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4話 修羅場……?
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「シレーナ様。と、カライス殿下?」
周囲にいるのも家格の低い者ばかり、私に向かって熱弁を振るわれる殿下への対応に困って立ち尽くしておりましたところに、救世主が現れました。
「メイラ様……」
「っ、メイラ!」
「何があったのです?」
私たちの方へ乗り出していた体を慌てて引いた殿下をちらりと見遣ったメイラ様は、私に問いかけられました。
「それが、「メイラ!彼女を虐めるんじゃない!」
え?
突然メイラ様に向かって大声を張り上げた殿下に、私たちは驚いてそちらを見ます。ザカザカと大股でこちらに歩いてきた殿下は、何故だか私とメイラ様の間に私を庇うように立たれました。
「殿下?私は虐めてなど……」
「しらばっくれるんじゃない。僕が愛らしい彼女に話しかけたからと言って、虐めるのはおかしいだろう!」
いや、わけがわかりません。
私たちは揃って首を傾げました。初めから側にいた令嬢方も困惑した様子で私たちを見守っています。殿下は何を躍起になっているのだか、メイラ様に私を虐めるな、というような内容のことを繰り返しまくしたてられるのです。
「いえ、ですから私はシレーナ様に」
「シレーナ!君はシレーナというのかい!」
「は、はい……?」
メイラ様とお話されていたはずの殿下が突然ぐるりと振り返って私の方を向いたものですから、驚いて頷きました。そんな私の反応を見た殿下は、パアっと表情を明るくされます。
「なんと!愛らしい君は名前まで愛らしいのだね!シレーナ、素敵だ!」
「は、はぁ……ありがとうございます……?」
曖昧に頷いてお礼を申し上げると、なんだかだらしなく表情を緩められた殿下が私の方に手を伸ばしてこられて、気持ちの悪さからびくりと肩を跳ねさせてしまいました。
殿下越しに見えるメイラ様も険しい表情をなさっていて、殿下への嫌悪感が滲み出てしまっています。いけない、メイラ様がそんな表情をなさっては美しさが台無しです。
なんて思っていると、メイラ様とぱちりと目が合いました。笑顔ですよ、と訴えるべく私も笑顔を作ってみせます。私の笑顔を見てハッとしたメイラ様は、いつもと同じ優しい微笑みを繕われました。よかった。
「おお、君の笑顔はなんて愛らしいんだ!そんなに可愛い笑顔を見せて僕をどうしたいんだい?」
「え、は?」
よくなかった。
私は殿下の後ろにいらっしゃるメイラ様に笑いかけたのですが。
自分に笑いかけられたと思われたのか、殿下が更に笑みを深めて私との距離を詰めてこられます。やめてほしい。本当に、気持ち悪い。
「殿下」
「っ、なんだメイラ!まだシレーナに文句があるのかい?」
「いえ、そうではなく。シレーナ様が戸惑っておられますわ」
「戸惑う?どうして。この僕が声をかけているんだよ?君みたいな面白みのない女の考えることは知らないけれど、普通の女性は喜ぶものだろう」
何を根拠にそう思われるのか、自信満々にそう言って私に流し目を寄越される殿下に、全身に鳥肌が立ちました。
私が普通の女性かどうかは分かりませんが、私は全くもって喜んでなどおりません。そもそも殿下はメイラ様の婚約者です。普通の女性は、婚約者の目の前で口説いてくる男性にときめくような図太い神経は持ち合わせていないのではないでしょうか。
とはいえ、私のような見栄を張ってもせいぜい中流貴族に過ぎない人間が、殿下に「迷惑です」なんて言おうものなら不敬罪に問われてもおかしくありません。せっかくメイラ様が出してくださった助け舟も殿下がアッサリ沈めてしまわれましたし、どうやってこの場を乗り切りれというのでしょうか。
「さあシレーナ、僕と二人で話そうか!」
「いえ、殿下、私は」
「遠慮しなくていいんだよ!」
ついにガッシリと殿下に掴まれてしまった手を振り払うこともできず、やんわりとお断りしようにも遮られて強引に話を進められてしまいます。
いや、この方本当に人の話を聞きませんね?私もメイラ様も言葉や態度で迷惑だと示しているのですが、気づく素振りもない。
「さあさあ、あちらのベンチへ行こうじゃないか!」
「いえ、私はご一緒できませんわ」
「どうしてだい?もしや、メイラに脅されているのかい!?」
「違います、そんなことはありえません」
「ならいいじゃないか!」
「ですから……」
私の!話を!聞いてくださいと!!
え、これ、私がおかしいのですか?殿下のお誘いを断ろうとするのがおかしい?
丁重にお断りの言葉を重ねてもあまりに殿下が粘られるので、不安に思ってちらりと周囲の令嬢の様子を確認してしまいました。
あ、そんなわけありませんでしたね!
みなさま殿下を見て頭上にクエスチョンマークを飛ばしておられました。よかった、間違っていないようです。
しかし、そうなると余計に困りました。どうにかして殿下のお誘いを断らねばなりません。
本当に、この人、しつこい…!!
❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃
遅くなりましたが、最新話を更新いたしました!
再び毎日更新目指して頑張ります!
ストーリーの進みが遅々としている……
周囲にいるのも家格の低い者ばかり、私に向かって熱弁を振るわれる殿下への対応に困って立ち尽くしておりましたところに、救世主が現れました。
「メイラ様……」
「っ、メイラ!」
「何があったのです?」
私たちの方へ乗り出していた体を慌てて引いた殿下をちらりと見遣ったメイラ様は、私に問いかけられました。
「それが、「メイラ!彼女を虐めるんじゃない!」
え?
突然メイラ様に向かって大声を張り上げた殿下に、私たちは驚いてそちらを見ます。ザカザカと大股でこちらに歩いてきた殿下は、何故だか私とメイラ様の間に私を庇うように立たれました。
「殿下?私は虐めてなど……」
「しらばっくれるんじゃない。僕が愛らしい彼女に話しかけたからと言って、虐めるのはおかしいだろう!」
いや、わけがわかりません。
私たちは揃って首を傾げました。初めから側にいた令嬢方も困惑した様子で私たちを見守っています。殿下は何を躍起になっているのだか、メイラ様に私を虐めるな、というような内容のことを繰り返しまくしたてられるのです。
「いえ、ですから私はシレーナ様に」
「シレーナ!君はシレーナというのかい!」
「は、はい……?」
メイラ様とお話されていたはずの殿下が突然ぐるりと振り返って私の方を向いたものですから、驚いて頷きました。そんな私の反応を見た殿下は、パアっと表情を明るくされます。
「なんと!愛らしい君は名前まで愛らしいのだね!シレーナ、素敵だ!」
「は、はぁ……ありがとうございます……?」
曖昧に頷いてお礼を申し上げると、なんだかだらしなく表情を緩められた殿下が私の方に手を伸ばしてこられて、気持ちの悪さからびくりと肩を跳ねさせてしまいました。
殿下越しに見えるメイラ様も険しい表情をなさっていて、殿下への嫌悪感が滲み出てしまっています。いけない、メイラ様がそんな表情をなさっては美しさが台無しです。
なんて思っていると、メイラ様とぱちりと目が合いました。笑顔ですよ、と訴えるべく私も笑顔を作ってみせます。私の笑顔を見てハッとしたメイラ様は、いつもと同じ優しい微笑みを繕われました。よかった。
「おお、君の笑顔はなんて愛らしいんだ!そんなに可愛い笑顔を見せて僕をどうしたいんだい?」
「え、は?」
よくなかった。
私は殿下の後ろにいらっしゃるメイラ様に笑いかけたのですが。
自分に笑いかけられたと思われたのか、殿下が更に笑みを深めて私との距離を詰めてこられます。やめてほしい。本当に、気持ち悪い。
「殿下」
「っ、なんだメイラ!まだシレーナに文句があるのかい?」
「いえ、そうではなく。シレーナ様が戸惑っておられますわ」
「戸惑う?どうして。この僕が声をかけているんだよ?君みたいな面白みのない女の考えることは知らないけれど、普通の女性は喜ぶものだろう」
何を根拠にそう思われるのか、自信満々にそう言って私に流し目を寄越される殿下に、全身に鳥肌が立ちました。
私が普通の女性かどうかは分かりませんが、私は全くもって喜んでなどおりません。そもそも殿下はメイラ様の婚約者です。普通の女性は、婚約者の目の前で口説いてくる男性にときめくような図太い神経は持ち合わせていないのではないでしょうか。
とはいえ、私のような見栄を張ってもせいぜい中流貴族に過ぎない人間が、殿下に「迷惑です」なんて言おうものなら不敬罪に問われてもおかしくありません。せっかくメイラ様が出してくださった助け舟も殿下がアッサリ沈めてしまわれましたし、どうやってこの場を乗り切りれというのでしょうか。
「さあシレーナ、僕と二人で話そうか!」
「いえ、殿下、私は」
「遠慮しなくていいんだよ!」
ついにガッシリと殿下に掴まれてしまった手を振り払うこともできず、やんわりとお断りしようにも遮られて強引に話を進められてしまいます。
いや、この方本当に人の話を聞きませんね?私もメイラ様も言葉や態度で迷惑だと示しているのですが、気づく素振りもない。
「さあさあ、あちらのベンチへ行こうじゃないか!」
「いえ、私はご一緒できませんわ」
「どうしてだい?もしや、メイラに脅されているのかい!?」
「違います、そんなことはありえません」
「ならいいじゃないか!」
「ですから……」
私の!話を!聞いてくださいと!!
え、これ、私がおかしいのですか?殿下のお誘いを断ろうとするのがおかしい?
丁重にお断りの言葉を重ねてもあまりに殿下が粘られるので、不安に思ってちらりと周囲の令嬢の様子を確認してしまいました。
あ、そんなわけありませんでしたね!
みなさま殿下を見て頭上にクエスチョンマークを飛ばしておられました。よかった、間違っていないようです。
しかし、そうなると余計に困りました。どうにかして殿下のお誘いを断らねばなりません。
本当に、この人、しつこい…!!
❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃❃
遅くなりましたが、最新話を更新いたしました!
再び毎日更新目指して頑張ります!
ストーリーの進みが遅々としている……
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