悪役令嬢と神父

トハ

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森の魔女アデリア

魔王城の森の神父

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 神というものは、おそらくもういないのだと思う。
 昔は「神力」という不思議な力を持つ者だけが神官になれたのだが、今では多くが死に、定員割れして希望者は全員神官になれる。
 魔王が世界を征服して、5年が経った。
 と言っても魔王は人間をむやみに殺さない。但し大地は枯れ、食物は減り、何もしなくても死ぬのだが。
 俺が神官になったのは、何もそんな世界を変えたいとか、民の心の支えになりたいとか、そんな綺麗な理由じゃない。
 単純に、面白いからだ。
 無駄な祈りを捧げるバカな奴らを見ているのが。
 そして祈りが通じず死んでいく奴らを見るのが。
 こんなご時世でもーーいや、こんなご時世だからこそ、人は神に祈る。貢ぎ物は絶えない。俺はほらを吹いていれば簡単に食べ物がやって来るという仕事。こんな良い職、就かない手はないだろ?

「神に祈りなさい。神は必ず見ていらっしゃいます。この試練を乗り越えるためには、祈りの力が必要なのです。神は我々の祈りの力を見極めていらっしゃるのです」

 この神殿は魔王の住む城の一番近くにある。人間たちが暮らす辺境の町だ。
 魔王城は元々王城だったが、城下町はすべてモンスターのはびこる森に変わった。つまりここは、王都から二番目に近い町だったのだ。王族も貴族も、みな死んだ。少なくともこの国は。強い奴だけが町に残った。俺は魔法も、剣もそれなりに使える。この町でやっていくくらいのことはできる。魔王を倒さんとする剣士たちのお陰で、薬も大人気だ。帰ってくる人も、二度と帰らない人もいた。

 こうなると俺にとっての神は魔王だな、なんてことを考えるくらいには、ここの生活は性に合っていた。
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