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第16話

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 ――これはヴァレオがルタと出会う二年前の出来事。




 俺は友人のベイラーと向かい合い、木剣を握っていた。
 周囲には何人もの人が俺たちの様子を眺めていた。

「今日はどっちが勝つとおもう?」
「そりゃあやっぱりヴァレオだろ? あいつ、やっぱり強いもんな」
「でも、ベイラーだってここ最近かなり腕をあげてきたぞ? もしかしたら、いいとこまで行くかもしれないぞ?」

 周りの声が俺たちの耳に届く。
 それを聞いていた俺とベイラーはお互いに笑みをかわす。

「だそうだぞ、ベイラー? 今日の模擬戦はやめるか?」
「はっ、馬鹿なこと言っているなよ? これからオレがぶっ潰してやるからな?」

 軽い挨拶のようなもの。
 それをかわした俺たちはちらと審判を見る。
 審判は俺たちをちらと見てから、片手をあげた。

「それでは、試合開始!」

 審判の声に合わせると同時、ベイラーが突っ込んできた。
 その素早い一撃を見切りながら、俺は木剣を振りぬく。
 攻撃は当たらない。俺も当てるつもりはなかった。

 かわしたベイラーはその勢いのまま木剣を振り下ろしてきた。
 気迫と魔力の乗った攻撃だ。

 それに木剣を合わせる。

「これにも合わせてくるか!」
「まあ……なっ!」

 気合を入れるように声をあげ、木剣を振り上げた。よろめいたベイラーへと、今度はこっちが攻める番だ。
 地面を踏みつけ、ベイラーへと肉薄する。振りぬいた一撃が、ベイラーの腕をかすめる。

 後退していくベイラーへと俺は追いこむように木剣を振りぬいていく。
 ……いつもならば当たっていただろう攻撃の数々を、ベイラーはかわしていく。
 さすがに、毎日やりあっているだけはある。俺の攻撃が見切られてしまっているようだ。

 それならば、これまでと違うように動くだけだ。
 振りぬいた木剣を即座に振り上げる。かわしたベイラーへと、俺はタックルによって攻撃する。

「ぐぅ!?」

 これは予想外だったようだ。よろめいたベイラーの首元に木剣を突き付けた。
 ベイラーは悔し気に唇を噛んでから、ふっと力を抜いた。

「まったく、今日こそは勝つつもりだったんだがな」

 両手を挙げた彼が笑いかけてきた。
 その彼と握手をかわしてから、俺たちは周囲を見ていた。
 と、集団の中から妹のスカーがやってきた。
 
 美しい銀色の髪を揺らしながらこちらにやってきたスカーがにこりと微笑む。

「兄さん、ベイラーさんお疲れ様です」

 そういってスカーはタオルを渡してきた。それを受け取り、汗を拭う。ベイラーも同じように笑いながら、タオルで汗を拭いていた。

「そんじゃ、一度家にでも戻るかね」

 俺がそういうと、ベイラーもこくりと頷いた。

「そうだな。後で一緒に狩りにでも行かないか?」
「おっ、いいね! 冒険者らしくて最高だ」

 ベイラーの誘いに俺は頷いた。

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