パーティーを追放された雑用係の少年を拾ったら実は滅茶苦茶有能だった件〜虐げられた少年は最高の索敵魔法を使いこなし成り上がる~

木嶋隆太

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第1話

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「おい! 聞いてんのかクソガキ!」

 怒鳴り声がギルド内に響いた。
 これから依頼の報告をしようと思っていた俺はうんざりしながらそちらを見る。
 そちらでは、Dランク冒険者パーティー『グレールナイト』の男たちが一人の少年を威圧するように囲っていた。
 
 それを横目で見ていた俺はまたか、という思いだ。
 『グレールナイト』の人々がそうやって少年をいじめているのを俺はもう何度も見ていた。
 他のパーティーの事情に首を突っ込むのはマナー違反だったが、それでも苦言を呈したくなる気持ちだった。

「す、すみません……っ! ぼ、僕のせいで――」
「謝って済む問題じゃねぇんだよ! おまえのせいで今日は依頼に失敗だ!」
「すみません、すみません、すみません……」

 ぺこぺこと何度も頭を下げている少年を見て、『グレールナイト』の面々は顔を見合わせた。
 それから、少年の頭をがしりと掴み、睨みつけた。

「反省しているっていうのなら、今日の取り分はなしだ」

 冒険者は依頼に失敗しても、その道中でまったく魔物を狩らないということはない。より稼ぐために、目的の魔物以外を狩るというのはよくあることだった。

「え!? そ、それは無理です! か、母さんの薬代が――」
「るせぇよ! なら、てめぇ、今日の依頼失敗分の詫びを支払えや!」
「そ、それは――」
「てめぇの取り分がねぇだけで済むんだよ。それじゃあ、なんだ? パーティーを追放してやってもいいんだぞ?」

 その脅しを聞いて、少年の顔が青ざめる。
 先ほど、母の薬代が……と言いかけていた。
 安定して稼げる先がなくなれば、それは困るよな。

「そ、それは……お、お願いします! 残してください!」

 にやり、と意地悪く『グレールナイト』の男たちが口をゆがめた。

「はっ、そうだよなぁ? てめぇみたいな無能なサポーターを雇ってくれる奴なんてどこにもいねぇよな」
「は、はいですからお願いします……」
「オレも鬼じゃねぇよ。だから、今回の稼ぎは渡してやる。だが、次からはおまえの取り分は半分にさせてもらうからな?」
「……で、でもそうなったら薬代が」
「あぁ? さっきの話聞いていなかったのかよ? てめぇのせいで、依頼に失敗したんだよ! それでも、」

 我慢できなかった。
 受付に依頼書を渡した俺はそれから、『グレールナイト』の方へと向かった。

 泣きじゃくっていた少年の頭を軽く叩き、『グレールナイト』の男たちを見る。
 「なんだ?」という目でこちらを見てくる『グレールナイト』の面々。
 全員がおっさんと呼ばれるような年齢の男たちだ。

「『アキシスタ』のリーダーのヴァレオか? どうしたんだ?」
「少年をパーティ―から追放するんだろ? それなら、うちで引き取らせてもらおうと思って挨拶にきたんだ」
「……は?」
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