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第2話
しおりを挟むぽかんとした様子で『グレールナイト』が瞬きをする。
それを無視するように俺は少年を見た。
「少年、名前は?」
「ぼ、僕はルタっていいますけど……」
「そうか、ルタか、よろしくな」
軽く頭を叩くようにしながら、目線を合わせにこりと微笑む。
俺が軽く自己紹介をしていると、『グレールナイト』のリーダーが睨んできた。
「何勝手なことしてんだ?」
「追放するんだろ? ならいいじゃないか」
「おいおい、そんな無能なサポーター雇ってどうすんだ?」
「別に、無能かどうかはこっちで判断させてもらうよ。ちょうど、うちもサポーターはいなくてな。みんなで役割分担していたんだ。というわけで、ルタついてこい」
俺がルタの肩を掴もうとすると、リーダーが俺の肩を掴んできた。
「おい、ルタの意思を聞いてからにしろよ」
「ルタ、どうする?」
「ぼ、僕は――」
ルタがこちらを見たとき、『グレールナイト』のリーダーがルタを睨んだ。
「なぁ、おい! てめぇが新人のときから面倒見てやっただろうが! その恩を忘れたっていうのか、あぁ!? 何悩んでんだよ、ぶっ飛ばされたいのか!?」
「ご、ごめんなさいヴぁ、ヴァレオさ――」
リーダーの脅しに、ルタがびくんと跳ねてから俺のほうに頭を下げてきた。
そんなルタの肩を掴んだ。
「いいのか、ルタ? そこにいたって搾取されるだけだぞ? それで、おまえの母さんの薬代……だっけか? 稼げるのか?」
「……そ、それは――」
「少なくとも、俺のパーティーはそっちより報酬に関しての待遇を悪くするつもりはないぞ?」
「おい、甘い言葉でだまそうとしているだけだぞルタ! てめぇ、恩を忘れたのか!?」
リーダーが叫んできたが、俺がその間に割り込んだ。睨み合う。
それから俺はちらと背後にいるルタを見る。
目があった。ルタは怯えた様子で唇をぎゅっと結び――それから俺の服を軽くつかんだ。
「ぼ、僕は……そ、その今のパーティーはつらいから……やめたい」
「ああ、そうか。だそうだ、『グレールナイト』さん」
俺が顔を向けると、『グレールナイト』の面々は顔を見合わせたあと舌打ちをした。
「はっ、せいぜい捨てられないようになルタ。サポーターってのは替えの効く誰でもできるような立場なんだからな。どうせおまえみたいな無能はすぐに捨てられて今以上に稼げなくなるんだからな」
「……」
ルタはかぶっていた帽子をぎゅっと握り、うつむいた。
それを見た『グレールナイト』のリーダーは俺を見てから、馬鹿にするように笑ってきた。
「『アキシスタ』。最近なんか調子いいみたいだったが、ただ運が良かっただけみたいだな。人を見る目がねぇ」
「おっ、うちのパーティーを知っていたのか? これからもよろしくな」
「はっ! よろしくするつもりはねぇよ。おい、いくぞおまえら!」
『グレールナイト』の三人はそのままギルドを離れた。
……うるさい連中だったな。
「ルタ。俺の仲間たちを紹介する。ついてきてくれ」
「う、うん分かった」
顔をあげたルタは、ようやく少しだけ安堵できたようで微笑んでいた。
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