、仲間がいるかも知れないけどな。」
アメリアはグレージュヘアの人を見ながら、申し訳なさそうに驚いた理由を伝えていたが、グレージュヘアの人は特に興味がなさそうに返事をしていた。
そう、アメリアの言う通り、グレージュヘアの人は獣人だった。
なんの獣人なのかはわからないが、大きな耳にふさふさの尻尾。
そして口を開ける度に見える鋭い牙。
多分、狼とか犬とかな気がする。
雰囲気も怖いし、猫系の獣人ではなさそうだ。
「話したくないことは、聞いたりしないよ。 そいつがお前に懐いた。 それだけで、俺たちはお前を信じるさ。」
村のことを話してから口を閉ざしてしまったグレージュヘアの人に、リアムは別に全てを話す必要はないと伝え、いつのまにか男性の膝の上を陣取って寝ている零を視線で指し示した。
「そいつは異端児って言われて、生まれてからずっと人間に暴力を振るわれてきたんだ。 だから懐いている奴って、リアムしかいない。 こいつ……翔って言うんだけど、こいつも一ヶ月前ぐらいから世話している割りには、まだちょっと壁があるみたいだし、そうやって会ってすぐに無防備な姿を見せるのは、俺たちも初めて見るから、お前は敵じゃないんだろうって信用したってことだよ。」
「そうなのか。 こいつも大変だったんだな。」
零に対する全員の信用を不思議そうに聞いていたグレージュヘアの人だったが、ノアから事情を聞くと納得した表情で、膝の上で寝ている零の頭を撫でていた。
「俺はルーク。 ダークウルフの獣人だ。」
「え?」
「ああ。 別に混血って訳じゃないんだけどな。 なんでかこういう髪色になって、仲間からは気味悪がられたよ。 だからって訳じゃねえけど、人に虐められたっていうこいつの辛い気持ちは、何となくわかる気がするよ。」
ルークと名乗ったグレージュヘアの男性の言葉に、アメリアが意外そうな反応を見せた。
何に引っ掛かったのかわからなかったが、他の人にはわかったようで、ルークは詳しく説明していた。
多分、ダークって種族名に入っているから、普通は黒色が多いのかもしれない。
でも同じ犬種でも、いろんな色がいた地球で育った俺からすれば、不思議でもなんでもないことだ。
魔物の死体のそばで休憩するわけにもいかず、少し離れた場所へ移動すると、アメリアが静かに口を開いた。
リアムは飲み物を人数分作っているし、ノアは解体した魔物の肉や毛皮の確認をしているようだった。
俺はとりあえずリアムのそばへ行くと、リアムが作り終えた飲み物をアメリアやグレージュヘアの人に渡すことにした。
「え? あ、いや、悪い。 俺の国じゃあ見たことなかったから、驚いただけだ。」
アメリアたちのところに行って、飲み物を渡そうとして初めてグレージュヘアの人をしっかりと見た俺は、予想もしていなかった姿に驚きの声をあげてしまった。
俺の反応に、グレージュヘアの人がこっちを見て睨んできたから慌てて謝ったけど、正直いまだに戸惑っている。
「悪かったな。 そいつ、別の世界から飛ばされてきたみたいで、こっちのことは全く知らないんだ。 こいつも含めて、何も知らない子どもだと思ってくれたら構わない。」
飲み物を全員分作り終えたのか、コップを手に戻ってきたリアムの言葉に、グレージュヘアの人は驚いたように俺と零を見たが、俺も子どもだと言われたのは納得がいかず、リアムに非難の目を向けた。
でも本当のことだろうと言うように視線を受け流されてしまったため、これ以上ボロを出さないように黙って聞くことにした。
「私たちも驚いたりして、ごめんなさいね。 あなたの種族……と言うのかしら、獣人って言われている人々は滅んだって聞かされていたの。 だから、あなたを見た時にすごく驚いて。」
「俺たちは隠れて暮らしていたからな。 でも、俺が住んでいた村も、昨日、魔獣に襲われて生き残ったのは俺一人だ。 他に隠れ里があれば、仲間がいるかも知れないけどな。」
アメリアはグレージュヘアの人を見ながら、申し訳なさそうに驚いた理由を伝えていたが、グレージュヘアの人は特に興味がなさそうに返事をしていた。
そう、アメリアの言う通り、グレージュヘアの人は獣人だった。
なんの獣人なのかはわからないが、大きな耳にふさふさの尻尾。
そして口を開ける度に見える鋭い牙。
多分、狼とか犬とかな気がする。
雰囲気も怖いし、猫系の獣人ではなさそうだ。
「話したくないことは、聞いたりしないよ。 そいつがお前に懐いた。 それだけで、俺たちはお前を信じるさ。」
村のことを話してから口を閉ざしてしまったグレージュヘアの人に、リアムは別に全てを話す必要はないと伝え、いつのまにか男性の膝の上を陣取って寝ている零を視線で指し示した。
「そいつは異端児って言われて、生まれてからずっと人間に暴力を振るわれてきたんだ。 だから懐いている奴って、リアムしかいない。 こいつ……翔って言うんだけど、こいつも一ヶ月前ぐらいから世話している割りには、まだちょっと壁があるみたいだし、そうやって会ってすぐに無防備な姿を見せるのは、俺たちも初めて見るから、お前は敵じゃないんだろうって信用したってことだよ。」
「そうなのか。 こいつも大変だったんだな。」
零に対する全員の信用を不思議そうに聞いていたグレージュヘアの人だったが、ノアから事情を聞くと納得した表情で、膝の上で寝ている零の頭を撫でていた。
「俺はルーク。 ダークウルフの獣人だ。」
「え?」
「ああ。 別に混血って訳じゃないんだけどな。 なんでかこういう髪色になって、仲間からは気味悪がられたよ。 だからって訳じゃねえけど、人に虐められたっていうこいつの辛い気持ちは、何となくわかる気がするよ。」
ルークと名乗ったグレージュヘアの男性の言葉に、アメリアが意外そうな反応を見せた。
何に引っ掛かったのかわからなかったが、他の人にはわかったようで、ルークは詳しく説明していた。
多分、ダークって種族名に入っているから、普通は黒色が多いのかもしれない。
でも同じ犬種でも、いろんな色がいた地球で育った俺からすれば、不思議でもなんでもないことだ。
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