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第8話
しおりを挟む「こ、ここが迷宮なんだ……」
「迷宮は初めてなのか?」
「う、うん……迷宮まで連れていくのは危険だからって言われて一度も入ったことはなかったんだ」
「そうか」
迷宮こそサポーターが必要になると思うんだがな。
迷宮攻略に関しては一日で終わらないこともあるので、中に泊まるための準備をする必要がある。
「でも昨日は依頼失敗を押し付けられていたよな?」
「う、うん」
「そのときはどうしてだったんだ?」
「そ、その……外での依頼なんだ。魔物狩りをしに行って、そのときに僕が動くのが遅かったからって」
なるほどな。
俺はちらと彼に渡したマジックバッグを確認する。
今回の攻略でもそうなるのを想定してマジックバッグにアイテムを詰めてきていた。
初めての迷宮に目を輝かせているルタが楽しそうに周囲を見ていた。
「無邪気な子ですね」
俺の隣に並んだスティナがルタを見て微笑んでいる。
「ま、そうだな」
「そういえば、ルタさんって索敵魔法とかはどの程度使えるのでしょうか?」
「……そういえばそうだな。おい、ルター」
楽しそうに周囲を眺めていたルタを呼ぶ。
彼は子どものような笑みとともにこちらへとやってくる。昨日よりはだいぶ表情も柔らかくなっている。
「なに?」
「ルタ。早速ここからは迷宮内の案内をしてほしいんだけど、どのくらい索敵魔法とかって使えるんだ?」
優秀な人になると、それこそ魔物の位置や出現するタイミング。さらには、迷宮の構造なども把握できるほどだ。
「ちょっと使ってみるね」
そういってルタが目を閉じて魔法を準備する。神秘的な光が彼を中心に周囲へと集まっていく。それらはルタの体へと取り込まれていく。
彼の足場に幾何学模様の魔法陣が出現し――光はやがておさまった。
「えっと、索敵魔法使ってみたんだけど……何から伝えればいいのかな?」
「あー、そっか。とりあえず進んでいこうか。今出現している魔物やこれから出現しそうな魔物とかもわかれば教えてくれないか?」
「分かった。とりあえず、このまま進むとウルフが三体出現するみたいだよ」
……え?
「わかるのか?」
「う、うん……あ、あれわかっちゃダメだったの……?」
心配そうにルタが瞳を潤ませていた。
……待て待て。まさかそこまで索敵魔法が得意な子だとは思わなかったな。
普通の索敵魔法では周囲の状況程度しかわからない。だが、ルタはどうやらこれから出現する魔物の情報もわかるほど、索敵魔法は優れているようだな。
「いやそんなことはないぞ。ルタの索敵魔法が想定よりも優秀だったからな。……他には何かわかるか?」
「えーと……魔物の苦手な属性とか、あとは迷宮内部の構造とかかな?」
なに!?
「ほんとか!?」
「うえ!? わ、わかっちゃダメなの……?」
また泣きそうになった彼に、俺は頬が引きつった。
彼の能力がずば抜けて高いことを、俺だけではなく他の面々も気づいているようだ。
もっとも驚いた様子でいるのはリアンだ。ついてきているのか分からないほどにだんまりだった彼女は、
「わ、私よりも……使える……」
ぽつりとつぶやいた。
これまで、索敵魔法に関してはリアンが担当してきた。だが、彼女は妨害魔法――デバフは得意だがそういった補助系はあまり得意ではなかった。
それでも、魔法使いとしてのプライドがあったのだろう。彼女は一人落ち込んでいた。
「え、えっと……その僕どうすればいいの?」
「とりあえず、索敵魔法を基本にサポーターをしてくれればいい。次の階層まで案内してくれるか?」
「う、うん……っ!」
こくんとルタが頷き、俺たちは階層を下っていった。
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