転生したら世話係?

東雲

文字の大きさ
上 下
13 / 18
ー2ー

2ー7

しおりを挟む
「それで、あなたのことについて教えてくれるかしら?」
魔物の死体のそばで休憩するわけにもいかず、少し離れた場所へ移動すると、アメリアが静かに口を開いた。
リアムは飲み物を人数分作っているし、ノアは解体した魔物の肉や毛皮の確認をしているようだった。
俺はとりあえずリアムのそばへ行くと、リアムが作り終えた飲み物をアメリアやグレージュヘアの人に渡すことにした。

「え? あ、いや、悪い。 俺の国じゃあ見たことなかったから、驚いただけだ。」
アメリアたちのところに行って、飲み物を渡そうとして初めてグレージュヘアの人をしっかりと見た俺は、予想もしていなかった姿に驚きの声をあげてしまった。
俺の反応に、グレージュヘアの人がこっちを見て睨んできたから慌てて謝ったけど、正直いまだに戸惑っている。

「悪かったな。 そいつ、別の世界から飛ばされてきたみたいで、こっちのことは全く知らないんだ。 こいつも含めて、何も知らない子どもだと思ってくれたら構わない。」
飲み物を全員分作り終えたのか、コップを手に戻ってきたリアムの言葉に、グレージュヘアの人は驚いたように俺と零を見たが、俺も子どもだと言われたのは納得がいかず、リアムに非難の目を向けた。
でも本当のことだろうと言うように視線を受け流されてしまったため、これ以上ボロを出さないように黙って聞くことにした。

「私たちも驚いたりして、ごめんなさいね。 あなたの種族……と言うのかしら、獣人って言われている人々は滅んだって聞かされていたの。 だから、あなたを見た時にすごく驚いて。」
「俺たちは隠れて暮らしていたからな。 でも、俺が住んでいた村も、昨日、魔獣に襲われて生き残ったのは俺一人だ。 他に隠れ里があれば、仲間がいるかも知れないけどな。」
アメリアはグレージュヘアの人を見ながら、申し訳なさそうに驚いた理由を伝えていたが、グレージュヘアの人は特に興味がなさそうに返事をしていた。
そう、アメリアの言う通り、グレージュヘアの人は獣人だった。
なんの獣人なのかはわからないが、大きな耳にふさふさの尻尾。
そして口を開ける度に見える鋭い牙。
多分、狼とか犬とかな気がする。
雰囲気も怖いし、猫系の獣人ではなさそうだ。

「話したくないことは、聞いたりしないよ。 そいつがお前に懐いた。 それだけで、俺たちはお前を信じるさ。」
村のことを話してから口を閉ざしてしまったグレージュヘアの人に、リアムは別に全てを話す必要はないと伝え、いつのまにか男性の膝の上を陣取って寝ている零を視線で指し示した。

「そいつは異端児って言われて、生まれてからずっと人間に暴力を振るわれてきたんだ。 だから懐いている奴って、リアムしかいない。 こいつ……翔って言うんだけど、こいつも一ヶ月前ぐらいから世話している割りには、まだちょっと壁があるみたいだし、そうやって会ってすぐに無防備な姿を見せるのは、俺たちも初めて見るから、お前は敵じゃないんだろうって信用したってことだよ。」
「そうなのか。 こいつも大変だったんだな。」
零に対する全員の信用を不思議そうに聞いていたグレージュヘアの人だったが、ノアから事情を聞くと納得した表情で、膝の上で寝ている零の頭を撫でていた。

「俺はルーク。 ダークウルフの獣人だ。」
「え?」
「ああ。 別に混血って訳じゃないんだけどな。 なんでかこういう髪色になって、仲間からは気味悪がられたよ。 だからって訳じゃねえけど、人に虐められたっていうこいつの辛い気持ちは、何となくわかる気がするよ。」
ルークと名乗ったグレージュヘアの男性の言葉に、アメリアが意外そうな反応を見せた。
何に引っ掛かったのかわからなかったが、他の人にはわかったようで、ルークは詳しく説明していた。
多分、ダークって種族名に入っているから、普通は黒色が多いのかもしれない。
でも同じ犬種でも、いろんな色がいた地球で育った俺からすれば、不思議でもなんでもないことだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

処理中です...