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侍女と狼
19 「嬉しすぎてダメ」
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宿屋の二階の窓枠に座って、エマは夜更けになっても人通りの多い路地裏を眺めていた。
いつもはきっちり結い上げている髪を下ろして、風に遊ばせている。
祭りに浮かれて外泊なんて、父が生きていたら怒ってくれただろうか。
「エマ」
とろけるような甘さで名を呼んで、ジークが後ろから抱きしめてくる。首輪のなくなったうなじに鼻を押しつけて、抗われないのを確かめているようだ。
「ふふ、くすぐったい、ん」
「いい匂い……」
膝下に腕が入って、身体が持ち上げられる。ふたりきりの今は偽物の首輪も外したジークの首に、腕を回す。
ジークはエマをベッドに下ろすと、うつ伏せに転がした。スカートの中に手が入ってくる。
「あ、もう」
「だめ? したいよ。首輪なくっても俺と番ってほしい」
既に有無を言わさずのしかかってきている。反省しようと彼は彼だ。
「ジーク、待って。待ちなさい」
強く言うとしぶしぶ動きが止まる。エマは身体を返して、ジークの頬を挟んだ。
「待ては嫌い。よしって言って」
そうねだる彼を、愛おしいと思う。
「甘えん坊で乱暴ものでお馬鹿なジーク」
「うん、うん、俺そうなんだごめん」
「わたしのジーク」
エマは目を閉じて、ジークの唇に唇を重ねる。人狼の彼はすぐあちこち舐めたり齧ったりするくせに、口づけはしてこなかった。
だからこれが、初めてだ。
そのまま、がっしりした首筋や肩の辺りを撫でると、ジークが身体を震わせた。
シャツの下の手触りがもこもこと変化していく。唇がぐっと押されて、触れていた皮膚の下に牙を感じた。
エマが目を開けると、ジークはみるみる狼に変化していくところだった。
「ちょ、ちょっと待ってごめん」
「ジーク、シャツ裂けちゃう。脱ごうね」
「んっ、あ、今触ったらっ」
エマは身悶えする獣から服を剥ぐ。来たばかりの幼い頃ならともかく、ジークは変化は制御できるようになっていたのだけれど。
しばらく後。
エマは、ベッドの上で完全に狼になったジークと向かい合っていた。
「戻んない」
ジークは狼になると涙は流さないのだが、それでも泣きそうに見えるほどしょげかえっていた。
「嬉しすぎてダメ。エマのせい」
「そんなこと言われても」
「……爪引っ込まないし……俺絶対今交尾したら噛むから……我慢する……」
きゅーんきゅーんと弱った鳴き声を漏らした狼はベッドを飛び降りて、下に潜り込んで行った。
いつもはきっちり結い上げている髪を下ろして、風に遊ばせている。
祭りに浮かれて外泊なんて、父が生きていたら怒ってくれただろうか。
「エマ」
とろけるような甘さで名を呼んで、ジークが後ろから抱きしめてくる。首輪のなくなったうなじに鼻を押しつけて、抗われないのを確かめているようだ。
「ふふ、くすぐったい、ん」
「いい匂い……」
膝下に腕が入って、身体が持ち上げられる。ふたりきりの今は偽物の首輪も外したジークの首に、腕を回す。
ジークはエマをベッドに下ろすと、うつ伏せに転がした。スカートの中に手が入ってくる。
「あ、もう」
「だめ? したいよ。首輪なくっても俺と番ってほしい」
既に有無を言わさずのしかかってきている。反省しようと彼は彼だ。
「ジーク、待って。待ちなさい」
強く言うとしぶしぶ動きが止まる。エマは身体を返して、ジークの頬を挟んだ。
「待ては嫌い。よしって言って」
そうねだる彼を、愛おしいと思う。
「甘えん坊で乱暴ものでお馬鹿なジーク」
「うん、うん、俺そうなんだごめん」
「わたしのジーク」
エマは目を閉じて、ジークの唇に唇を重ねる。人狼の彼はすぐあちこち舐めたり齧ったりするくせに、口づけはしてこなかった。
だからこれが、初めてだ。
そのまま、がっしりした首筋や肩の辺りを撫でると、ジークが身体を震わせた。
シャツの下の手触りがもこもこと変化していく。唇がぐっと押されて、触れていた皮膚の下に牙を感じた。
エマが目を開けると、ジークはみるみる狼に変化していくところだった。
「ちょ、ちょっと待ってごめん」
「ジーク、シャツ裂けちゃう。脱ごうね」
「んっ、あ、今触ったらっ」
エマは身悶えする獣から服を剥ぐ。来たばかりの幼い頃ならともかく、ジークは変化は制御できるようになっていたのだけれど。
しばらく後。
エマは、ベッドの上で完全に狼になったジークと向かい合っていた。
「戻んない」
ジークは狼になると涙は流さないのだが、それでも泣きそうに見えるほどしょげかえっていた。
「嬉しすぎてダメ。エマのせい」
「そんなこと言われても」
「……爪引っ込まないし……俺絶対今交尾したら噛むから……我慢する……」
きゅーんきゅーんと弱った鳴き声を漏らした狼はベッドを飛び降りて、下に潜り込んで行った。
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ジークなんて健気な良い子なんだああ……もう一度首輪をかけてって……死ぬほど嫌だろうにエマに笑って喜んで欲しいからって(´;ω;`)ブワッ
でもこれ、つかの間の幸せってやつ……
ご感想ありがとうございます!
ジークはエマのことは好きだし大事なんですよ…嫌そうにされれば反省もするし、とても素直。
不穏なあれこれが垣間見えつつ、もう少し幸せな時間は続きます🙏
ジークはほんと立場が底辺というか…まわりが敵だらけなんですね(´;ω;`)カワイソ
いやジークもかなりやらかしてますし、問題児ではあるのですけど。
でも、彼とエマのこの先が心配でなりません〜(´;ω;`)
気になるうぅ〜
ご感想いただいて改めて気が付いたんですが、ジークって人権を認められていなくて、まともな教育されていないのが大きいんですよね…一番マシな接し方をしているエマですら、「侍女と狼」の12の時点では彼を対等には扱ってないですし…。
シリアス、バッドエンドなエピソードではあるのですが、ジークとエマの関係性だけは救いを持たせたいなと思って頑張って書きます!