パーティーを追放された雑用係の少年を拾ったら実は滅茶苦茶有能だった件〜虐げられた少年は最高の索敵魔法を使いこなし成り上がる~

木嶋隆太

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第28話

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 俺は両親の遺体に黙祷をささげてから、ルフォンを見た。

「魔呪の杖っていうので、人を魔物に変えるのか?」
「いや、本来はそういう力はないんだ。本来の名称は魔祝の杖。人々に癒しを与える杖なんだ」
「それがどうして、人に害を与えるようになったんだ?」

 俺がそう問いかけると、ルフォンは持っていた剣の鞘をこちらに見せてきた。

「魔祝の杖もそうだが、オレのこの剣も魔器と呼ばれるものだ」
「……魔器?」
「ああ。秘められた力は強大なもので、使いこなせれば所有者に莫大な力を与えるんだ」
「……そうなんだな」
「だが、もちろん使いこなせる人間は少ない。多くの人間は魔器が放つ魔性の力に魅了され、悪へと落ちてしまう。……その堕ちてしまった人間が魔呪の杖の持ち主、ベルフォマスだ」
「……ベルフォマス」

 村に入るときにすれ違った男の顔を思い浮かべる。
 どこか顔色が悪かったのも、その魔の力に魅了されてしまったからなのだろうか?

「ああ。魔に魅了された瞬間、魔祝の杖の力は反転した。人々をいやす力から、人々を破壊する力へと変わってしまった。それが、魔物化だ」
「……ベルフォマスは自分の意思で人々を魔物に変えて回っているのか?」
「それももう、わかりはしない。すでに、彼の心は魔呪の杖に乗っ取られ、心というものもないかもしれないからな」
「そう、か」

 俺は小さく息を吐き、スカーの頭を撫でた。
 と、ルフォンがこちらへと問いかけてきた。

「ヴァレオ。おまえはオレたちの機関に興味はないか?」
「機関?」
「ああ。魔器を扱うために訓練を行い、魔器を使用し、世界にあだなす者たちを裏側から刈りとる組織だ。オレもそこの一員なんだ」
「……なるほど、ねぇ」
「もしも機関に来てくれるのなら、ベルフォマスを追いかけることもできるだろう。それに何より、おまえの力なら魔器を制御するのも容易だろう」

 彼の誘いに大して、俺は頭をかいた。

「機関に入ったら、スカーを治す手段は見つかるのか?」
「……いや、難しいだろうな。今は魔呪の杖の回収のために動いているが、それが終わればまた別の事件の調査へと向かうだろう。それが機関の仕事だ」

 ……だよな。
 どうにかする手段が見つかっていれば、ルフォンだってみんなを殺す以外の解決策を提示できただろう。
 だから俺は首を横に振った。

「それなら、いいや。もちろん、村や家族、友人たちを滅茶苦茶にしたあいつには恨みがあるけど……けど、死んでしまった人たちよりも、俺は今生きているスカーをどうにかしたいんだ」
「……そうか、分かった。領主への報告などの細かい処理はこちらで済ませておこう。機関については、他言無用だ。それだけは気を付けてくれ」
「了解。色々、世話になったよ。ありがとな、ルフォン」
「……すまなかった。オレたち機関がもっと早くついていれば――」

 頭を下げてこようとした彼に首を振った。

「いいって。もう過ぎたことだ。スカーを助けられただけでも、十分だ。これ以上被害が出ないように頑張ってくれよ」

 ルフォンの肩を軽く叩くと、彼はゆっくりと頷いた。
 ……冷たい印象を与える瞳が少しだけ緩んでいた。


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