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第15話
しおりを挟む宿に向かって歩いていく。
「ルタ、おまえは剣を学んだことはないんだよな?」
「う、うん」
「ならこれから毎日稽古つけてやる。おまえくらいの年齢なら自衛ができるくらいは強くなれるからな」
そういうと、彼は嬉しそうに破顔した。
「ほ、ほんと? 僕もヴァレオみたいにかっこよく戦えるようになるかな?」
「俺は別にかっこよくないっていうか……」
「かっこよかったよっ! 最後一人でミノタウロスの足止めしているところ、なんかこう、ぐわーってなって、ぶわーって感じで!」
それこそ、英雄譚でも語る子供のように目を輝かせるルタに苦笑する。
ちょっと照れ臭いな。
「そっか。ルタもたぶん俺と似たような戦闘スタイルになるはずだから、なれるかもな?」
「う、うん頑張る!」
嬉しそうにルタがそう言い、俺たちは宿についた。
女性陣とはそこで別れ、俺は新しく借りた一部屋のほうに向かう。
その部屋をルタとスカーに使ってもらうつもりだ。
スカーが一緒にやってきて、ルタがその頭を撫でている。スカーは目を細めている。
すっかり、二人も仲良くなったようだな。
「ここがルタの部屋だ。スカーと一緒に使ってくれ」
「ありがとね、ヴァレオ。よろしくね、スカー」
「がう」
部屋は二人部屋だ。ルタが一つのベッドに座り、それから目を細める。
「わっ、ふかふかだ!」
「まあな」
俺が余っているほうに座ると、スカーもこちらへとやってきて俺の上にのってきた。
その背中を撫でていると、ルタもこちらにやってきた。
「ねぇ、ちょっと聞いてもいいかな?」
「なんだ?」
「ヴァレオは、どうして冒険者になろうとしたの?」
「……そうだな」
俺はスカーの頭を撫でながら、少しだけ昔のことを思い出していた。
「俺もおまえと同じような理由だ」
「……お母さんが病気になって、お金が必要なの?」
「俺の場合は、妹なんだ。ちょっと特殊な病気にかかった妹を助けるには奇跡の力に頼るしかないんだ。だから、あちこち旅しながらその奇跡の力ってやつを探しているんだ。ま、見つかる様子はないんだけどな」
「……妹さん。そっか。……僕も、そのヴァレオの力になれるように頑張るよ……っ」
「……ああ、ありがとな」
「ガウ!」
スカーが吠えて、ルタの方に移動して頬ずりをした。ルタがその頭を撫でながら、俺もスカーの――いや、妹の背中を撫でた。
「それじゃあ、改めて。これからよろしくなルタ」
「よろしくね、ヴァレオ!」
出会った時とは比べ物にならないほどの笑顔を浮かべるルタに、俺も笑みを返した。
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